コロナ禍のシーズン… 選手やチームへの影響

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今シーズンはコロナ禍の中でかなり特殊なシーズンになっています。

コロナで延期された試合も今まで23試合あり、ウィザースやマヴスのようにチーム内でパンデミックが発生したチームもありました。特にウィザースは1/11から25までの6試合が延期され、その後もなかなかフルロースターが揃わず、それが成績にも大きく影響をしています。

他にも、コロナ感染のため主力なしで8人しか選手がいないシクサーズがナゲッツと戦った試合や、カワイとポール・ジョージがコロナ対策で欠場となったクリッパーズと対戦したホークスの試合があるなど、結構フェアではない試合も多くうまれてしまい、順位自体が荒れています。

例えば現在(2/5時点)、13勝8敗のチームは今シーズンではリーグ5位ですが、昨シーズンでは12位になります。また、イーストで8位のホークスは、1位と5.5ゲーム差ですが、15位のピストンズとは4.5ゲーム差で、プレーインに滑り込める10位のチームとは0.5ゲーム差になっています。ウェストも同じような状況で、これだけ順位が拮抗しているシーズンはコロナ禍独特な現象だと思います。

これが今後のプレーインやドラフトにも影響してくると思うと残念ですが、チームはコロナ感染者がでないように日々戦っています。

このように、コロナ禍のシーズンは選手やチームに大きな影響を与えていますが、いったいその「コロナの影響」とは具体的に何なのでしょうか?調べてみました。

 

ヘルス&セーフティー・プロトコル

NBAはなるべく試合が延期にならないように、コロナ感染を制限するヘルス&セーフティー・プロトコル(以下H&Sプロトコル)を導入してコロナ対策をしています。

ここでは長くなるので、具体的な対策には触れませんが、簡単に言うと次のようなものがあります。

ホームではほぼロックダウン

ロードでもほぼロックダウン

マスク着用とソーシャル・ディスタンスの徹底

ベンチやフライトの席の固定

ミーティングは10分以内

アリーナには試合前3時間にならないと入れない

毎日のコロナ検査。チーム内にコロナ検査陽性が出たらチーム全体が1日に2回検査。

陽性が出たら、地元の保健所に連絡して感染追跡/最後に陰性だった時にいた場所までを消毒/陽性の選手のために隔離場所を設置

などがあります。

また、コロナ感染追跡調査もしており、感染者と濃厚接触したと判断されればコロナ陰性結果が確実になるまで隔離になります。

 

選手のパフォーマンスへの影響

シーズンへ向けての準備不足

昨シーズンが10月に終わったため、NBAもNBPAも今シーズンの再開は早くても1月後半か2月になると考えていました。しかし、テレビ局がクリスマスゲームをしたい&夏に視聴率が取れないと考え、シーズン開幕が12/22に決定しました。最初はシーズン開幕の前倒しに反対意見が多かったですが、今シーズンは観客がいなくてチケット収入がないない中、テレビ局のお金だけが頼りです。最終的にNBPAも12月の開幕に合意しました。

しかし、選手たちのシーズンへ向けてのコンディションづくりは、簡単には前倒しできません。

今まで1月末に向けて照準を合わせていた調整してきた選手たちは、オフシーズンが急に1ヶ月も短くなり、トレーニングの見直しをすることになりました。

ブラッドリー・ビール:「12月と聞いていた驚いた、ルーティーンを変えて冬の計画を変えなければいけなかった。多くの選手は気に入らないだろうが、金のためにやらなければいけない」

また彼はケガについても、「多くの選手がケガを適切に治さなければいけない。不意をつかれた」と言っています。

まだまだ不調のルカ・ダンチッチも調整が遅れた選手の中のひとりだそうです。

影響を受けるのはトレーニングだけではなく、私生活にも及びます。

フリーエージェンシーの後からキャンプまで1週間くらいしかない中、選手たちはその間にできる限り、住む家や子供たちの学校などをどうするか決めなくてはいけません。ルーキーや新加入の選手たちの生活はかなり慌ただしかっただったようです。もちろん、私生活も選手たちのメンタルに大きく影響するので、当然それがプレーにも影響します。

その影響を最も受けたのはラプターズです。カナダがアメリカとの国境を閉じているため、ラプターズは一時的に本拠地をトロントからフロリダ州のタンパに移すことになりました。選手たちの中には、子供の学校もあるため家族をトロントに残してきたり、家をどうするか等忙しかったようです。FAだったFVVはトロントの家をすでに引き払っており、シカゴに家族を残すかどうか悩んだと言っていました。家族を残してきている選手たちにとっては、シーズンずっと遠征に出ている感じだそうです。家族に会えないことが思いの外キツイという選手もいます。

これが開幕から1勝6敗とリズムにのれなかった理由なのかもしれません。

(Photo: Blake Murphy / The Athletic)

