ブレイザースに何があったのか

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ブレイザースが過去に性的暴行疑惑があるチャンシー・ビラップスを新ヘッドコーチ候補に選んだことにより、多くのファンたちから反発を浴びました。そして、その反発はビラップスを支持していたフランチャイズスターのデミアン・リラードにも飛び火。そのため、リラードはトレード要求をするのではないかという話にも発展してしまいました。

この騒動がどのようにして起きて、そしてどこに続いて行ったのかを簡単にまとめました。

この騒動の発端はプレーオフのファーストラウンド敗退だと言ってもいいでしょう。今シーズン、ウェストの6位の42勝30敗の成績でプレーオフに8年連続で進出しましたが、主力のケガが続いていたゾンビ状態のナゲッツ相手に2勝4敗で敗退してしまいました。

その後リラードは暗号めいたメッセージをインスタにあげました。勝てない状況に苛立っているのがわかります。

「どれだけ身を捧げればいいんだ?準備がチャンスと巡り合うまであとどれくらいだ?」ニプシー・ハッスル

 

 
 
 
 
 
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そして、ストッツが残る条件は、リーグ最低レベルだった(去年27位)ディフェンスの改善とがだったためレーオフシリーズの勝利でしてが、両方成し遂げられず解雇になりました。ディフェンスに至っては去年よりも悪い29位にまで落ちてしまいました。

デミアン・リラードはそのシーズンが終わった日、Yahoo! Sports! のクリス・ヘインズに次のヘッドコーチは誰がいいか聞かれ、「私が望んでいるのはジェイソン・キッドだ」と言いました。キッドは同郷のオークランド出身で、殿堂入りしているPGでヘッドコーチの経験もあります。その時、ヘインズは、リラードは次のヘッドコーチ探しに大きな意見をしていくつもりで、要求にもっと声をあげていくと書いています。

また、同時期にデミアン・リラードは、The Athleticのジェイソン・クウィックに、次のヘッドコーチは誰がいいか聞かれ、ジェイソン・キッドかチャンシー・ビラップスと答えていました。この辺りは、リラードがメディアを使って自分の要望を公にして球団にプレッシャーをかけているように見えます。

しかし、このリラードの発言を受けて、ジェイソン・キッドは候補になることを辞退しました。キッドがなぜ断ったのかはDV問題が再燃することやマブスの話があった等の諸説ありますが詳細はわかりません。このように、球団のスターであるリラードもヘッドコーチ探しに積極的に関わっていくと思われていました。

ESPNのレポートでは、ブレイザースのヘッドコーチ候補には、ジェフ・ヴァン・ガンディー、ネッツのアシスタントのマイク・ダントニ、ミシガン大のジュワン・ハワード、クリッパーズのアシスタントのチャンシー・ビラップスの名前があがっていました。ビラップスはリラードとも仲が良く、GMのニール・オーシェイとの関係もあり、ビラップスが有力なのではないかと言われはじめます。

オーシェイとブラップスの関係は、オーシェイがクリッパーズでGMをしていた2011年に遡ります。オーシェイは当時ニックスからアムネスティーで切られたビラップスを拾い、ビラップスはクリッパーズで2年プレーします。オーシェイはビラップスのリーダーシップを気に入っていて、今回のヘッドコーチ探しで最初から(プレーオフがはじまるずっと前からと言っている人もいます)彼をプッシュしていたようです。

ブレイザースがヘッドコーチを本格的に探し始めた時、多様性のある候補者をインタビューしていきます。そして、最終候補にはネッツのアシスタントのマイク・ダントニ、スパーズのアシスタントのベッキー・ハモン、クリッパーズのアシスタントのチャンシー・ビラップスが残りました。

オーナーのジョディー・アレンは女性のベッキー・ハモンを押していたようですが、オーシェイが説得し、ビラップスのヘッドコーチ就任が決まりました。何度か候補者たちとZoomインタビューをした時に、リラードも参加していたとのことなので、リラードの了承も得ていたのは間違いないでしょう。

