12/15から夏に契約したフリーエージェントだった選手たちがトレードできるようになったため、これから2/10のトレードデットラインまでトレード市場が賑わってきます。さっそく再建やリツールを狙うチームが出てきました。今回はトレードがあるのではないかと大きく話題になっているチームのひとつであるブレイザースを紹介していきたいと思います。
ポートランド・トレイルブレイザースはデミアン・リラードをトレードはしないと見られているため、再建組というよりもリツール組に入ります。ESPNのブライアン・ウィンドーストによると、ブレイザースはデイム以外の選手はトレード可能にしているそうです。デイムのまわりを変えてプレーオフを狙うというスタンスでしょうか。
また、タックスラインを若干超えているため、トレードしてタックスを避けるのは間違いありません。
それではブレイザースの詳細を見ていきましょう。
今シーズンのブレイザース
ブレイザースはビラップス新ヘッドコーチの元、課題だった守備を改善して優勝を狙っていたました。オフシーズンでもリラードはトレードを口に出してチームを改善するように球団にプレッシャーをかけていました。1位指名権を出してまで、スモール5で守備に定評があるラリー・ナンスを獲得したのは優勝を意識しての動きだと思います。
しかし、シーズンが開幕して蓋を開けてみればウェスト1位(12/17日時点)でプレーイン狙いまでさがってしまいました。スモールマーケットの球団でタックスチームでもあるブレイザースにとって、これは最悪の展開です。
オフェンスは109.4でリーグ16位で、ディフェンスは112.3でリーグ27位。ネットレイティングは-2.8でリーグ24位です。勝敗では13勝18敗とウェスト10位。プレーイン圏内です。(12/21時点)
ビラップスはコヴィントンを下げてナンスをスタートしたりローテーションを変えていますが、あまりうまく機能していないように思います。肺のケガで欠場しているCJ・マコラムが復帰したとしても、このままでは守備は劇的に改善されそうにないですし、何よりも優勝よりもプレーオフ進出をかけて戦うのは変わらないでしょう。そのため、チームとしてはリツールしてプレーオフを目指すか、いっそのこと再建するか、どちらかを選ばなければなりません。
いちばん手取り早いのはヘッドコーチを変えて様子を見ることですが、すでにヘッドコーチは夏にビラップスと5年契約をして変えてしまっています。
他に変えることができるのは、選手と決定権を持つGMですが、そのGMのニール・オルシェイも解雇しています。課題だった守備が改善できなかった責任を前のヘッドコーチのテリー・ストッツになすりつけていましたが、自分がつくったチームと自分で連れてきたヘッドコーチをもってしても守備がリーグ最低レベルのままです。彼の解雇はその責任を取らせたからでしょう。
しかし、ただの解雇だけでは、球団は約10億円以上とも言われているまだ残っているオルシェイの3年分の契約金を払い続けなければいけません。ですが、職場での行動倫理規範違反での解雇であれば、球団は彼に契約金を払わなくても済むようです。解雇したいが契約金は払いたくない球団と、長年続いていて誰もが知っていたはずのパワハラや横暴な振る舞いの情報がリークしたタイミングを考えれば、すべてはオーナーのジョディー・アレンが描いた絵なのではないでしょうか。
空いたGMのポジションにはアシスタントGMのジョー・クローニンがインテリムGMとして昇進しましたが、彼がどれだけの決定権を持っているかは不明です。リラードをトレードして再建したり、リラードと契約延長をするような球団の未来を大きく左右する重要な決定は、新GMがするべきなので、ブレイザースは今シーズンはこのまま大きな動きはせずにリツールすると見られています。
では、そのリツールをどうすればいいのかまとめたいと思います。
ロスター問題
オフェンスは昨シーズン同様問題なさそうでしたが、リラードの腹部のケガやマコネルのケガなどの影響でさがってきました。リラードも東京オリンピックから調子が悪く、腹部の痛みをおしてプレーしていたことがわかりっており、CJ・マコネルもいまいち調子に乗れないまま肺のケガで離脱しています。
守備もストッツのドロップカバレッジだけではなく、ナーキッチをあげてアグレッシブなPnRの守備スタイルも試していますが、横の動きがうまくないナーキッチでは機能していません。ナーキッチにはスリーがある訳でもないので、ビラップスがやりたいことはナークでは出来ないのではないでしょうか。または、ナーキッチを中心に守備を組み立てるなら、やはりウィングやヘルプディフェンスが良い選手が必要だと思われます。
しかし、ブレイザースはディフェンスが良いとは言えないサイズのない6’3”のガードの3人をスターターとして使っているので、ウィングの守備力が相当弱い布陣です。ディフェンスがリーグトップのチームのウォリアーズやサンズやクリッパーズを見てもウィングにディフェンスが良い選手がいます。