コロナ検査とリズム

選手たちは、練習場に入る時間、昼寝の時間、試合前のルーティーン等の毎日のやることを習慣化して、なるべく同じリズムで試合に望めるように管理していると思います。そのリズムが、コロナの検査の対応で狂っているようです。

現在NBAではコロナのPCR検査だけはなく、検査結果が早くわかるPOC検査もおこなっており、その結果が出るまで練習場に入れないそうです。

検査の流れは、朝の練習のために選手たちが練習場に来た時に検査を行い、POC検査の結果が陰性でないと練習場に入れないそうです。選手たちは、その結果が出るまでの30分~45分くらいの間はクルマの中で待たなければいけないようです。偽陽性が出ると、再検査のために更に1時間待たなければいけないそうです。冬が厳しいセントラル・ディビジョンのチームなどはどうしているのでしょうか?すぐに建物には入れなかったら特に大変ですね。

また、検査は毎日受けなければいけないため、選手たちにも完全な休日はなく、検査のためだけに練習場へ行かなければいけません。オフの日にマッサージや治療を受けたいと思っている選手は、POC検査の結果が出るまで長い間外で待たなければいけないため、それをするのをためらってしまう時もあるようです。

ロードのプロトコル

シーズンも1/4が終わり、選手たちはホームではどうやって検査の結果が出るまでの待ち時間を潰したり、どういう生活サイクルをすればいいか掴めてきた頃だそうです。しかし、コロナのプロトコルはマーケットの街ごとに違うので、ロードは全然慣れないそうです。

例えば、オクラホマではテスト結果が出るまで時間がかかるため、朝の10時まで練習場に入れず、シュート練習もできないそうです。また、ユタのように、朝も早くても7:30に検査をしてから練習やシュートアラウンドをしなければいけないところもあるようです。

オーランド・マジックは、アウェーではシュートアラウンドをなくしている事を考えると、この検査のプロセスは選手たちにとってはかなりの負担になっているようです。

また、基本チーム活動以外では外にはでれず、外での交流もホテルにゲストを招くこともNGになりました。部屋でできることはゲームか、HBOやNetflixなどでドラマなどをビンジングするくらいだそうです。もちろん他チームの試合も観たりします。なかには部屋でフェースタイムしながら試合観戦を試した強者もいるようです。かなりヒマなのでしょうね…

NBAは各マーケットで食事ができるレストランのリストをまだ出してはいないそうなので、基本的には食事はホテル内だそうですが(マーケットの規制次第でレストランにパティオがある場合などはOK)、ルームサービスは部屋に入ってこれないそうです。なので、シーツも自分で変えなければいけないとのこと。フロントに行くことも許されておらず、ランダムな他人と接触しないように徹底管理されています。

ハスレム:「ただバスケをプレーするために部屋に24時間閉じ込められるのはメンタル的にヘルシーではない…散歩もできないのか?それはひどすぎる」

マイルス・ターナー:「バブルの中のバブルだ」

このように、H&Sプロトコルは選手たちのメンタルに大きな影響を与えているので、それでリズムを崩す選手たちも多いのではないでしょうか。ルーティーンの鬼でシャープシューターとして名を馳せているペリカンズのJJ・レディックの不調の原因はここにあるのかもしれません。他にも、今シーズン明らかにパフォーマンスが落ちているロンゾ・ボールやウーブレはルーティン重視型なのかもしれませんね。

(Photo: Rocky Widner/National Basketball Association/Getty)

コーチたちへの影響

このNBAのH&Sプロトコルにより、コーチも選手たちと同じように影響を受けています。

コーチの仕事は、練習プログラム構築、フィルムの見直し、新しいプレーの込み込み、選手たちとの関係性構築、試合のプランを考えることなど多岐に渡り、時間がいくらあっても足りないくらい忙しいそうです(睡眠時間が取れなくて体調を崩したタイ・ルーやスティーヴ・クリフォードの記憶もあたらしいですね)。

ただでさえ時間のない中、H&Sプロトコルのため、肝心な練習の時間が思うようにとれなくなっているそうです。コートでの時間が少なくなった事で、スクリーンのアングル、カットの適切なタイミングなどの見えにくいけど勝率をあげるためのディテールを教えることができていないそうです。

また、ほぼロックダウンの生活をしている選手たちのメンタルやモチベーションを保つことも大きなチャレンジだそうです。選手の中にはケヴィン・ディラントのように、これで余計に心配することがなくなってバスケだけに集中できると思っている人たちもいるようですが、上のハスレムのようにそうでない選手たちも多くいます。コーチは選手たちのフィジカルだけではなく、メンタルも準備させなければいけないので、今まで以上にコミュニケーションスキルが大事になってきていると思います。

