ドレモンドの出場停止処分について

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ウォリアーズのドレイモンド・グリーンが、月曜に行われたサクラメント・キングスとのプレーオフ・シリーズのゲーム2の4Qでサボニスの胸を踏んづけてフラグラント2の判定で退場になりましたが、NBAはその行為を問題視し、火曜の夜にドレイモンドに1試合の出場停止処分を下しました。これでドレイモンドは木曜の0-2で迎えるキングスとのゲーム3に出場できなくなりました。

ドレイモンドはすでにその踏んづけ行為を「退場」で罰せられていたので、NBAの更なる罰則にはウォリアーズやESPNなどの大手メディアのレポーターたちを含む多くの人が驚いたようです。

ウォリアーズのヘッドコーチのスティーヴ・カーや、ESPNのザック・ロウやマーク・スピアースB/Sのクリス・ヘインズやマーク・スタインらの大物レポーターたちももその決定には「驚いた」と言っています。ESPNのスティーヴン・A・スミスに限ってはいつもの調子でNBAのを批判しています。The Ringerのビル・シモンズがこのような罰則が過去にあったかどうか調べたところ、見つけられなかったそうです。前例のない罰則だけに、皆さんの驚きもそれだけ大きかったのだったと思います。

この決定に納得していないのはレポーターたちだけではありません。選手のデミアン・リラードや、引退したJJ・レディックやジャマル・クロフォードもあれは出場停止処分には値しないと言う意見です。NBPAのプレジデントのCJ・マコラムも、プレーオフのような大事な試合は選手たちの手で運命を決めるべきだ考えているので、その決定には合意しないと話していました。マコラム的には出場停止ではなく罰金で良かったのではないかとの事。ちなみにSpotracのデータによると、ドレイモンドは今回の出場停止処分で$177,976(日本円で23,848,784円、$1=¥134)を失い、彼のキャリア通しての罰金は$1.43Mになったそうです。

そして、一見関係なさそうなシクサーズのコーチのドック・リヴァースもNBAの決定には反対の態度を取っています。リヴァース:「ドレイモンドは出場停止にするべきではないと思った。リーグは今とても危険な前例をつくっていると思っている。私は本当に真剣だ。これは昨日もちょっと言ったが、もっと声を大きくして言えば良かった。もし私たちがもし扇動者ではなく報復者を罰則しはじめたら問題になる」

リヴァースのこの発言は、自分のチームのスーパースターのジョエル・エンビードを擁護した発言だと思われますが、NBA批判な事には変わりません。

また、このNBAの決定により試合数が減って収益が下がってしまうかもしれないので、オーナーたちもハッピーではないのではないかとの声も多かったです。シリーズの展開も3-0になるよりも2-2になった方が盛り上がるので、実はテレビ局もハッピーではないとの見方もあります。ビジネス的に見てもマイナスになるため、よくNBAは前例のない決定を下す事ができたなと思います。

当のウォリアーズはどう感じていたかと言えば、彼らはこのNBAの処罰にすごく怒っていたそうです。ESPNのラモナ・シェルバーンによると、ウォリアーズのソースは「私たちはすごく怒っている。私たちはすでにゲーム2で退場で代価を払った。それはわかる。問題はない。でもこの出場停止は必要がない」と言っていたそうです。

ウォリアーズのGMのボブ・マイヤーズは、「彼が一線を超えたのは確かだが、彼はすでに罰せられている」と話していました。

NBAはなぜすでに試合を退場にさせられて罰則を受けているドレイモンドに更なる罰則を与えたのでしょうか。

NBAのバスケットボール・オペレーションのVPのジョー・デュマーズによると、ドレイモンドに出場停止処分を与えたのは次の3つの理由を総合的に考えたからだそうです。

  • 行為が過剰でやり過ぎ
  • リーグへの有害な行為(その後の観客に叫び返す)
  • 違反を繰りかえす

ふたつ目の「有害な行為」に関しては、ドレイモンドがNBAコミッショナーの見ている前で観客に叫び返して煽っていました。もしこれをやらずに、試合後の記者会見でも反省や後悔を見せていたら、出場停止にはならなかったのではないかとの意見もあります。