ESPNのブライアン・ウィンドーストによると、マイク・ダントニもかなりいいところまで言ったようです。ダントニはインタビューでリラードに、サンズでスティーヴ・ナッシュ、ロケッツでジェームズ・ハーデンにやったのと同じように、リラードをMVP候補にすると言ってかなり感心させたようですが、選ばれませんでした。ダントニはビラップスよりも高いサラリー(おそらく最低約7億の4年契約)を望んでいたので、金額もネックになったのかもしれません。

しかし、ここでチャンシー・ビラップスに今まで誰も何も言ってこなかった1997年の性的暴行疑惑が浮上します。クリッパーズのアシスタントになった時も、EPSNに雇われた時もこれが問題になることはありませんでした。

性的暴行疑惑があった当時、ビラップスはセルティクスの21歳のルーキーで、チームメイトだったアントワン・ウォーカーの家で女性をレイプしたとして訴えられています。ビラップスはセックスは合意だったとしてレイプを否定しています。最終的に女性とは示談になりました。

*注意:以下のパラグラフは何が起きたかビラップスと女性の警察への供述になり、内容が過激になります。そういうのが気になる方(特に女性)は青字部分は読まずに飛ばしてください。

ビラップスは警察に、その夜はウォーカーの家には行っておらず、女性が車の中でオーラルセックスをはじめ、それがセックスに発展したと言っています。ロン・マーシャーは警察に、ビラップスの家で女性とオーラルセックスをしたと言っています。女性は、ウォーカーの家でウォーカーの友人とビラップスとマーシャーにレイプされたと主張し、襲われて抵抗している最中に気絶したと言っています。そして女性は朝起きた時に、喉と膣と直腸にケガをしており、背中にアザができていたと訴えていました。彼女の車の中から精子も発見されています

このため、ブレイザースファンがリラードになぜビラップス(キッドも妻にDVしていた)を選んだんだ、と非難するようになります。リラードはそのSNSでの反論の中で、自分は候補を選んでおらず、すでに選出されていた名前の中から気に入った候補を選んだだけだと明かします。

リラード:「もうし訳ない、彼らの過去は知らなかった、その頃は7/8歳でニュースは読んでいなかった、私はそういった事は支持しない」

そして、リラードとはプライベートでも仲が良いクリス・ヘインズが、リラードはヘッドコーチ探しには関わっていないという記事を出しました。これはリラードがメディアを使って守りに入ったと見ていいでしょう。

その記事の抄訳です:

ブレイザースの新ヘッドコーチ雇用プロセスの大きな反発と優勝候補チームをつくれるかどうかの要素が、デミアン・リラードが去ることをプッシュするかもしれない。

リラードはポートランドに忠誠を尽くしてきたが、それは素晴らしいファンがいたことが大きい。しかし、この数日、彼はSNSで自分とは無関係なコーチ雇用について攻撃されている。…

コーチ探しはチームのプレジデントのニール・オーシェイにより仕切られていた。彼らがインタビューをした候補は誰もリラードから提案された候補ではない。

オールNBAのガードは、コーチ、解説者、元選手としてビラップスと関係があるが、1997年の性的暴行疑惑の過去についての知識はまったくなかった

また、リラードとも親しいThe Athleticのジェイソン・クウィックも、リラードはブレイザースが優勝候補になれるか不安になっていると書いています。彼はリラードに、この夏にオーシェイとブレイザースについて彼の頭と心はどこにあるか聞いたら、ノーコメントだったそうです。ブレイザースにとっていい知らせではありません。

クウィック:

リラードサイドからは明らかに切迫感があり、リラードは「大きく勝ちたい。そして彼はそれを今やりたい」この夏が失われたものになると、停滞だけでは済まずに最悪のケースもありえる:リラードのトレード要求だ。

