バックスの選手が試合をボイコットし、他のチームの選手たちもそれに続きました。
まさか試合を直前でボイコットをするとは…と驚きましたが、
ビックリしてしまったという事は逆に言うと選手たちが何を想って何を感じていたのかの理解が足りなかったからだと気づきました。
試合開始の時間になったのに、ロッカールームから3時間出てこない…
これだけで選手たちが戦っているものの大きさがわかります。
そこで今回は日曜に起きた黒人銃撃事件からボイコットまでの「選手たちの声」をまとめてみました。彼らの声を聞けば、なぜボイコットに至ったのか理解できるかもしれません。
その前に、次の2つのを抑えておくとよりプラスです。
・ウィスコンシンでおきた警察による黒人男性への銃撃
・バブルへ来た意義
また黒人が警察の暴力を受けたニュース
日曜に警察による黒人男性への銃撃事件があり、黒人男性は重症。子供の目の前でという事と、
またその事件を起こした警官には何も責任を負わせないというクソ対応。
そして、プロテストをしていた黒人たちをアサルトライフルを持った白人至上主義が撃った後、警官の近くをアサルトライフルを持って堂々と歩いても捕まらなかった…
(結局、この後逮捕されますが)
サブプロットとして、ラプターズのプレジデントのマサイ・ウジリが去年のラウターズが優勝した後に会場で保安官代理から受けた差別映像も問題になりました。
The legal team for Raptors executive Masai Ujiri has released body-cam footage of Ujiri's encounter with a security worker at Oracle Arena after the Raptors defeated the Warriors to win the NBA Finals.
(via @KTVU) pic.twitter.com/FjbHyeaFr8
— SportsCenter (@SportsCenter) August 19, 2020
バブルに来た意義
BLM運動の中、選手たちが自分たちのコミュニティーでのプロテストではなくバブルを選んだのは、金だけではなく、制度的差別問題やレブロンやドレイモンドが取り組んでいる黒人投票抑圧問題などに対して問題意識を発信して、社会をより良い方向に変えて行く「大義」のためでした。
バブルでは国歌斉唱中に膝をつき、BLMのTシャツを着て、ユニフォームにはメッセージを入れて、プレッサーでブレオナ・テイラーの正義について話す…
いろいろやってきましたが、ジェイコブ・ブレイクが子供の目の前で警察に撃たれた映像を観て、何も変わっていない事に気づいてしまった。
そして、バブルでリアル社会から隔離され、家族とも会えず、何もできない…
選手たちは怒りや無力感を感じたそうです。
結果、その映像を見た翌日の月曜には、選手たちの中には、帰りたいと言う人たちや試合でプレーできないと言う人たちもいたそうです。
ジェイコブ・ブレイクの殺人未遂の映像を観たあとの選手たちの声
レブロン・ジェームズ
「正直、Fucked upだ… 黒人として恐怖を感じる。アメリカで銃器が大きな問題だと思う。ただの狩りで使われているわけではない。狩られているのは黒人だと思う」
「もし銃を撃つ前に彼を拘束する方法がないと言っているなら、それは黒人のコミュニティーの全員にウソをついている。何度も何度も何度も見てきた。とても悲しい。彼(ジェイコブ)の気持ちがわかる。私が貧しい地域に住んでいた時、警官を見たらレンガ塀の後ろに隠れていた。サイレンが光ったら、何も悪いことはしていないのに逃げていた」
JJ・レディック
「オーランドにはバスケをしに行ったが、何よりも大切だったのは、会話をし、行動をし、この国に起きている事に目を向けさせることだった」
「ブリオナ・テイラーのことを何度も口にするが、司法長官が共和党集会で堂々とウソをつくのを見て、怒りと無力感に襲われた。いくらバブルで変えようとしても、外で結果が出ていない」
「なぜ黒人アスリートがそれを背負うんだ?なぜレブロンや20代の黒人がそれを背負うんだ?それは大企業のCEOや政治家の仕事ではないのか?それを見るのはとても苛立つし無力感を抱く」
