これからのNBAシーズンがどうなるのか、今出ている情報をまとめました。
NBAが来シーズンに向けて動きはじめました。ShamsやWojによると、開幕は12/22日を目指しているそうです。もちろんNBPAの了承がなければ決定にはなりませんが、予想の1月~3月から大幅に前倒してきました。The AthleticのShamsによると、NBAが理事会に以下の来シーズンは次のようになるとのことです。
・11/18のドラフトは変わらず
・開幕は12/22でクリスマスゲームを行う。
・72試合
・オールスターなしで2週間の休暇あり
・1度の遠征でなるべく試合を消化する
・プレーオフは通常通り(4月~6月)?
・プレーイン・トーナメントあり
2019-20シーズンが10月に終わって無理やり感はありますが、最終的には通常のNBAスケジュールにしていきたいようです。
なぜこのような提案になったのか解説します。
前提:
NBAはコロナのため3/11に中断。NBAの収益の40%は観客まわりのため、約34800億円を損失すると予想されていましたが、なんとかバブルでシーズン再開できたため、約1500億円の損失を回避できたそうです。しかし、経済的に大打撃を受けたことには変わりはありませんだ。そのため、来シーズンの最優先事項は、観客をアリーナに入れて試合をすることでした。
観客をアリーナに入れるためにはワクチンや早く結果が出るコロナ検査が必要になります。その開発を待つため、来年の2月から3月の開幕が濃厚だと言われてきました。早ければマーティン・ルーサー・キングの祝日(1月の第3月曜日)を目指していたようです。
しかし、状況の改善は見られません。現在コロナで、NBA球団が本拠地にしている街(マーケット)の2/3では500人以上が集まる集会やイベントが禁止されています。この状況はあと数ヶ月続くとの見方が多いそうです。10/24にはパンデミックがはじまってから、1日のコロナ感染者数が最多になりました。改善するどころか悪化しています。
カナダに限っては、アメリカから入国する時に空港で2週間の隔離をする必要があり、MLBでカナダを本拠地にしているトロント・ブルージェイズはアメリカのNY州のバッファローに仮本拠地を敷いている状態です。そのため、NBAシーズンをはじめるにあたり、ラプターズの仮本拠地としてルイヴィルが名乗りを上げているという話も出てきていました。
また、たとえワクチンが開発されても一般市民に行き渡るようになるには時間がかかってしまいます。早くても来年度後半になりそうとの事です。コロナ検査の結果が早くわかれば、観客も入れる事ができると考えているようですが、それも市や州のしばりがあり、どうなるかわかりません。
このような社会的情勢もあり、あまりにも観客を入れての試合運営が不透明なため、来シーズンは観客からの収益は捨てて、できるだけTV放映料を確保すると同時に、2021-22シーズンを万全なものにしていきたいと考えているようです。
また、コミッショナーのアダム・シルヴァーは、来シーズン開幕は少なくてもCBA合意から8週間前になると伝えていました。今回CBA合意は10/30に設定されており、12/22はその8週間後にちょうどおさまるため、無謀な提案というわけではありません。仮にCBAが合意できればの話ですが…
予想されるスケジュール
もろもろ逆算して行くとNBAスケジュールは次のようになります。
・11/18のドラフトは変わらず
・キャンプは普通3週間前からなので12/1から?
・そうなるとFAは11/23(月)~11/30(月)の1週間くらいがメインの動きになりそう?
