レイカーズの球団内部について

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トレードで動かずに何もしなかったレイカーズに対し、レイカーズのスーパースターでリーグの顔でもあるレブロン・ジェームズがオールスター・ウィークエンドで遠回しにレイカーズを批判しましたため、どのメディアも大きく取り上げました。

その時のレブロンの発言は以下になります:

▪️クリーブランドへ帰ってくることについて聞かれた時、「それに関しては扉はまだ閉ざされていない」→キャブスへのリップサービスというよりも、レイカーズへのプレッシャーだと言われています。レブロンは2023-24シーズンにFAになります。

▪️サンダーのGMのサム・プレスティーについて「彼はMVPだ」→ペリンカを遠回しに批判していると言われています。中にはプレスティーをレイカーズに引き抜こうとしていると言っている人まで出てきました。また、サンダーのルーキーのPGのジョッシュ・ギディーについては「彼は美しいバスケットボールをしている」と言っています。ウェストブルックへのメッセージだと思うのは考えすぎでしょうか?

▪️「私の現役最後の年は息子とプレーする。ブロニーがいるのがどこだろうと、私はそこへ行く。1年間息子とプレーするためなら何でもする。その時点では金が問題ではない」→レイカーズよりも息子とプレーする方が大切だ的なことを言っています。それともレイカーズに息子を指名するように今からプレッシャーをかけているのでしょうか。ブロニーは2024年のドラフトに参加でき、現在ESPNのランキングでは43位で、レイカーズは2巡目指名権を持っています。レブロンはその時39歳です。

レブロンはスマートで、彼のメディアでの発言はすべて計算されているとまで言われる程です。今回も、ただ単に不満を言っているだけではなく、他に意図しているものがあるかもしれません。この夏の2年約93億円の契約延長への布石かもしれませんし、反対に、レブロンの要望に消極的なら契約延長はせずにフリーエージェントになる含みを持たせて、キャブスのように金を使って欲しいというメッセージなのかもしれません。

いずれにせよ、レブロンのことです。このように遠回しに何かを匂わせることによって、契約延長やその後のローテーション構築に影響力を残そうとしていると思われます。

ESPNのウィンドーストも、レブロンは「ロスターをつくった主な役割を果たしたが、だからと言って離婚の準備ができていな訳ではない」と言っていました。選手たちもトレード自体はあると思っていたようですし、チームが少しでも良くなるようなトレードがないことに対して不満が出るのも理解できます。特にレブロンに残された現役の時間は長くありません。彼にとっては余計に期待していたかもしれません。

しかし、これらのレブロンの発言がメディアにも大きく取り上げられたため、レブロンのエージェントのリッチ・ポールが火消しにかかりました。ポールは早速レイカーズのオーナーのジニー・バスとプレジデントでGMのロブ・ペリンカとミーティングを行い、ESPNのスティーヴン・A・スミスにもはウソだと言ってくれと頼んでいます。レイカーズとのミーティングでは「皆笑いあって、近況について話をしていた」とか「レブロンはペリンカをフロントから追い出そうとしている訳ではない」と強調しました。

しかも、レイカーズの問題はレブロンの発言だけではありません。スリーがオールスターから11%(3/16時点)とチームになかなかフィットしないウェストブルックのレポートも多く出てきています。彼をベンチに入れるかどうか球団内で意見が別れていたり、ウェストブルックとヘッドコーチのフランク・ヴォーゲルとの間に緊張感があるとか、コーチたちがフロントにウェストブルックのトレードを働きかけていた等言われています。

また、前回の記事でも取り上げましたが、フロントがキャップ運営を事故りました。シーズン前はタックスを気にしたので、トレードデットラインで約5~9億円タックスを節税できる(ジョーダンとベイズモアをサラリーダンプ)チャンスがあったのにも関わらず、何も動かずに結局タックスを払うことになりました。

前置きが長くなってしまいましたが、本題に入りましょう。このようにレイカーズはチームもフロントもあまりうまく行っていないように見受けられますが、それをマネジメントしているレイカーズの球団トップはどのような状態なのでしょうか。The Athleticのサム・エイミックとビル・オラムがレポートしていたので簡単に紹介していきます。

VP兼GMのロブ・ペリンカ

まずは、レイカーズのフロントトップのペリンカについてです。ペリンカは、レイカーズがトレード・デットラインでトレードしなかったとこについて、「レブロンとADとは足並みを揃えていた」と言っていましたが、レブロンの関係者はそれを否定し、ペリンカとは話をしていなかったという事実がわかりました。ウソをさらっと言うクセがあったペリンカですが、今回もそのクセが出たのでしょうか。レポーターの中には、ペリンカはレブロンとADにトレードがなかったことを伝えたことで「足並みを揃えた」と考えているかもしれないと言っている人たちもいました。

また、他チームからもトレードコールをしてこなかったと苦言を言われていて、まだエージェント時代からの評判も良くなっていはいない印象です。

(ペリンカとジニー Photo by Allen Berezovsky/Getty Images)