ミーティングも10分以内に制限されるため、フィルムセッションも10分しかできません。カイル・クズマがレイカーズが優勝できた理由の1つにフィルムセッションでの会話をあげるほど、実はフィルムセッションはチームをまとめるための大切な時間だったりします。それをZoomなどでやるのでしょうが、やはりチームの一体感は出にくいのではないでしょうか。

そして、特に大きな影響を受けているのが、チームビルディングだそうです。

チームはロードでつくられると言っても過言ではありません。ロードでは深夜にホテルに着いて慣れていないベットで寝たりと大変ですが、ずっとチームが一緒にいるために仲が深まるそうです。ともに笑える思い出が生まれるのもロードが多いそうです。

ホーネッツのヘッドコーチのジェームズ・ボーレゴ:「チームはロードでファミリーになる。チームづくりの聖地だ」

チームは通常のシーズンでは、ロードで映画鑑賞やボーリング大会などをしたり、一緒に食事をすることによって絆を深めていきます。それが今は禁止され、食事も6フィート離れてのものなので、チームビルディングがなかなか出来ないそうです。ロビーでのバスの待ち時間はお互いにしゃべったりして社交時間になっていましたが、今はみんなマスクをして6フィート離れているのでコミュニケーションがないそうです。

そのため、チームは試行錯誤しながら、いろいろ試しているようです。例えば、サンダーはニューヨークに遠征した時に、ホテルの6階を貸し切って、そこにARのゴルフゲームや巨大スクリーンを入れてゲームルームをつくったそうです。しかし、H&Sプロトコルが厳しくなり、10分ルールができたので、選手たちが集まって楽しめる企画モノはできなくなってしまいました。

このように、コロナ禍のシーズンでは、今まで以上にコーチのクリエイティビティーが試されています。アウェイで大きく勝ち越しているレイカーズ、ジャズ、ナゲッツ、ブレイザースなどのコーチは、その辺りのケアもうまくやっているのではないでしょうか。(ずっと同じ選手が多いのも理由かもしれませんが…)

 

トレーナーたちへの影響

選手やコーチたちも大変そうですが、コロナで最も影響を受けているのが前線で働くトレーナーたちのようです。

そもそもキャンプが短いため、トレーナたちがやる業務は少なくとも2倍に増えていたそうです。そこにH&Sプロトコルの対応が出てきたため、やらなければいけないことが激増して早くも現場は疲弊しているそうです。

158ページあるH&Sプロトコル対応のため、チームは以下のポジションをつくらなければならず、それをトレーナーたちが兼務しなければならなくなっているとの事。

検査員
感染追跡員
マスク強要員
施設衛生員
ヘルス教育&啓発員
トラベルセーフティー員

こうなると、もともとトレーナーなどスタッフにお金をかけているチームは有利です。スタッフにはサラリーキャップもないので、そこにお金を使おうと思えばいくらでも使えるわけです。とは言ってもマーヴェリックスのように、最先端の設備とトレーナーたちがいても成績が悪いチームもあるのですが… それでもシーズンが圧縮されて連戦が多い今シーズン、このような金持ちチーム(ビックマーケットのチーム)はケガや健康の予防に少しでもリソースをまわせるので、今後有利に戦えますね。

また、コロナを取り巻く状況は毎日変わって行きます。それはNBAのプロトコル変更だけでなく、マーケットの行政対応も変わってきます。コロナに関してのEメールが来ても、それは1ページのメモではなく15ページに及ぶものもあるそうで、現状を把握するだけでも大変な作業になるそうです。それがほぼ毎日あるらしいので、そこでもかなりの時間を取られてしまうそうです。しかも、コロナには休日も関係ない…

もし朝に陽性が判明するすると、みんながシュートアラウンドにくる朝の8:00~9:00の前に対応をやり終えていけなくてはならず、偽陽性でもバタつくようです。なんだかんだで試合がある日は寝るのが深夜になり、3~4時間寝られれば良い方だそうです。

このように、かなりの時間をプロトコルに取られて1日が終わってしまうため、中には忙し過ぎて、肝心の選手たちを見れないアスレチック・トレーナーも出てきているようです。あるトレーナーは、「プロトコルの運営と検査で忙し過ぎて、もう2週間も選手に触っていない」と言っています。

みんなを安全にするため、トレーナーたちは一生懸命に働いているのですが、選手のケガのリスクが増えてしまう… しかもシーズンが圧縮されているため連戦が多いので、選手たちの筋肉系のケガが増えるのが心配ですね。ケガも怖いし、コロナも怖い… 金があっても人員をすぐに増やせる訳でもないでしょうからなんとか乗り切って欲しいですね。

トレーナーたちの奮闘も実り、NBA選手の先週のコロナ新規感染者はゼロでした!

 

来週からマスクも高性能のN95やKF94のマスクに変えるらしいですし、アメリカではすでにコロナワクチンの接種がはじまっています。このまま7月まで順調に行ってほしいものです。

 


参考サイト:It’s a bubble within a bubble’: NBA players open up about road lockdown