ベン・シモンズ !!

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フィラデルフィア・インクワイヤーのキース・ポンペイ氏が、先週ロスで行われたベン・シモンズとシクサーズのミーティングをすっぱ抜きました。

シクサーズ側の出席者は、オーナーのジョッシュ・ハリス、プレジデントのダリル・モリー、GMのエルトン・ブランド、ヘッドコーチのドック・リヴァースだったそうです。錚々たるメンツでこのミーティングの重要さが感じられれます。

ポンペイ氏によると、そのミーティングの中で、シクサーズの4人はシモンズに9月28日からはじまるトレーニングキャンプに参加して欲しいと伝えたそうですが、ベン・シモンズはシクサーズ(オーナー)に直接トレーニングキャンプには出ないつもりだと伝えたそうです。

この記事のタイトルは「ベン・シモンズはシクサーズの選手にはなりたくないとチームに伝えた」とあるので、実質シモンズが直接チームの意思決定者たちにトレード要求をしたとも言えるでしょう。もしくは直接訴えたのかもしれません。

トレーニングキャンプに出ない選手は罰金を課せられるそうですが(上限約2250万円まで)、シモンズはそれも理解しているとのこと。4年で約147億円の契約が残っているシモンズにとってお金の問題ではなさそうです。また、シクサーズがシモンズに罰金を課すのも、これからのリッチ・ポールとクラッチ・スポーツとの関係を考えると微妙なようです。もしクラッチを怒らせてしまえば、今後クラッチの選手獲得に障害が出る可能性もあります。現に、クラッチはレップしているタイリース・マキシィを使ってプレッシャーをかけはじめているようです。

マキシィにとってはシモンズがいなくなった方がプレー時間が増えそうなので、クラッチは選手のことを考えて欲しいという意見もありますが、クラッチはマキシィに、自分のクライアントの幸せのためにはできる限りのことをすることを見せているようにも思えます。ちなみにリッチ・ポールをよく知るESPNのウィンドーストは、ポールは選手の交渉を他の選手に影響はさせるようなことはしないと言っていました。

このようにちょっとシクサーズが本格的に揉め始めてしまいました。ちょっと長くなりますが、ここまでのシクサーズとシモンズの関係を振り返りながら、シモンズのトレードはどうなりそうなのかまとめて行こうと思います。

シクサーズとシモンズの関係

ベン・シモンズは2016年に1位指名され「プロセス時代」のシクサーズ入りし、最初の1年は足のケガで欠場しましたが、翌年復帰してルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲得しました。これまで若くしてオールスターに3回選出され、去年のDPOYでもゴベアーに次ぎ2位。背が6’10”もあるボールハンドラーで、運動能力もパスもフィールも抜群で、彼をリーグのトップ15〜20位に入れる人も多かったと思います。昨シーズンのMVP候補だったエンビードとともにシクサーズを背負って立ち、「プロセス」を終えるはずの選手でした。

しかし、2019年あたりからシモンズとシクサーズの関係が微妙になりはじめました。シモンズはシクサーズのスタッフたちに幻滅し、練習はシクサーズの練習場以外のところでやっていたこともあったそうです。そのためか、エンビードとのケミストリーも悪くなっていったとも言われています。

それが昨シーズンに新ヘッドコーチのドック・リヴァースが来てから大分改善していたようです。シモンズも「雰囲気はとても良くなった。皆が練習に来たがっている。みんがが早くに来て練習している。ジョエルが練習をしているのを見ると、自分ももっとハードに練習しないといけない」と言っていました。

それも束の間、プレジデントに就任したダリル・モリーがシモンズをジェームズ・ハーデンのトレードでロケッツへ送ろうとしました。交渉はほぼ終わり、シクサーズはシモンズに荷物をまとめるように伝えたとも言われています。結局、ロケッツのオーナーのフェーティッタが、モリーにハーデンを渡すのを拒否したためトレードは成立しませんでしたが、チームが自分にコミットしないのは伝わったのではないでしょうか。

それも当然のことで、シモンズはどれだけコーチ(ブレット・ブラウン)がスリーを撃つように頼んでも頑なにスリーを撃たなかったり、シクサーズがシュートが苦手なシモンズのために用意したシュート改善練習をやらずに、自分のシューティングコーチの兄とシュート練習をやっていたそうです。シモンズが試合でシュートを撃てないので、オフェンスが制限されてしまい、エンビードとのフィットにも疑問が持たれ始めていました。もっとも本人的には例えエンビードがポストアップしても、自分が決められないスリーを撃つためにコーナーにいるよりも、ダンカースポットにいた方がチームにとっても良いと思っているようです。