それでもジニーのペリンカへの信頼は厚く、まだ彼の事を完全に支持していて信用しているそうです。ペリンカがコービーのエージェントだったことも大きいでしょう。エイミックとオラムによると、コービーは以前からジニーに兄弟の解雇についてやレブロンのFAに向けていろいろとアドバイスしていたそうで、彼女はコービーにフロントオフィスのポジションをオファーするつもりだったそうです。コービーがいる時からペリンカは実質的に球団内でコービーの声も担っているとのことで、コービーのことを考えると、ジニーはペリンカを簡単には切ったりはしないでしょう。

ランビス家

カート・ランビスは元レイカーで、フィル・ジャクソンの友人でもあり弟子でもあるため、今でもすごく影響力があるそうです。今いち彼が何をしているのか見えてきませんが、レイカーズでの役職は「シニア・バスケットボール・アドバイザー」だそうです。フロントではペリンカの右腕として動いているとのこと。

カートはウルブズとニックスのヘッドコーチで勝率が28.4%でしたが、レイカーズではそれも関係なく、コーチのミーティングにも出席して意見を言っているようです。チームが再建中だったりとあまり意味をなさない数字かもしれませんが、ちなみにフランク・ヴォーゲルの勝率は58%、アシスタントのフィッツデールは34%です。

フロントは選手の起用法だったり戦術に関してはヘッドコーチに一任するので、「球団内の多くからオールスター9回選出のウェストブルックをスターティング・ラインアップから外すようにプッシュする声が大きくなってきている」ということにヴォーゲルが抵抗している等のレポートがあると、フロント(カートたち)がコーチングに口を出しすぎているのかなとも思ってしまいます。

また、レイカーズにはカートの妻でジニーの親友のリンダもいます。役職は「エグゼクティブ・ディレクター・オブ・スペシャル・プロジェクト」で、何をやっている人なのかあまり良くわかりません。

リンダはジニーと公私で仲が良く、ジニーもかなりリンダに頼っているようです。数年前、ジニーはニックスのオーナーのジェームズ・ドーラン(実際には彼の部下)と一緒に、スティーヴ・バルマーのクリッパーズの新アリーナ建設を止めようとしていました。その際のドーランらとのやりとりのメールにもCCでリンダが入っていた程です。リンダは私たちの想像以上にレイカーズの意思決定に加わっていると思われます。

しかし、エイミックとオラム曰く、「彼女のレイカーズでのあいまいな役職と役割は球団内外で混乱と批判の的になっている」そうです。

(ジニーとリンダ Photo by Wally Skalij/Los Angeles Times)

リンダ・ランビスとレイカーズの関係はかなり古く、リンダは故ジェリー・バスがレイカーズを買収した時につきあっていた愛人のデビーの妹で、レイカーズ買収パーティーにも出席していたそうです。その後、ジェリーにマーケティング部門で雇われて、テニスリーグのLAストリングスをジニーと一緒に運営させました。ドクター・バスの目には、ジニーとリンダはビジネスと個性を補えるペアだと映っていたようです。

このように、リンダとジニーと一緒にレイカーズの11回の優勝を見てきており、もはや姉妹のような関係のように見えます。そのためリンダがペリンカやレブロンよりも早くレイカーズを去るとは思えません。ドクター・バスはいまでもジニーに影響を与えているようです。

ジニー・バス

これまで見てきたように、ジニーは能力が優勝な人よりも自分が信用できる人をまわりに置いています。特に「信用」が大切なのは、彼女の性格を良く表しているのではないでしょうか。レブロンについても、彼女にとってレブロンの「幸せ」と「信用」が大切だそうです。

また、信用という意味では、レイカーズのプレジデントを突然辞任したマジック・ジョンソンもジニーのサークルに入ってきます。ジニーは最近The Athleticのビル・オラムに、「私にとって、彼(マジック)はまだうちで働いている。彼のサポート、知恵、洞察に関しては、私は必要だと思えば自由に聞ける」とまだマジックに頼っていると明かしました。

レイカーズがシーズン序盤で調子が悪い時も、ジニーはマジックに意見を求めていたそうです。その時マジックに「私は心配するべきか?あなたには何が見える?」と訊ねると、マジックはケガで全員揃うチャンスがまだないので様子を見た方がいいと伝えていたそうです。ジニー:「1試合ごとに反応するのではなく、俯瞰を見る彼の洞察力に感謝している」

(マジックとジニー Photo by Andrew D. Bernstein/Getty Images)

また、元婚約者のフィル・ジャクソンについても同じで、ジニーは今でもジャクソンに意見を求めたりしているそうです。彼は冬は寒さが厳しいモンタナの家から暖かいロスにいるようで、シーズン通してジニーと良く連絡を取り合っているとのこと。ジャクソンは特にウェストブルックを巡る複雑で居心地の悪いチームの力学に興味を惹かれているそうです。