そのため、マコラムをトレードしてウィングを得て、ノーマン・パウェルを元のSGのポジションに戻す選択肢もありそうです。いずれにしても、PnRを守備できるビックや守備の良い3&Dタイプのウィング選手を得られなければ、ロスターの構造的問題は解決しないでしょう。
また、2020年から、リラードはディフェンス力のある選手とプレーしたがっていると言われています。そのため、ブレイザースはベン・シモンズ、セルティクスのジェイレン・ブラウン、マジックだったアーロン・ゴードンを狙っていたようです。マジックとのゴードンのトレード交渉はうまくいかずに、コヴィントンのトレードに踏み切ったそうです。
タックス回避
ブレイザースのキャップはタックスから約3億円超えています。ワントレードでタックスを躱せるポジションにいるので、優勝を狙えない今シーズンはタックス回避トレードは確実にあるでしょう。
それに、今シーズンはウォリアーズ、ネッツ、レイカーズと盛大にタックスを払うチームが多いので、タックスの総額が史上最高の約544億円になると予想され、タックス以外のチームはそれぞれ約12億円ほど得られると言われています。優勝を狙えないのであれば、尚更タックスを避けてこの約12億円を取りに行くのではないでしょうか。
そうなると、数字的にはトレードしやすいサラリー(約12億円)のロバート・コヴィントンとナーキッチがトレード候補になります。更に、ふたりとも契約最後の年で夏にはFAになってしまいます。ブレイザースとしては、今のうちに何かしらのアセットに変えておきたいところでしょう。
悩ましいのは、ブレイザースはコヴィントンをとるために、2つの1巡目指名権をトレードに出しています。今のコヴィントンではその分のアセットを取り返すのは難しく赤字トレードになるでしょう。
大きくロスターを変えるなら、サラリーが高いマコラムのトレードです。しかし、彼の残りの契約は3年で約100億円+パフォーマンスも落ちているので、彼のトレード市場はあるのかもわからないと言われています。
需要が大きそうなのはナンスになります。スリーが昨シーズンは36%でしたが、今シーズン27%代なのは気になりますが、守備で彼を使えそうなチームは多そうです。リターンが良ければトレードもあり得そうです。
こう見ると、ブレイザースのリツールはガードの1人(実質マコラムかパウェル)とコヴィントン、ナンス、ナーキッチのいずれか、またはほぼ全てをトレードして、3&Dウィングと横に動けるセンター、それにドラフトアセットを得て行くことがベストだと思います。
むずかしいのは、3&DウィングとPnRをあがって守れたり、ボールハンドラーにスウィッチできるビックの需要はすごく高く(みんなが欲しがる選手)、そもそも市場にまわってこない可能性もあります。それでも最低でも契約が切れてしまうナーキッチかコヴィントンをトレードしてタックスは避けたいところです。その場合、足元を見られるため、見返りはあまり期待しない方がいいかもしれません。

デミアン・リラード
リラードは夏にトレード要求も考えると言っていたこともあり、今回もリラードを巡る憶測がいろいろ出てきています。リラードがトレード要求をすれば、リツールでは済まずに再建に入ります。しかし、リラードは、今はトレードは望んでいないし、チームと一緒にどうするべきか考えて行きたいと言っています。
そんなリラードは夏になれば2年で約106.6億円の契約延長が可能です。それが終わるころには37歳になっているので、球団的にそれがどういう意味を持つのか今から考えなければいけません。契約延長しなければ、夏にトレード要求があるかもしれませんし、チームがリラードを高く売れるうちに手放そうとするかもしれません。
だとしたら、今シーズンは正規GMもいないので、この夏に球団の方向性を決めても良さそうです。

このリラードの契約延長のニュースで、ESPNのWojが書いた記事が話題になりました。
この記事の中で、リラードはトレード要求や契約延長で球団の未来を脅かすとか、リラードのグループは密かにベテランチームメイトを売って彼のまわりで再建しなおすことを画策していたとか、次のGMはリラードに屈するべきではないなどが書かれていて、まるでリラードが球団にとって害がある選手かのように書かれていました。
オルシェイのことを解雇されたGMとは言わずに「去ったGM」と表現していたり、リラードを悪者にしてオルシェイは悪くないようなニュアンスだったので、これはWojが解雇されたニール・オルシェイとともに書いたと言われていました。実際、客観的なレポートではなく「球団は今後どうするべきか」のエッセイ風でナレティブを操作するような内容になっています。