このように、シモンズとシクサーズはコートの外と中で問題を抱えていました。

ちなみに、シモンズのキャリアのスリーを撃った本数は4年(レギュラーシーズン)で34本。昨シーズンのステフェン・カリーは開幕3試合で35本撃っていたので、シモンズが今のバスケでセンターか?くらい外を捨てているのがわかると思います。シモンズのキャリアスリーFGは14.7%、フリースローは59.7% です。

運命のプレー

それでも、シュート以外の才能はピカイチなので、騙し騙しやってこれましたが、昨シーズンのプレーオフでシモンズの評価が一気に下がります。

イースト1位で優勝候補だったシクサーズが、プレーオフのセカンドラウンドでプレーオフ初経験のホークスに「シモンズの弱点」をつかれて敗れてしまったのです。

シモンズはそのシリーズのFTが34.2%とかなり低く、ホークスがそこにつけこみました。ホークスは負けている時にハック・ア・シモンズをして、シモンズにフリースローを撃たせ続けて試合をひっくり返した試合もあります。そのため、シモンズは試合をクローズできない屈辱も味わいました。そして問題になったのが、ゲーム7のこのプレーです。

シリーズ第7戦の4Q残り3:30秒で2点負けている時に、シモンズはファウルをされてフリースローラインに行くのを恐れたのかバスケット下でダンクをしないでパスを選択してしまいます。

これでシモンズの精神力、シュート力やフリースロー等の欠点が必要以上にフォーカスされて、終いには性格などが問題視されるようになりました。

これがレギュラーシーズンだったら、いつものように「私にはスリーは必要ない、スリーがなくても20点とれるからだ」とか言える世界だったのかもしれませんが、これでシクサーズのシーズンが終わってしまいました。せめてカンファレンス・ファイナルズに行きたかったのでしょう。試合後にショックを受けていたヘッドコーチやチームメイトから遠回しに非難されてしまいます。

リヴァースは試合後のインタビューで、シモンズは優勝候補のチームのポイントガードになれると思うか聞かれ、「今その答えはわからない」と答えました。

エンビードは、「あのプレー(シモンズがダンクをしなかった)で流れが変わってしまった」と言い、2人ともシモンズのことを守りませんでした。アメリカ人は人の前ではポジティブで正しい事を言うので、今回は2人ともシリーズ敗戦に相当精神的ダメージが大きかったのか、少しだけ本音が出てしまったようです。

シモンズからしてみれば、ヘッドコーチとエースから自分を守ってもらえずにショックだったのではないでしょうか。試合で負けたのはすべてが彼の責任ではないからです。そのためか、シモンズはこの夏、シクサーズのフロントや選手たちとはほとんど連絡を取り合っていなかったそうです。

そして、ドラフト前にシクサーズがシモンズをリーグ中に売り回っているという噂が流れました。

シクサーズからみたシモンズのトレード

シモンズの価値が底値をつけている中で、モリーは強気にシモンズのトレードのリターンにオールスター級の選手を求めていたそうです。シクサーズにはプライムでMVP候補のエンビードがいるので、再建という選択肢はないのでしょう。シモンズをトレードしても優勝を狙えるチームづくりがマストです。

また、モリーが強気なのはロケッツ時代からだそうです。元グリズリーズのVPだったジョン・ホリンジャー曰く、モリーの最初から大きく出る交渉はロケッツ時代からで、それから徐々に現実的なディールに下げていくのが彼の常套手段だそうです。

他にもシクサーズはラプターズに、カイル・ラウリー、フレッド・ヴァンヴリート、OG・アヌノビーと4位指名権を要求、スパーズには若い選手と4つの1巡目指名権と3つの1巡目指名権のスワップを要求していたようです。ある人はこれを「王様の身代金」のような要求だと言っていました。

マックスプレーヤーなのに、肝心なプレーオフの試合でビビってしまった選手に対して大金を払うチームは今のところありません。更にネックになるのは、マックスプレーヤーなのに、これから改善する様子が見られない(スリーを撃つようになる/FT%をあげる)ことです。

そのロスでのミーティングまでは、シクサーズと他チームの間にシモンズの価値に相当大きな開きがあり、例えシモンズに興味があるチームも、モリーの要求が下がるのを待ちに入っていた状態だったのだろうと思います。

また、シクサーズにとって不運だったのは、同時期にブレイザースのデミアン・リラードのトレードの可能性があることです。今のところ、リラードはトレード要求をするつもりはないと言っていますが、ひょっとしたらシーズン中うまくいかずにリラードのトレードの動きが出てくるかもしれません。