フィル・ジャクソンは上記の通り、カート・ランビスとも仲が良く、二人は2019年にレイカーズがフランク・ヴォーゲルを雇った時に重要な役割を果たしたそうです。ヴォーゲルはジャクソンがヘッドコーチをしていた時(2005-06)に、アドバンス・スカウトでした。

ジャクソンからはカートやマジックよりも経験があり信用できるアドバイスを得られるのではないでしょうか。

(カート・ランビス、ジニー、フィル・ジャクソン Photo by David Livingston/Getty Images)

そうなると、気になるのはレブロンとフィル・ジャクソンの確執です。

フィル・ジャクソンはニックスのプレジデント時代にレブロンの取り巻きを「posse」という差別用語を使って問題になったことがありました。この言葉を使ったことが原因でロッカールームを失い、キャブスのヘッドコーチを辞任することになったジョン・ビーレインの一件もまだ記憶に新しいかと思います。それくらい威力のある差別用語です。

レブロンはその時、ジャクソンへのリスペクトを失ったと言っていました。

また、その頃ジャクソンはレブロンの親友のカーメロ・アンソニーと揉めており、レブロンはそれに関してハッキリと「私はカーメロの扱い方についてのファンではないし、フィル・ジャクソンのファンでもない」とも言っています。

ジャクソンはニックス時代にトライアングルにフィットしようとしないメロをトレードしようとしていました(ノー・トレード条項があったのでトレードできなかった)。今回もチームにフィットしていないウェストブルックをベンチに下げた方がいいと言っているのはジャクソンかもしれません。

レイカーズの今後

このようにざっと登場人物を見ただけでも「ゲーム・オブ・スローンズ」のような壮大なドラマがつくれそうな世界観です。バス家(兄弟姉妹の闘争)、ランビス家(陰謀家)、マジック(レジェンド)、ジャクソン(参謀)、ペリンカ(リトル・フィンガー)、コービー(ジョン・スノウのような運命の鍵を握る戦士)、レブロンとクラッチ(新興勢力)、ウェストブルック(傭兵)、シャック(マウンテン)、フランク・ヴォーゲル(後ろから刺される将軍)…そして隣の領土にはカワイ、ポール・ジョージ、タイ・ルーを率いる世界一裕福なスティーヴン・バルマー(タイレル家的な)がいます。あ、ウォルトンもいましたね… ちょっと妄想がとまらなくなってきました (笑)ドラマの見過ぎかもしれません。

話を戻しましょう。人間関係重視のレイカーズの球団運営はうまく言っている間はいいのですが、仲が良い人だけ集めているように見えるので(マジックもプレジデントは未経験、ペリンカもGMは未経験)、負けると余計に疑問視されてきます。もう少しバランス良く、要所で経験豊かで実績があるプロを雇ってそれを全面に出しても良さそうです。

しかし、逆にこれが良いところで、ジニーは信用した人をずっと大事にして行くとも言えます。レイカーズは、36歳でアキレス腱を損傷したコービーにも2年で約48.5億円の契約延長を与えました。この頃のキャップはなんと約58.6億円とかなので、この金額がいかに大きいかわかると思います。そうでなければ、コービーはトレードされていかもしれませんし、そうなればコービーの偉大さは今ほど大きなものにならなかったかもしれません。ジニーはこの先もランビスやペリンカを大事にして行くのではないでしょうか。

こうして見ていくと、レブロンのオールスターでの遠回しな球団の批判的態度はジニーの価値観や性格に合わないものだったと思います。もしレブロンがレイカーズに残りたいのであれば、今後はキャブス時代のような駆け引きや発言はできないのではないでしょうか。ただ、今後ジニーの信用を得られるのであれば、彼女はどこまでもレブロンをサポートし続けると思います。レブロンの希望通り、息子のブロニーの指名だってできるかもしれません。

ジニーはまだレブロンとは距離がありそうですが、この夏にレブロンに2年で約93億円の契約延長をオファーするのでしょうか?

The Athleticのエイミックとオラムによると、すでにレブロンとは来季のチーム構成をどうするか話しあっているようなので、契約延長はあり得そうです。そうなれば、これからレイカーズとレブロンの関係はより深まって行くと思います。

また、レイカーズは他にもどうするか決めなければいけないことはたくさんあります。もしウェストブルックが約47億円のプレーヤー・オプションを行使した場合どうするのでしょうか?機能していないウェストブルックを1巡目指名権をつけてトレードするのか(レイカーズはトレードで2027年と2029年の1巡目指名権が使えるようになります)?そうした場合、リターンは何なのか?ヘッドコーチは変えるのでしょうか?

レイカーズのフロントがどんな判断をするのか楽しみです。


参考サイト:LeBron, the Lakers and their road back to ‘winning time’: Why Magic Johnson and Phil Jackson still matter, plus what’s next/Sources: Los Angeles Lakers’ Frank Vogel feeling push to demote Russell Westbrook from starting lineup/LeBron James used All-Star weekend to put the Los Angeles Lakers on notice
サムネイル画像:Photo by Wally Skalij/Los Angeles Times