マネーマシーン

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ウォリアーズが2シーズンぶりにNBAファイナルズに進出しました。サラリー+タックスで$340M払っている超高級チームなので、ファイナルズ進出は期待されていたラインなのではないでしょうか。むしろここまで来ないと失敗と言われるような数字です。

その内訳は、サラリーが$175.8MとNBA最高。カリー、クレイ、ウィギンス、ドレイモンドで$139.3Mとキャップを超えており、タックスもほとんどのチームのペイロールより高い$170.2Mです。

チームの財政的にはそれに球団運営のための費用も上乗せされるので、実際にウォリアーズが使っている金額は$340M以上になります。オーナーのジョー・レイコブもNBAオーナーの資産ランキングのトップ10に入っていないにも関わらず、ウォリアーズは本当にこのままチームを維持できるのでしょうか?一体誰がそその巨額費用を払っていくのでしょうか?

それはチェイス・センターです。

今回は、この超高級チームを可能にしているウォリアーズのマネーマシーンを紹介します。

チェイス・センター

チェイス・センターは2019年にオープンしたプライベート・アリーナで、球団が自ら資金を集めて建設しました。建設費は$1.3~1.4Bと言われており、アリーナだけではなくオフィスビルやテナント向けの商業不動産施設も隣接しています。このプライベート・アリーナの新しいところは、不動産ビジネスを可能にしているところです。アリーナもバスケをしていない時に貸し出せるので、チェイス・センターはバスケ+イベント+不動産ビジネスを可能にしています。

この「バスケの試合がある41日以外の空きにイベントを組める」という特権は、球団がアリーナを所有していればこそ可能です。ウォリアーズのように、オーナーが市からのファイナンスを受けずにアリーナを所有しているケースは少なく、オーナーがアリーナまで所有している球団はニックス、ブルズ、ピストンズ、ヒート、ラプターズしかありません。最近ではこのウォリアーズモデルを追従するクリッパーズがロスのイングルウッドに自分のアリーナ+商業施設を建設中です。

ウォリアーズのオーナーのジョー・レイコブ:「個人的に、私はチェイス・センターを誇りに思う。これを建てるのがどれだけ大変だったかは伝えきれない。7年かかった。この街でそれを実現することは他の街でやるよりも大変だったかもしれない。誇張されて言われているが、すべてプライベートの資金でつくった。心からそれを誇りを思う。警察や消防士やその他の社会サービスからお金を奪わなかった(=市の税金を使っていない)。我々みんながそれを誇りに思っている」

(ウォリアーズのオーナーのジョー・レイコブとピーター・グーバー)

チェイスで驚きなのはオープンする前からすでに売り上げていた金額です。それは$2Bにも及び、Uberの20年リース契約や、Chaseの20年命名権などのスポンサー契約が含まれた全体の数字になります。年間の売上は、コロナ規制が今年緩くなったためアリーナがフル稼働できたこともあり、$700Mもあるそうです。ちなみにこれがどれだけの数字かと言うと、ビックマーケットのレイカーズやニックスよりも250~300M多いとのこと。チケット収入もリーグトップで、 1試合で4.17億とも言われ、ホームでの1シーズン41試合では$170.9Mにもなります。

このプレーオフでもマネーマシーンはフル稼働で、ファーストラウンドとセカンドラウンドの1試合でのチケット売上は$7M。ホームでの試合は6試合あったので$42M。

カンファレンス・ファイナルズは1試合$10Mにあがり、3試合のホームで$30Mの売上。

ファイナルズになると1試合$16Mになるそうです。最低でも3試合は約束されているので、プレーオフ全体の売上は$136M以上になりそうです。(しかしNBAの取り分を払うと33%しか残らないので、手元に残るのはだいたい$45Mくらいのようですが…)

また、ウォリアーズはNBAと売上をシェアしなくてもいいコートサイド・ラウンジの収益にも力を入れているようで、32部屋のラウンジをつくっています。ひとつのラウンジの価格は年間$2Mで10~15年契約で、グーグルやマイクロソフトなどのシリコンバレー企業と契約しているそうです。また、ウォリアーズとセールスフォースとの関係は深く、ウォリアーズがチェイス・センターをつくる時、セールスフォースからその建設用地を購入したり、セールスフォースはチェイス・センター最大規模のラウンジを15年の$50M契約で借りているそうです。