・開幕は12/22で、12/125にクリスマスゲームを行う。
・72試合
・オールスターなしで2週間の休暇あり
・1度の遠征でなるべく試合を消化する
・プレーイン・トーナメントあり
・プレーオフは通常通り(4月~6月)
このようになった大きな理由は、NBAのBRIの半分以上を握るESPNやTNTの意向が働いているようです。
テレビ放映
シーズン通して無観客試合をすることになった場合、NBAの収入はテレビ放映がメインになります。そうなると、クリスマス放映や他のスポーツの競合が少ない6月にファイナルズをする事が大事になってきます。昨シーズンのファイナルズは視聴率の低下が著しく、NBAは危機感を感じたようです。視聴率の低下で苦しんだのはNBAだけではありませんが、やはりNFLの開幕とぶつかってしまった事もその理由の1つとして考えられており、やはりNFLやみんながバケーションで出かける事が多い夏のファイナルズは避けたいようです。そのため、春を支配していたNBAの今まで通りのスケジュールに戻していきたいようです。
元のNBAスケジュールに戻すことにより、約500億円の収益増が見込まれるとのことです。ESPNのボビー・マークスは、約500億円の増収というよりは、約500億円の損失が避けられるのではないかという表現をしています。
NBA選手も、サラリーはオーナーと売上を折半(51:49)なので、たとえターンオーバーが通常の3ヶ月半から2ヶ月になったとしても約500億円の売上を取らざるをえないと思います。
ラッキーにもシーズン途中で観客が入るようになればそれはそれでプラスになります。
フリーエージェンシー
キャンプが12/1にはじまるとすれば、フリーエージェンシーも1週間くらいしか期間がなくなります。チームはその短い間にFAと契約してキャンプに望まなければなりません。
ラッキーなことに、今年はカワイのような球団の運命を変えてしまうようなビックなFAもいないため、選手の決定を待つ時間は必要はなさそうです。去年はカワイの決定を3日くらい待っていて、他の契約が遅れたりしています。今年はアンソニー・デイヴィスがオプトアウトしてFAになりそうですが、レイカーズとの再契約は間違いありません。
もっとも人気があるFAは、フレッド・ヴァンヴリート、ダニロ・ガリナリ、ハレル、イバカ、バータンス、クリスチャン・ウッズらと言われています。彼らを含むFAはオファー内容次第でチームを決めると思うので、すぐに決まりそうではあります。
今年は11/26日がサンクスギビングなので、FAはサンクスギビング前が激しくなることが予想されます。

(illustration by FADEAWAY WORLD)
シーズンの準備期間が短いと、ヘッドコーチやロースターが変わっていないコンティニュイティーがあるチームが有利になります。特にコア選手が残るナゲッツ、セルティクス、ブレイザース、ジャズ、マブスなどが有利と言われています。ヒートも主力はほぼ変わらないでしょうが、バブル疲労がどれだけ長引くのかまだハッキリとしたデータがありません。
また、来シーズンのキャップが当初の予想よりも少なくなることが見込まれるので、全体的に球団もFAであまりお金を使わないような気もします。特に激戦のウェストのプレーオフレースでは開幕ダッシュがシーズン終盤に大きな影響を与えることが考えられます。今回のように限られた時間の中で、FAで大きく動くとコンティニュイティーが失われチームの調子があがらなくなる可能性もあり、開幕ダッシュを失敗してしまう恐れもあります。そのため、今年のFAではあまり大きな動きはないのではないでしょうか。その代わり、状況も落ち着き先が見えてくるトレード・デットラインでは動きが活発になるかもしれません。
サマーリーグ(ウィンターリーグ?)
ルーキーたちはサマーリーグなしにキャンプに突入。そのため、チームは必要とするルーキーたちのスキルを開発する時間がなくなります。特に2巡目指名などの選手たちはトレーナーへのアクセスも資源もなさそうなので、その影響は大きいと言えます。
トレーニングキャンプ
12/22の開幕となると、3週間前の12/1からが濃厚です。もし、隔離期間を設けると、4日後の12/5から正式なキャンプになるかもしれません。