Wojは情報に魂を売っているのか、ソースのためにこういうようなPR的な記事を書くことがあります。PRツィートもしています。ソース(主にフロントとエージェント)とWin-Winの関係を築いて行きたいのはわかりますが、ジャーナリスト的にはどうかと思います。下のツィートは、オルシェイが解雇された時のWojとThe Athleticのシャムズのツィート表現の違いです。Wojは友人のオルシェイが解雇されたとは言っていません。忖度しているのでしょうか。
私は、Wojは速報以外はあまり読み込まない派です。最近だと、このブレイザースとリッチ・ポール(ベン・シモンズ)関連の情報はWojよりも他のソースを探した方がいいと感じています。ブレイザースであれば、リラードと個人的に太いパイプを持つヤフーのクリス・ヘインズか、ずっとビートをして誰よりもブレイザースを知っていると言われているThe Athleticのジェイソン・クウィックの方が客観的で正しい情報を持っていると思います。ブレイザーズに動きがあったら、まずはこの2人の記事を読むことをオススメします。
下は「デイムを中傷する記事を書いた後のWojとオルシェイ」というツィートに、「それには驚いたとは言えない」と反応したリラードのリツィートです。 Wojをトランプに、ペンスをオルシェイに見た立て裏でいろいろ動いたことを示唆しています。
話がそれましたが、リラードは現状ブライザースにコミットしています。それにGMがインテリムということもあり、オールNBA級の選手のトレードのような大きな動きはしないでしょう。ですが、Wojの言うように、契約延長をどうするかの問題も控えているので、まだまだリラードとブレイザースの話題は続いていきそうです。
インテリムGMのクローニンとビラップス
チームはコートの中と外で不安定ですが、フロントとコーチ陣はしっかりといい関係を築いているようです。ジェイソン・クウィックがインテリムGMのクローニンとビラップスのブレイザースでの運命的な再会を書いていたので紹介します。

1994年、ビラップスとクローニンは高校時代にコロラド州のバスケットボール・トーナメントの決勝で戦った敵同士でした。センターでバッドボーイズ時代のピストンズのようなプレーをしていたチームのセンターだったクローニンは、その試合で22点と15リバウンドでしたが、ファウルドアウトしてしまい、31得点と9アシストしたビラップスのチームに破れてしまったそうです。

その試合で、ビラップスはコローニンにこのコービーにやったプレーをしてダンクを決めたそうです。ビラップスがキャリアでこのプレーができたのはコローニンとコービーへの2回だけだそうです。
そして、今インテリムとはいえGMになったクローニンとビラップスの立場が逆転しました。クローニン:「この時を長い間待っていた」と冗談を言っています。
ビラップスは選手時代にブレイザースとの試合でブレイザースのアリーナに行くたびに、ジョー・クローニンが自分の知っているクローニンなのか確かめに行っていましたが、スカウトだったクローニンとはずっと会えずじまいだったそうです。
やっとふたりが再会したのは、この夏にビラップスがヘッドコーチの最終候補のZoomインタビューでのことでした。Zoomの画面の小さな顔を見て、クローニンは自分が知っているクローニンだとわかったそうです。実際にふたりが会ったのは、ビラップスがヘッドコーチに就任してポートランドへ来た時だったそうです。その時、彼らはクローニンの妹や高校時代のチームメイトのことを聞いて、思い出話に花を咲かせたとのこと。
このように、ふたりの間にはすぐに信頼が生まれたそうです。
デミアン・リラード、ヘッドコーチのチャンシー・ビラップス、クローニンはミーティングをして次はどうするのか話し合っているとのこと。特にリラードは定期的にビラップスのオフィスへ行って、自分も含めてどう変わっていけばいいのか話し合っているそうです。
クローニンも、今は大学などのドラフト候補選手のスカウトやトレード、そしてコロナ感染でプロトコルに入るであろう選手の代理選手発掘でかなり忙しくしているはずです。
奇遇にも27年ぶりに再会したビラップスとクローニンは、これからひとつのNBA球団の未来を変えることになりそうです。
参考サイト:The Portland Trail Blazers’ GM search will shape the future of the franchise — and Damian Lillard/NBA Insiders Expect More Changes After Portland Exec’s Dismissal/‘Yo, where is Joe Cronin at?’ How Chauncey Billups’ and the Blazers GM’s lives have come full circle
サムネイル画像:Photo by Sam Forencich/Getty Images