年間のコートサイド・ラウンジの売上は$65Mになり、あと少しでマックス選手(7~9年)と2人契約できてしまう金額なのでバカにできません。他にも小さいスイートもあるそうで、それらはイベントにつき4K~40Kかかるそうです。

また、ウォリアーズはSuiteXchangeというブロックチェーンを使ったラグジュエリースイートのチケット交換サービスを立ち上げています。

他にはジャージーパッチ契約があり、スポンサーの楽天はウォリアーズに年間$20M支払っているそうです(契約は2023年で切れる)。再契約は複数年$40M/年になると言われています。

NFTも立ち上げ、3000ものコレクションをリリース。ひとつ499ドルで販売し、これまでに$2M以上を売り上げているそうです。また、仮想通貨プラットフォームのNTXとのパートナーシップ契約は10Mにもなるそうです(複数年契約で契約年数は不明)。

更に今年からエンタメ専門のGSE部門を立ち上げ、コンテンツ開発にも力を入れています。ウォリアーズのドキュメンタリーやK-PopスターのBamBamのシングルをリリースする予定で、ミュージック・フェスティバルの開催なども検討しているとのこと。今回のプレーオフでもカメラがまわっているかもしれません。またライセンシングではAppleやNetflixと組もうとしているようです。

これは共同オーナーで元ソニー・ピクチャーズのCEOだったピーター・グーバーのビジョンによるものと思われます。グーバーは、ソニーがハリウッドのコロンビア・ピクチャーズを買収した時にCEOだった有名なハリウッドのエグゼクティブで、mandalay entertainmentを所有しています。レインマンとかをつくった人ですね。

ウォリアーズのプレジデントでCOOのブランドン・シュナイダーは、「ディズニーはテーマパークとしてはじまった。ウォリアーズはバスケットボール・チームからはじまった。ディズニーがどうなったか見てくれ。ウォリアーズもどうなるか見て欲しい」と大きな目標をCNBCに語っていました。

このようなレイコブ&グーバーのビジョンにより、2012年の球団バリュエーションでNBAで8位だったウォリアーズは、今あのレイカーズを抜いてリーグ2位になりました(1位はニックス)。バリュエーション$450M→$5.2Bの飛躍です。その内訳は、チーム関連と不動産の価値がリーグトップの$1.5B。そのカテゴリーでニックスは3位で$665M、レイカーズは$80Mと11位で球団の以外の資産はあまりありません。

(ウォリアーズのバリュエーション by Sportico)

レイコブはマサチューセッツ州で生まれ育ったので、子供の頃はセルティクスのファンだったそうです。彼は13歳の時に家族とロスの南のアナハイムに引っ越して、まわりはレイカーズファンばかりの環境に変わり、自分もレイカーズのファンになったそうです。そのため、ウォリアーズを買収した時は、球団をセルティクスやレイカーズのようにしたかったそうです。今ついに彼の球団価値はセルティクスもレイカーズも超えました。後はレガシーだけです。ジェリー・バスがレイカーズを買収してから、レイカーズは5割でNBAファイナルズへ進んでいて、ウォリアーズもそうなるように努力すると話していました。


話が少しそれましたが、ウォリアーズはこのような多角的なビジネス戦略で、スポーツ&エンタテイメント・カンパニーに成長していこうとしています。

かつてレイコブがウォリアーズは「時代を先駆けている」と言っていましたが、それはチームの事ではなく、スポーツビジネスを変えて行くことを言っていたのかもしれません。その中心がウォリアーズであり、チェイス・センターなのではないでしょうか。

これからのウォリアーズ

この夏は、ウォリアーズにとって大きな夏になります。サラリーキャップはないのですが、契約延長/再契約できる主力選手が4人もいます。それでもチェイス・センターはウォリアーズのラインアップをキープし続けることは可能なのでしょうか?

