レナード&ジョージの特別扱い

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「最初から終わったと感じていた。カワイは特別すぎる扱いを求めていた」

これはクリッパーズの球団関係者の声です。

昨シーズン、クリッパーズはカワイとポール・ジョージというリーグ屈指のウィングの2人をFAで獲得し、優勝候補筆頭と言われていましたが、プレーオフのカンファレンス準決勝でナゲッツに3-1とリードしてからの逆転負けでシーズンを終了。その負けた試合も強豪とは呼べないような内容だったため、問題とされていたチームケミストリーに注目が集まりました。どうやらそれには、カワイとポール・ジョージの特別扱いが関係していたようです。

 

スター選手の特別扱い自体、NBAでは珍しいことではありません。レブロン、ハーデン、KDなど、チーム以上に力を持っている選手たちはもちろん、ベンチプレーヤーと同列で扱われている訳ではないですし、それは選手たちも理解しています。しかし、クリッパーズで問題になったのは、2人にスター選手の条件であるリーダーシップや責任感がないのにも関わらず、特別扱いをされてきたからだそうです。選手を特別扱いするなら、せめて彼らがリーダーシップを発揮してチームをまとめたり、負けた時にもスター選手にふさわしい責任感を持って行動してからにして欲しいと感じていました。それもレナードとジョージのFA移籍の条件だったと思わられるので、チーム的にはどうすることもできなかったのでしょうが…

しかし、元々クリッパーズにいて2年かけてカルチャーを築いてきたチームメイトたちにとってそんな条件は関係なかったようです。

この特別扱いされていた選手たちとロールプレーヤーの溝が、コート上でのケミストリーに影響してきます。

プレーオフでナゲッツに敗れた後、このロールプレーヤーとスター選手の発言の違いが溝の深さをよく表現しています。

ルー・ウィリアムス:「今までは問題があったとしても才能でなんとかなっていたが、今回ケミストリーは助けてくれなかった。このシリーズではそれが敗因になった」「私たちは優勝を期待していた。そうする才能があったが、ケミストリーがなかった」

ポール・ジョージ:「我々の中ではずっと、今年は優勝かそれ以外かという状況ではなかった」(責任感なし)

 

The Athleticのジョヴァン・ブシャさんによると、ロッカールームでは昨シーズンよりジョークが減り、静かでシリアスになっていたそうです。カワイ化しているのでしょうか。コミュニケーションはあまりなく、試合で悪かった時も、それについて話すこともなく静かにスマホを見たりしていたそうです。

そのためか、問題がおきたらお互いに話し合いをするのではなく衝突してしまったようです。

マブスとのシリーズで、責任についてジョージとルーが言い合いになり、ナゲッツとのシリーズでは、タイムアウト中にジョージとハレルの言い合いがありました。確かにジョージのパフォーマンスは悪かったので、ルーとハレルが怒るのもわかります。ジョージはナゲッツとのシリーズのゲーム6ではスター選手のような活躍はできませんでした。

誰にでも不調はあるので、仕方がないと思うのでしょうが、チームメイトはそうは思わなかったようです。

その後、ジョージはロッカールームで友人のレジー・ジャクソンとただむすっとしていただけなのが、チームメイトの感情を逆なでしたそうです。そして、ジョージは必勝のゲーム7では10得点(4-16)、4リバウンドと仕事ができませんでした。ジョージはただ試合の流れに乗っているだけで、その流れを変えてやろう、などのやる気がないようにも見えました。そのためか、シリーズ敗退した後で来年再挑戦しようというスピーチもチームメイトの心には響かなかったそうです。

チームメイトたちは、優勝2回と結果を出しているレナードの特別扱いは理解できていましたが、プレーオフでまだ何も達成していないジョージの特別扱いは理解できなかったようです。それがシーズンがかかった追い詰められたゲームで、その不満が出てしまいました。

球団関係者:「私たちには良いケミストリーがなかった。どうやって勝てというんだ?」

 

では、具体的にカワイとジョージはどんな「特別扱い」をされていたのでしょうか?The Athleticのジョヴァン・ブシャさんのレポートによると…

[wp-svg-icons icon=”stop-2″ wrap=”i”] レナードとジョージだけが自分の警備員とトレーナーを持つことを許されていた

[wp-svg-icons icon=”stop-2″ wrap=”i”] レナードとジョージが練習と移動スケジュールを決めていた。チームメイトは、レナードが練習を何度かキャンセルしたに違いないと思っている。