また、FAの選手たちはケガを避けるために、試合から長く離れています。いつものように7月に契約して、夏の間にコンディションを整える時間がなく、とつぜんのキャンプ入りになりそうです。特に、バブルに行っていないFAの選手たちは3月から激しいバスケをしていないので、どのように試合の体をつくっていくのかが懸念されます。キャンプの前半は、チーム練習には参加できないかもしれません。ダヴィス・バータンスやクリスチャン・ウッズらがこのFAの中に入ります。
プレシーズン・ゲームなし
通常ですと、プレシーズンがあり、5~6試合を2週間程のスパンで慣らしながらキャンプからNBAシーズンへ移行していきます。グローバルなファンを獲得するために、中国や日本、ヨーロッパで試合をしてきましたが、それもないでしょう。海外のチームを招待してのプレシーズンの試合もなくなるでしょう。
バブルに招待されなかったデリート・エイト(8チーム)も3月から試合をしていないので、本試合でかなり不利になります。調子があがるまでに数ヶ月かかるチームもあるかもしれません。
また、ケガをして昨シーズンからプレーしていない、ケヴィン・デュラント、クレイ・トンプソン、ジョン・ウォールらも試合に慣れるのに時間がかかりそうです。同時に彼らに慣れなければいけないチームにも時間が必要でしょう。
ひょっとしたら、72試合の中の5試合くらいはバブルの時のようにスクリメイジに割り振られるかもしれません。

(Nathaniel S. Butler/NBAE via Getty Images)
こうなると、バブルのプレーオフの1stラウンド前後までプレーして、コンティニュイティーがあるチームが有利になりますね。サンズ、ブレイザース、グリズリーズ、ジャズ、マジックです。もしかしたら、ジャズはバブルでナゲッツに勝たなくて良かったと言えるシーズンになるかもしれません。またコア選手が健在で、若さがあるセルティクスやナゲッツも有利になりそうです。
開幕日は火曜日
NBAは火曜に開幕するものらしく、12/22がちょうど火曜日になります。通常はTNTがリング・セレモニーの試合を得て、ESPNはクリスマスの試合を得ているそうです。昨シーズンはレイカーズが優勝したので、TNTが12/22のレイカーズの開幕でのリング・セレモニー(リングは全員分間に合うのかな?)を流し、12/25のクリスマス・ゲームはESPNでレイカーズ戦を流すようです。
開幕やイベント試合ではビックゲームが組まれるので、開幕戦はレイカーズ vs ウォリアーズで、クリスマスはレイカーズ vs クリッパーズが観られるようになるかもしれません。
オフシーズン休暇なし
選手たちの休暇が少なくなります。特に、10/11までファイナルズを戦ったレイカーズとヒートの選手たちはキャンプまでおよそ1ヶ月半しかありません。遅れてキャンプ入りしてもたったの2ヶ月です。
体を回復させるため、多くの選手はシーズンが終わると2~3週間は何もしてはいけないようです。それが10/11~11/30までしかないのですから、トレーニング期間は実質1ヶ月ほどになってしまいます。通常ですと、6月後半~9月後半まで休みで、スキルを磨いたり、ケガを直したり、体を休養させたりする事ができます。ダンカン・ロビンソンやヒィーロの体づくりや守備の改善などはきびしくなりそうです。
また、72試合にすることで、連戦が増えるでしょう。選手たちの体にはかなりの負担になるはずです。ロードマネジメントが増えるかもしれませんし(観客もいないし)、プレーオフはケガで荒れるかもしれません。
特に35歳のレブロンにとって、数ヶ月の休暇で連覇に向けてプレーするのはキツイのではないでしょうか。レブロンだけではなく、3月か4月になってへたってしまう選手も出てくると思います。
レイカーズのダニー・グリーンが、来シーズンの12/22開幕の提案について:
「もし12月にスタートするなら、ほとんどの人が“行かない"と言うと思う… そんなに早い再開なら、レブロンもシーズンの最初の1ヶ月は行かないじゃないかと思う」 https://t.co/klxQKFgEl9
— NBA Reporter (@NBA_Reporterjp) October 27, 2020
連戦をできる限り減らすなどして、NBAは選手たちのヘルス&ウェルネスを促進してきましたが、お金も大事なのですから仕方ないですね。(試合数が少なくなれば、その分選手のサラリーも減る)
なぜ72試合なのか?