フレッド・ヴァンヴリート
「何を犠牲にできるか?私たちは本当に起きている事を気にしているのか?BLMのTシャツを着ていればいいと思うのか?それはどんな意味を持つんだ?何か結果を出せているのか?今日の私にはその答えはない」
ジョージ・フロイドが窒息死する映像を観てトラウマになり、ジェイコブの映像は観れなかったパスカル・シアカム
「前に進めていない。何も変わっていない」
「ここに来る決断が良かったのか疑問に思う」
ジェイソン・テイタム
「数ヶ月前に起きた事件では、みんな最前線へ行って、姿を見せて、コミュニティーの中にいることができた。今は家に帰るかどうするかの決断の間に挟まれている。ここに来ることで諦めたことがあるという事は理解している。このために多くの人が何時間もかけてバブルをつくった。だから決めるのはむずかしい」
「家に帰ろうと思っている人もいる。多くのことはバスケよりも大きい。それは理解している。まず何よりも私たちは人間だ。ただのバスケットボール選手ではない。だから世界から隔離されていると感じている。みんなが同じように感じている」
「何点とるかなんて今は重要じゃない。ここのバスケットボールのコートにいるよりも、アメリカの黒人でいるということの方がより重要だ。自分のプラットフォームや声を使って会話と変革を生み出すことの方が、ここで出来ることの何よりも重要なことだ。車の中にいる子供たちの目の前で背中を7回撃たれた男性のことを考えるのは、コート上でできることの何よりも重要だ」
「自分の父が理由もなく撃たれたのを見たあの子供たちが、この後の人生ずっとトラウマを抱えて生きていく、それがどう彼らの人生に影響していくかは想像すらできない。この人生で何よりも重要なことはたくさんある」
「ボイコットして何が変わるというんだ、と言う人たちもいるだろうが、もし残りのプレーオフをボイコットしたら、どれだけ大きいインパクトを与えるのかはわかる。みんながそれについて話さなければいけない。注目し続けさせるんだ。プレーだけして、外の世界で起きていることを忘れたくない。なぜならこれは私たちに関わることだからだ。みんなに関わってくる」
「私たちはバスケットボール・プレーヤー以上の存在だ。私たちは人間だ。生の感情もフィーリングもある」
ジョージ・ヒル
「気持ち悪い。心がない。Fucked upな状況だ。言っていたように、警官はプロテクト&サーブ(仕える)でなければいけない。でも今はハラス&シュート(発砲)だ。彼の命を奪うところだった。神に彼が生きていてくれることに感謝する」
「抵抗していない人を後ろから至近距離で撃ち、もう少しのところで彼の命を奪い、特に彼の子供たちの目の前で、それは心と魂がない行為だ。私たちは正義を必要としている」
「(バブルにいる)私たちは何もできない。まず正直言うと、このクソな場所に来るべきではなかった。ここに来ることで問題の焦点がずれてしまったと思う。でも私たちはここにいる。ここからは何もできないが、すべてが終わった時何かしなければいけないと思う」
「この世界は変わらなければいいけない。警察は変わらなければいけない。私たち社会が変わらなければいけない。そして今何も起きていない。こう話している間も、毎日毎日命は奪われ、それに対しての責任も何もない。それも変わらなければいけない」
ジェイレン・ブラウン
「多くのアフリカン・アメリカンや有色人種の多くは警察と因縁の歴史がある。これは制度的抑圧から来ている。教育の欠如、経済的機会と住居等だ。多くの有色人種のコミュニティーは警察と問題を抱えている。私が聞きたい質問は、”アメリカは、黒人と有色人種は文明がない野蛮人で、この国に相応しくないと思っているのか?それとも私たちは自分の環境が生んだ結果なのか?それが私がアメリカに聞きたいことで、アメリカは何度もその答えを示している」
クリス・ミドルトン
「この国でたくさんの人たちが激怒している理由はこれだ。彼は至近距離で背中から7回撃たれた。それよりも狂っていることはない」
「みんな、なぜ黒人や有色人種の人たちが警官をすごく恐れているのかわかりはじめたと思う。なぜなら、どんな職についても、何をしていても、どんな時も、正しいか悪いかなんて関係ない。彼らの最初の行動は”撃て”だ」