リラードはこの夏、オーシェイがどうやってチームをつくるのか様子をみて将来を判断していき、オーシェイに良いチームをつくるようにプレッシャーをかけていくようです。

このような経緯でリラードのトレード話が盛り上がりました。例えば、昨年の2位指名のジェームズ・ワイズマンと今年の7位&14位指名権があるウォリアーズとのトレード:ウォリアーズは、ステフ、クレイ、リラードを揃えてステロイド強化版スプラッシュ・ブラザースを結成してはどうかとか、キャップスペースでリラードをまるまるを吸収できてサラリーマッチする必要がないニックス等とのトレードです。クイックリー、トッピン、バレット、指名権… 他にもペリカンズ、レイカーズ、セルティクスらとのトレードマシーン遊びも活発になり盛り上がりました。

リラードが、意外にもヘッドコーチ探しに関わっていなかったことが明らかになり、球団にずっと忠誠を尽くしてきたリラードを外すような扱いをしているオーシェイのやり方への批判が強まります。

CJ・マコラムのポッドキャストの元ホストでESPNのジョーダン・シュルツもGMのオーシェイに次のように不満をぶつけています。

オーシェイは、ストッツを解雇した時も、ディフェンスが悪かったのはチームづくりの問題ではなく、コーチングの問題だと非難しています。自分でカーメロ・アンソニーとエネス・カンターの2人をベンチの主要メンバーにいれておいたことは棚にあげて、このように後ろから仲間を刺すようなマネができる人が良いカルチャーをつくれるとは思えません。オーシェイは自分の首がかかっていたから、保身のためにこのような発言をしたのだと言う人もいます。いずれにしても、オーシェイのやり方はあまり褒められたものではないでしょう。

ヘッドコーチ探しからなぜかリラードのトレード要求の話まで大きくなってしまい、ビラップスの雇用を正当化しなくてはいけないブレイザースは、第三者機関を雇ってこのレイプ疑惑について調査します。そして、オーシェイはヘッドコーチにビラップスが就任することには問題ないとの判断を下しました。

オーシェイはレイプ疑惑の調査の結果について「何も合意されていななかったものはなく、彼を雇うことを妨げるようなことはなかった」と言っています。

オーシェイ:「私たちが見つけたものは企業秘密だ。あなたたちは、私たちが雇った実績がある事務所の調査からの結果を知っている私たちの言葉を信じるしかない」

しかし、反発を受けているにも関わらず、このようにどのような調査をしたのかは明かさなかったため、メディアやファンたちからは透明性がないと批判を受けています。

後にこの調査は元FBIの調査員によって行われたのがわかっています。

こうしてブレイザースは、チャンシー・ビラップスと4+1の契約を結びます。

 

ビラップスと契約して話が終わった訳ではありませんでした。ビラップスのヘッドコーチ就任の記者会見でオーシェイがやらかしました。

ビラップスのヘッドコーチ就任の記者会見では当然レポーターたちからレイプ疑惑についてはつっこまれる訳です。それが大きな問題になっているとわかっているので、ビラップスは会見はまずレイプ疑惑のことから話はじめます。

ビラップス:「チームでの私の役割とヘッドコーチになった私について話す前に、まず私は1997年にあった事件について話たい。私たちがする全ての判断が個人の人生に深い影響をいかにあたえるかについて考えない日はない。私は選手としてとても若かった時、選手としてだけではなく、1人の若い人間として、若い大人として、すべての判断には結果があるということを学んだ。そしてそれは1997年にカノジョだった妻と娘たちと本当に何があったか、何をメディアやニュースで読むのかについて健全でタフな会話につながった… しかし、この経験がとても多くのちがった形で私の人生を形づくった」と話ました。

そしてクウィックから「具体的にそれがどう形づくったのか」聞かれた時、ブレイザースのPRが質問を止めてしまいます。レイプ事件の詳細を聞いている訳ではなく、ビラップスが自分で発言したことについて聞いているのに、この対応が、「恥ずかしい」「悪く見える」などさらなる批判を招きます。