そのため、他チームは、シモンズに今大切なアセットを使ってしまうよりも、リラードのためにアセットをキープするでしょう。

そして、なによりも優勝を狙うシクサーズは、まさにそのリラードを狙っているそうです。リラードならエンビードにシモンズよりもフィットします。7月にはリラードと仲が良いリラードの大学時代のコーチで今もリラードのトレーニングをしているフィル・ベックナーをコーチング・コンサルタントとして雇ったくらいです。ベックナーはすでにサマーリーグでシクサーズの選手たちと練習をしているようです。シクサーズがリラードとシモンズのトレードを狙っているのは間違いないでしょう。

このように、シクサーズは、(A)底値をうっているシモンズのトレード価値があがる、(B)リラードの様子見、でいったんシーズンがはじまるまでシモンズのトレードをホールドすることにしたと思われます。

シモンズとリッチ・ポール

今回のミーティングをひらいたのは、シクサーズが他チームと駆け引きしたりしてトレード交渉がなかなか進まないのを見たシモンズとリッチ・ポールが、シクサーズに早くトレードに動いてくれという圧をかけたものと思われます。

このままだと時間だけが過ぎて、あっと言う間にトレーニング・キャンプ(9/28)に入ってしまいます。そうなると、チームは様子見を決めて、12月や1月あたりまで動かなくなり、トレードが難しくなってしまいます。また、シモンズにとってもできるだけ早く新しいチームに行くことは大切なはずです。

シクサーズにしても、シモンズの去就が不明(というかいつトレードされるかの問題)でチームの雰囲気が悪くなってしまうかもしれません。このまま引っ張り続けると、お互いに気まずくなってしまいます。

それがシモンズが仕掛けたレバレッジです。あと4年も契約が残っているシモンズにとって、交渉のレバレッジはほぼありません。シクサーズにすれば、シモンズがFAになった時にタダで去られてしまうリスクは皆無です。そのため、シモンズはなんとかチームが避けたい状況をつくって、交渉に有利な状況に持ち込こみたかったのではないでしょうか。

ダリル・モリーのエフェクト

これまでに、このような睨み合いで、かつて折れなかったチームはないと思います。リッチ・ポールはキャブスとの交渉でキャンプに参加させずにいい金額を引き出した成功体験もあります。

これに対してシクサーズはどう対応するのか見ものです。チキンレースに入るのか?それともクラッチを怒らせないようにシモンズを安くトレードに出すのか?

この判断にはシクサーズのプレジデントのモリーの影響が大きいと思うので、モリーの傾向について見ていきたいと思います。

モリーは「数字の専門家」でデータやアナリティクスに強いけれど、ロッカールームをまとめるのはイマイチな印象があります。チームのカルチャーづくりはトップからはじまるので、ヘッドコーチやスター選手と同じようにプレジデントの影響も見逃せません。

ロケッツ時代はロッカールームの揉め事が多く、ジェームズ・ハーデンとコーチのケヴィン・マケール、ハーデンとドワイト・ハワード、ハーデンとクリス・ポールなどの揉め事がありました。これはすべてハーデンのせいではなく、GMだったモリーがケミストリーをあまく見ていた責任もあります。エンビードが口論していたドラモンドとサインしたのも、モリーの傾向がよく現れていると思います。

このように、モリーはチーム・ケミストリーの事はあまり意識せずに、スター選手と数字があれば勝てるというような考えをしがちなので、今回もシモンズや他のチームメイトたちの気まずさなどは考慮せずに、チキンレースに突っ込む可能性もあり得ます。

モリーの仕事はシクサーズを優勝させることです。二束三文でシモンズをトレードしたくはないはずです。はたしてリッチ・ポールとシモンズの戦略はモリーに通用するのでしょうか?

PR合戦

この記事のでどころが、クラッチと仲がいいWojではなくて、地元紙だったということも注目すべきポイントでしょう。シモンズのトレードで思うような成果をあげられなかった時のために、シクサーズが先まわりしてリークして、うまく行かない責任をクラッチ側に押し付けようとしているような感じもします。

これからクラッチは、シモンズ側のストーリーを出して反撃してくるかもしれません。トレード以外にも、このようなPR合戦も目が離せなくなってきました。

ただ、この記事によって更にシクサーズがシモンズをトレードしにくくなってしまいました。なんとしてもキャンプ前にシモンズをトレードしなくてならないシクサーズに、交渉相手が足元を見てくるからです。でもシモンズにとっては、いなくなるチームのことは考えず、新しいチームに少しでも多くの選手やアセットが残って欲しいでしょうから、この記事は結果シモンズ側に有利に働いているように感じます。