[wp-svg-icons icon=”stop-2″ wrap=”i”] レナードはサンディエゴに住むことを許されていた。そのため、チームの飛行機によく遅れて来た。

[wp-svg-icons icon=”stop-2″ wrap=”i”] レナードとジョージは試合後45分以降にならないとメディアとは話さなかった。そのため、チームメイトが先にメディアと話すことになり、責任を取らされていた。レナードとジョージはチームメイトを守ったり、チームのリーダー的な発言をすることはあまりなかった。

[wp-svg-icons icon=”stop-2″ wrap=”i”] レナードとジョージはどの試合を休むか選べた。それだけではなく、チームメイトからはプレー時間も決めることができたと思われている。

[wp-svg-icons icon=”stop-2″ wrap=”i”] レナードには試合前のルーティーンのために、特別なプライベートスペースが与えられた。通常はキングスのロッカールームを使っていたが、キングスの後の試合では女性スタッフのロッカールームを使っていた。その20~45分間、女性スタッフはロッカーを使えなかった。それに不満を言っているスタッフもいたという。ロードでもそのような時があった。

これらの不満に対するクリッパーズの対応は、それに注目を集めればカワイが困ることになるので、目をつむっていたそうです。

球団関係者:「それに対してどうすればいいんだ?カワイだぞ」

レナードもこのようなチーム状況はわかっていたようです。ハレルが1月にチームのことを『私たちはすばらしいチームではない」とメディアに語ってから、選手だけのフィルムセッションを企画したりしてがんばっていたそうですが、チームを優勝させるようなリーダシップを発揮することはなかったそうです。レナードは声を出してみんなを引っ張るタイプではなく、態度で見せなければいいけないため、この特別扱いが逆効果だったのではないでしょうか。

ハレル:「私たちはなんとかして、毎晩勝つためにどうすればいいのか解決しなければいけない… 私たちは目を覚ますべきだ」

考えてみれば、レナードはスパーズ時代からリーダー的な選手ではありませんでした。すばらしい選手ではあるけれど、すばらしいリーダーではない、というのがレナードの定評でした。ポップもスパーズのラストでは、レナードは何もやっていなく、マヌとミルズがリーダーを務めていたと言っていますし、ラプターズ時代ではラウリーがリーダーでした。スティーヴン・A・スミスやもレナードはNBAでトップ20のリーダーに入っていないと話していますし、マジック・ジョンソンもレナードはリーダーではないと言っています。ビル・シモンズに関しては、思い切り「彼はリーダーになれない!なぜなら彼は話さないからだ」と言い切っています。

レナードはもうブザービーターを決めて、レブロンをシャットダウンしてと言ったようなプレー以外にも、リーダーとしてチームを導いていかなければいけません。逆に言えば、それだけ彼がNBAのトップ選手として期待され、成長しているということなのでしょう。

しかし、今シーズンのレナードにはそんな心配は無用かもしれません。レナードはすでにリーダーとしての自覚を持ち、チームメイトと話しをしているそうです。モリス、ルー、ビヴァリー、ズバッチらの昨シーズンからの主要選手に加え、サージ・イバカやルーク・ケナードが移籍してきます。個人的には、カワイをイジれてムードメーカーになれるイバカの存在が大きいと思っています。優勝したキャブスのケミストリーを変えるのに貢献したリチャード・ジェファーソンやチャニング・フライのような感じでしょうか。

このように、クリッパーズの優勝には、ケガやコロナ防止だけではなく、レナードとジョージのリーダーシップにもかかっています。また、クリッパーズはコーチもドックからルーに変わりました。ルーはキャブスでレブロンにしたように、スターであるレナードとジョージに責任感を持たせることを期待されています。特に、ポール・ジョージは責任感を持ってほしいですね(もちろんプレーオフ・Pも!)。レナードもチームメイトに認められるようにコートの中と外でチームをまとめていかなければいけません。それができなければ、2人は自ら特別扱いを返上した方がいいでしょう。

とりあえずプレシーズンとシーズンはじめは、レナードのリーダーとしての試合後のインタビュー意識に注目です。


参考サイト:Kawhi, chemistry and a failed Clippers title run: Inside the issue defines 2021
サムネイル画像:Photo by Getty Images, Wikimedia Commons, Pexels

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