下がその時の映像ですが、ここで質問が出た時、オーシェイが水を飲む合図を出して、PRに質問を拒否させたと言われています。ただ、ビラップスには答えがあったようできちんと話したかったように見えます。ちなみに、これを止めたPRはこの日の会見が雇われてはじめての記者会見だったそうです。

ビラップスのエージェントはマイク・ミラーで、クラッチ・スポーツ所属です。ビラップスを守るためにクラッチがPRには力をいれていた可能性もあります。クラッチがオーシェイに頼んでやらせていたのかもしれません。

クラッチはこの件では、米スポーツメディア最大のESPNも取り込んで、ビラップスの性的暴行の記事をソフトに書かせています。クラッチにはレブロンもいますし、これからの情報取りを考えるとESPNもクラッチの要望を聞いた方が良いのでしょう。逆にヘインズやクウィックらは直接リラードに情報を取りに行けるため、彼らはブレイザースやビラップスに忖度なく書いています。記事の題名も「ブレイザースのGMのニール・オーシェイは新ヘッドコーチのチャンシー・ビラップスは性的暴行で無罪だと強調した」と性的暴行の文字が踊り、ESPNは「ブレイザースのコーチのチャンシー・ビラップスが雇用の反発について発言し、1997年の事件は”私の人生をカタチづくった”;質問のフォローアップは司会者によって止められた」と成長の部分にフォーカスしています。

クラッチにはトレードの可能性を噂されているベン・シモンズもいますし(ブレイザースのCJとのトレードも噂されている)、オーシェイとしてもそれを無下にはできない事情があったのかもしれません。

または、これはオーシェイがこれからチームを率いるビラップスを守るために善意を持ってやったのかもしれません。しかし、与えた印象はもみ消しのようで反応は最悪でした。

いずれにしてもブレイザースにとってPR的には大失敗の記者会見でした。かわいそうなのは、ビラップスで、彼は何かを言い出していて回答するつもりだったし、きっと良い回答をしたと思います。事故に巻き込まれたような感じですね。全体的に、オーシェイのハンドリングミスが目立ったヘッドコーチ探しでした。

このように、ブレイザースのヘッドコーチ探しは、リラードとブレイザースのPR合戦、オーシェイのフランチャイズスターへの扱いや、コーチ批判、透明性のなさ、記者会見でのパワープレーによるPR失敗などを通して、最終的にオーシェイへの批判へと変わってきました。

はたしてオーシェイはリラードに優勝候補チームをつくってあげられるのでしょうか。今のチームのサラリー状況だと8人ですでにキャップを約6億円超えています。SIのクリス・マニックスによると、CJはこの夏にはトレードされないと言われているそうです。そうなると、ノーマン・パウェルと再契約をした場合、タックス回避のためにデリック・ジョーンズかカヴィントンをトレードしなくてはいけないかもしれません。ディフェンスを良くするためにはカンターやカーメロもなんとかしないと行けないでしょう。(ビラップスの元でプレーするカーメロは見たいです。ナゲッツやニックス時代はまさかこんな展開になるとは思ってもいませんでした)

(ナゲッツ時代のビラップスとカーメロ・アンソニー)

何をしようともオーシェイは、リラードからトレード要求されないように努力の成果を見せないといけません。リラードからのプレッシャーもあるため、この夏、オーシェイはかなり動くのではないでしょうか。さもなければ、次は批判が強いオーシェイが出ていく事になるでしょう。


参考サイト:Sources: Coaching process, inability to build title-contending roster may push Damian Lillard out of Portland / Blazers GM Neil Olshey insists new head coach Chauncey Billups is innocent of sexual assault / Coaching search, the focus on Neil Olshey’s offseason, CJ McCollum on the trade block? Blazers mailbag
サムネイル画像:Photo by Sam Forencich/NBAE via Getty Images