まず、リトル・カリーと言われているジョーダン・プールの契約延長があります。その契約は、キース・スマートの予想では4年で$80M以上が最低ラインになるそうです。ボビー・マークスが作ったメトリックスでは$23.4Mが相場のようです。

また、アンドリュー・ウィギンスとドレイモンド・グリーンの契約延長もできます。ウィギンスのマックスは5年で$223M、他チームでは$172Mになります。マックスは流石にないでしょうが、2Wayのウィングであれば、$30M/年もありえます。ドレイモンドも今$25.8Mなので、優勝すればより高い契約は確実でしょう。再契約の選手はケヴォン・ルーニーです。

プール、ウィギンス、ドレイモンドの3人+ルーニーと契約すると(ドレイモンド$30M、ルーニーはフルMLEを若干上回る$12Mで計算)、2023年のサラリーは9人で$210M以上に跳ね上がります。2023-24シーズンのサラリーキャップは$125Mでタックスが$152.6Mと予想されているので、9人だけでタックスラインを$58.2Mも上回っています。最終的には、サラリーは14人で$223Mくらいになり、タックスは$418.9M、サラリー+タックス合計で$641.9Mまで行ってしまいます(タックスを払っていないチームには$20Mくらいバラまかれるはずなので、他のノン・タックスチームのオーナーたちは心の中ではウォリアーズを応援しているのは間違いありません)。

しかし、さすがに今の$700Mの売上のままでは、人件費やオーバーヘッド、借入返済はペイ仕切れないと思います。バスケサイドのコーチたちやスカウトやフィジカルセラピーだけではなく、ビジネスサイドのマーケティングやアリーナ運営の人件費もありますし、食事やホテルやチャーター機などの費用もあります。2010年のニックスの数字なので今は高くなっていると思いますが、いくつか運営費の具体的な数字を紹介します。

  • 移動費:$2.4M
  • 食事&栄養:$3.1M
  • トレーナー費用:$4.4M
  • メディカルチーム費用:$2.4M

また、ビックマーケット・チームのオペレーションコストの目安は$85.5M+で、内訳の具体的は以下のようになります(下図の%参照):

  • ビジネス運営費が$42.8M
  • ビジネスサイドの人件費が$28.5M
  • チームスタッフの人権費が$14.2M

ウォリアーズはスタッフの多さと高級取りが多くいそうなので(ボブ・マイヤーズとスティーヴ・カーのサラリーは$8MづつでNBAトップレベル)これよりもはるかに高い数字になりそうです。ウォリアーズは他にもフロントのアナリティクス部門を強化してして行っているそうで、レイコブは他の企業のように、組織に「火力」を追加し続けると話していました。また、チェイス・センターのオペレーションコストも入れなくてはいけません。それらを考えると、運営コストはまちがいなく$100M以上かかっています。

(ビックマーケットのチームの運営コスト–2018年 SIより)

この$641.9Mと球団運営の費用をまかなうためには、夏の間のイベントや新エンタメビジネスが当たるとか、新たなローンを組み直すとかしない限りムリででしょう。2025年からはじまるNBAの巨額(年間$8Bの$75Bと言われている)新TV契約による新たなサラリーキャップをどこまで考慮するのかも不確定要素としてありますが、全体的にみると今のままでは厳しそうですね。

それでも多少の赤字はファイナンスさえできれば問題ないので、財政的なギリギリの線までベストチームのキープを最優先していくのではないでしょうか。むしろ、ウォリアーズはこのビジネスモデル維持のために走り続けなければいけません。レイコブがサラリーの支払いを渋った時こそがマネーマシーンの限界ということでしょう。

この夏、ウォリアーズは攻めるのか、それともブレーキをかけるのか…?どうしていくかが楽しみです。


参考サイト:Kawakami: Warriors’ biggest (and most profitable) storylines of matchup vs. Dallas/Just How Lucrative Will The Chase Center Be For The Warriors?/NBA teams hike ticket prices as attendance drops, internal data shows/How the Golden State Warriors plan to become more than a basketball team/National Basketball Association Interactive Franchise Valuations/A $2-million view: Watching the Warriors from a Chase Center bunker suite
サムネイル画像:Photo by Jason O Rear