これだけ弊害があるなら72試合でなくてもいいだろうと思います。
実は、以前にもクリスマス開幕のシーズンはありました。2011-12シーズンはロックアウトで、クリスマスの開幕でした。レギュラーシーズンの試合数は66試合で、レギュラーシーズンが終わったのは4/26、ファイナルズの最終試合はゲーム7がおこなわれた6/26でした。
それなら以前と同じで66試合でいいじゃないかと思います。なぜ72試合なのかと言うと、NBAチームのローカルTVとの契約で放映数が65~70以上という内容がほとんどなので、その契約をクリアするために設定していると思われます。
また、上でも言及しましたが、試合数が減ると収益も下がるため、選手のサラリーも減ることになります。例えば、72試合になると、選手のサラリーは12%減ることになります。ただでさえ、エスクローでサラリーの35%は取られるかもしれず、これ以上の試合数減は望んでいないでしょう。66試合になるとおよそ20%の減給になります。
シーズン中の2週間の休暇
コロナのためイベント開催がNGだと思うので(インディアナ州)、オールスターはやらないでしょう。コロナ感染者数が最高になっており、未だ減少傾向は見られません。オールスター投票はあるかもしれませんが…
この2週間がオールスター休暇にあたるシーズン中の休暇になります。これは普通のオールスター休暇よりも長いのは以下の理由があるそうです。
・オフシーズンが短かったため、選手を喜ばせるため
・コロナ感染で試合が中止された場合のバッファーをとっている
遠征(アウェーゲーム)
また、コロナ感染率を減らすために、極力移動を減らしたいようです。たとえばレイカーズがニューヨークに来た時に、なるべく多くのニックス戦とネッツ戦との試合を消化するようにして行きたいとの事。野球のようなイメージです。同じチームとの連戦というケースも出てくるかもしれません。
そうなると、トロントを本拠地にしているラプターズのアメリカ国内の本拠地は、運営とディビジョン的にもニックスとネッツがあるNYが良さそうですね。もともとネッツがあったニュージャージー州もありだと思います。
ただ、偶然にもコロナ感染でKDとカイリーとレヴァートがいない時にネッツと2戦するチームは2勝を拾えてしまい、成績にも影響してきます。特にウェストは激戦なので、この2勝はプレーオフに進出できるかどうかのチームにとっては大きな意味を持ち、他チームの運命も変えてしまうでしょう。
そうなるとプレーイン・トーナメントの詳細が気になります。バブルでは8位のチームとのゲーム差が2ゲームのチームがプレーイン・トーナメントに入れましたが、なるべくフェアにしていくために、これを4ゲームにするかもしれません。そうなるとスケジュールがさらにタイトになります。
その他の問題点
問題はコロナ感染です。もし感染者が出た場合、チーム自体をシャットダウンするのか?チームの5人が感染したら?コーチが感染したら?全員の陰性が出るまで試合は中止になるのか?その基準はどう決めるのか?何かあった時のバッファーはシーズン中の2週間だけなのか?(内休暇は1週間だけ?)シーズン終了間際にも2週間のバッファーをとるべきなのか?ただでさえ、キツイスケジュールがさらにキツくなりそうです。
また、同じ理由でプレーオフのファイナルズでも通常のスケジュールよりも多めの日程を見ていかなければなりません。例えば2連覇を狙うレイカーズのレブロンがコロナ感染したらどうするのか?試合を延期するのか、またはレブロンをケガ扱いにしてスケジュールを優先し、独立記念日までにはシーズン終了させるのか?
このあたりは、もう前シーズンから検討されていると思うので、NBPAとCBAの合意ができればすぐに情報が出てきそうです。
プレーオフのバブル
バブルを経験した人たちは、もう2度と経験したくないと言っているそうです。また、他のリーグのMLBとNFLなどがバブルなしでシーズンを戦っているのを見て、それで行けそうだと考えている人たちが多いそうです。
またバブルのコストも約180億円かかっており、壮大なオペレーションです。
コロナ感染が昨年よりひどくなれば、バブルがあるかもしれません。バブルをつくるのは最悪のケースのようです。
メリット
これまでスケジュールの前倒しはデメリットが多い印象ですが、メリットもあります。
通常のスケジュールに戻して行くことにより、スター選手たちは7/23に予定されている東京オリンピックに出場できるようになります。ルカのスロバニアやヨキッチのセルビア、NBA選手が多いフランスやオーストラリアなどの各国の代表もオリンピックに出れるかもしれません。
また、選手たちや球団関係者たちも、夏休みの子供たちと一緒に夏を過ごせて、家族でバケーションに行けるようになります。
NBPAとの交渉
このスケジュールはNBPAの合意が必要です。バブルでは、NBPAのプレジデントのミッシェル・ロバーツは選手たちの健康を優先するため、そんなに早くシーズンは開始させないと言っていました。しかし、実際に約500億円の違いを提示されて、選手たちはどう反応するでしょうか。
交渉次第では、1月~7月のスケジュールになるかもしれませんし、同じスケジュールで試合数を減らす案に落ち着くかもしれません。または、10/30までのCBA交渉で、サラリーキャップをフラットよりも約3億円多い約112億円に設定するとか、エスクローを30%に減らすというような条件で、このタイトなスケジュールに合意するかもしれません。個人的にはこのスケジュール交渉とCBA交渉は同じものだと思っています。 10/30後にはCBAもスケジュールもハッキリするのではないでしょうか。
参考サイト:Sources: NBA eyes pre-Christmas start, 72-game regular season
サムネイル画像:Photo by John Locher/AP