ランドリー・シャメット
「(ジェイコブ・ブレイクが撃たれた)映像を見た時は、体の中には無力感があった。同じようなことを何度も見て、怒りと苛立ちを感じる。それについて考えたり、話したりすると心が痛む」
ドノヴァン・ミッチェル
「これは人生よりも大きなもので、自分たちの声を使い続ける。オーランドへは変革を生みに来たが、十分ではない。ケノーシャで起きたことは胸クソが悪く、このShitが止まってほしい」
マーク・ガソル
「ここ(バブル)に来た時、私たちにはこの状況に光を当てるという明確な目標があった。私たちがそうする事で、みんながそれに気づき、話すようになるだろう。でも問題はもっと根深く、それがバブルの外での行動に繋がらない。本当にフラストレーションがたまる」
「人種差別は制度的だ。それがUSで投票がとても大切な理由だ… 人種差別の問題は政治的だけはなく、人間性と社会的価値観の問題でもある。教育が足りていない。その負の鎖を破り、次の世代へと受け渡してはいけない。政治以上に、人間性、教育、社会的価値観の問題だと信じている」
COYを獲得したニック・ナース
選手たちの考えを間近に聞いているナースの言葉です。
「短い間に同じことが起きて彼らは本当に失望している。彼らは問題解決の一部になりたがっている。助けたいんだ。正義が欲しいんだ。この問題がもっと良く対処されることを望んでいる。まず先にそれがある」
「試合をボイコットする事は、彼らがもっと行動を要求したいとの現れだ。彼らが本当に欲しいのはそれだ。十分注目を得ているが、行動が伴っていない思う。彼らと話していて思うのは、彼らはそのことに失望しているということだ。変える必要がある、問題に注目するだけではなく、私たちには実行プランが必要だ」
ドック・リヴァース
「私たちはこの国を愛し続けている。でもこの国は私たちに愛を返してはくれない」
ドック・リヴァースは、警察に撃たれたジェイコブ・ブレイクとソーシャル・ジャスティスについて話をしている時感情的になった。 https://t.co/YHTzHj9QLQ
— NBA Reporter (@NBA_Reporterjp) August 26, 2020
マーク・スピアーズ
バブルにいるESPNのレポーターのマーク・スピアース(ボイコットのきっかけを作ったかもしれない人)も、人間としてのNBA選手像をうまく伝えてくれています。
「ジェイコブ・ブレイクが車の中にいる3人の子供の目の前で撃たれた。それはバブルの中にいる多くの選手たちに大きな影響を与えた。彼らは長い間子供たちに会っていない。フレッド・ヴァンヴリートは5歳の時に父を殺されている。彼はその事について5歳の時に聞かなければならなかった。そして、子供はここにいない。その事件は子供の頃の記憶を思い出させると同時に父としての自覚を感じさせる。みんながものすごく感情的になっている。バブルでは子供を抱きしめることもできない。子供に何が起きたのか説明することができない」
思えば、私は選手たちの姿を試合中のプレーや、インタビュー、インスタなどでしか見ていません。目に入る事と言えば、彼らのプレーは超人的で、まだ20代なのにインタビューではすごい大人で、社会問題では声のない人のために声をあげる… まさに特別な人たちと思っていました。
だからよけいに彼らが葛藤している姿に感じるものがあります。
レブロンも試合に勝ってもよろこべないと言っていました。こうして見ると、レブロンだけはなく、他のみんなもダンクをしている時も、ディフェンスをしている時も、どこか心の奥で黒人のリーダーとしての重圧を背負いながら戦っているのだと思います。そんな中でするプレーはこのプレーオフだけで見れるのかもしれません。これまで以上に大切に見ていきたいと思います。選手たちがボイコットしようがしまいが、私はこれまで以上に選手たちを支持していきます。
また、黒人の制度的人種差別はNETFLIXの「憲法修正第13条」を観るとよく理解できます。JJ・レディックがBLM運動を理解してもらうために勧めていました。(字幕はありませんが、今Youtubeでフリーで観れるように取り計らわれています)
サムネイル画像:Photo: David Dow/NBAE via Getty Images