シクサーズのトレードの選択肢

では実際に今からシモンズをトレードするとして、シクサーズにはどのような選択肢があるのでしょうか。

シモンズに興味を持っているチームには、ラプターズ、ウルブスがあると言われています。ただ、シクサーズが得られるリターン次第では3つ目のチームを探す必要があるかもしれません。

上でも見たように、チームはシモンズではなくリラードの様子を見守っています。そのため、シクサーズが今シモンズをトレードできる相手は、リラードが行きたがらない中堅から弱小チームに絞られそうです。もしそうであれば、キングス、ホーネッツ(ヘイワード)、ペリカンズ(イングラム)、ウルブス(ラッセル)あたりはいかがでしょうか?個人的には、ホーネッツとのヘイワードのトレードで、ラメロ、シモンズ、ブリッジスが揃った破壊力抜群のトランジション・オフェンスは面白そうです。

話がそれましたが、シクサーズにとって、少しでも良い条件で(A)優勝に貢献でき、(B) エンビードとのフィットが良い選手か、又は(C)優勝に貢献できなくても、トレードデットラインまでに優勝に貢献できる選手とトレードできる選手の獲得になると思います。

また、ライバルがいない間に安くシモンズを買い叩こうとする優勝候補チームも出てくるかもしれません。問題はシモンズがプレーオフでひるまないことなのですが、ひょっとしたらチームが変わってメンタルブロックがなくなれば、スリーも撃って、フリースローが入るようになるかもしれません。

シモンズのシュートに関して言えば、引退を発表したESPNのジャッキー・マクミランが、シモンズはスリーを34%決められる実力を持っていると確信していると言っていました。彼女は去年シモンズの記事を書くために、シモンズのシュート練習をよく見ていたようですが、シモンズは練習ではシュートを撃っているけど、試合になると撃たなくなるようです。

それについてシモンズは、「スリーは撃てるようになる。それにカンファタブルになるかどうかが問題だ。もっとレップしなければいけない。エルボーからはフックショットを撃てる。なぜならそれを数多くやって来ているからだ。入ると言う自信がある。もう自然にできるようになってうる。でもスリーは違う。今30%撃てるかもしれないが、私は40%決めれる選手になりたい」と答えています。

シモンズのトレード希望先はカリフォルニアの3チームだとの噂も出ており、クリッパーズ、ウォリアーズ、キングスがトレード希望先だと言われています。レイカーズが入っていないのは、ウェストブルックやADを出さない限り、シモンズのトレードでサラリーマッチができないためと思われます。

いずれにしても、シモンズにとって環境を変えるのは正しい選択かもしれません。

ジョエル・エンビード

シモンズの件に関して、ジョエル・エンビードの発言がおもしろかったのでさいごに共有させてください。

エンビードはシモンズとの関係に入っていた亀裂が悪化したというレポートに対して自分の思いをツィートしました。

私の名前をつかって他人のアジェンダをプッシュするのはやめてくれ。私はドラマが好きだし憎んでもいる。ベンとプレーするのは好きだ。スタッツは嘘をつかない。彼はアメイジングな選手で、私たち全員が使命を果たせなかったんだ。個人的にはそれは私の責任でもある。みんなが戻ってくるの希望している。なぜなら、私たちは勝てるとわかっている。

私の経験から、みんなメディアがフォロワーのためにどれだけウソをつくのかわかっていない。彼らを信じるなんて恥を知れ。

2年前のことは忘れていない。私はブーイングされて、フィリーのみんなは私をトレードに出せばいいと言っていた。私は彼らにシーッとすらやった。本物だけがそう言わなかった。しかし、私はオフシーズンにがんばって練習をした。なぜなら私は自分のポテンシャルを出し切れていないと知っていたからだ。フィリーのファンたちも良くならなければいけない。

ハッキリさせよう。私は批判が好きだ。私は何か出来ないと言われるのが大好きだ。それで私はみんなにまちがっていることを証明するためによりハードに練習できるからだ。でも、みんながみんな、それができる訳ではない。

さいしょはシモンズとプレーすることが好きだと言っておいて、途中からシモンズのディスりに変わってませんか?相変わらず面白い男です。


参考サイト:Ben Simmons trade price is currently too steep for the Kings / Ben Simmons tells team brass he no longer wants to be a sixer, and he does not intend to report to training camp / Ben Simmons hears the talk, but his process is not a public experiment
サムネイル画像:Photo by YONG KIM/The Philadelphia Inquirer