グリーンは試合後、「足が掴まれた。2日で2回目だ。審判は見ていた。私はどこかに足を着地させなければいけなかったし、私はすごく体が柔らかい訳ではないから、遠くまで足を伸ばす事ができない。誰かから足を引っ張られている時にそんなに足は伸ばせない」と自分は悪くない的なポジションを取っていました。

また、ドレイモンドはポッドキャストで「7年前のフラグラント2ファウルで出場停止になれるとは思ってもいなかった。また、中指をふたつ立てて私の名前を叫んで”you suck”とチャントしている観客と交流したら出場停止になるとは思っていなかった」と言っているので、行為についての反省はしていないようです。

ドレイモンドの出場停止処分を決めたと言われているデュマーズも難しい立場にいたようです。というのも、デュマーズの息子はAAUでドレイモンドとチームメイトだったので、デュマーズはドレイモンドの事を良く知っていて、ドレイモンドのメンターだったそうです。デュマーズもドレイモンドは小さい頃から良く家に来ていて「スーパー親しい」と話しています。しかし、デュマーズは「このNBAの仕事に就いてから、リーグで関係がある人たち(彼は元キングスのGMアドバイザーでもあった)にこうする日が来るかもしれないのはわかっていたが、それが自分の仕事だ」的な事を話していて、かなりの覚悟を持って決定を下していた事が感じられます。

また、シェルバーンは、普通はこのような処分になる時はデュマーズのようなNBAの偉い人たちと直接話すのだが、デュマーズは水曜の朝までドレイモンドとは話さなかったとレポートしています。この事からもこの決定はNBAにとっても異例の事のように思えます。要するに、NBAはドレイモンドに態度を改めろと言っているのでしょう。

これでウォリアーズは0-2で迎えるキングスとのゲーム3を、そのチームのエモーショナルな原動力/リーディング・パサー/リーディング・ディフェンシブ・リバウンダー抜きで勝たなくてはいけなくなりました。もしシリーズが0-3になってしまったら、プレーオフ敗退はほぼ決定的です。

ここでウォリアーズを持ちこたえさせたのが、ここで以前ドレイモンド・ウィスパラーとしても紹介したGMのボブ・マイヤーズです。

The Athleticのティム・カワカミによると、マイヤーズはドレイモンド、コーチのスティーヴ・カー、そしてステフ・カリーに、この一件で集中を切らせてはいけないし、勝たなければいけない試合があり、救わなければいけないシーズンがあるため、メディアやリーグにその決定について不満を言い始めてもいけないと伝えていたそうです。カーもマイヤーズについて、「ボブが記者会見で方向性のトーンをつくってくれたと思う。彼はコーチのミーティングに来て、選手たちにそのメッセージを理解させるのがどれだけ重要かについて少しだけ話した」と言っていました。

カワカミもこの時からゲーム3には勝っていたと言っています。このチーム力に支えられた戦術と選手の頑張りによって、絶望的な0-3になってしまう状況を切り抜けました。しかし、シリーズがゲーム7までもつれこんでシリーズ敗退になれば、ゲーム2の退場のためにシリーズに負けたという話になってしまう可能性もあり得ます。そうなればシェルバーンが言っていたように、ウォリアーズのシーズンはドレイモンドのパンチではじまり、ドレイモンドの踏んづけで終わる事になってしまいます。

もし、そうなれば来シーズンすでに12人で$209Mのサラリー(ドレイモンドの$27.5Mのプレーヤー・オプション含む)になっているウォリアーズのサラリー+タックスは現在のCBAでは$443Mほどになり(ざっくり計算)、ダイナスティー解体に繋がるかもしれません。

新CBAがいつからかどのようなカタチで導入されるかハッキリしないので、ウォリアーズが具体的にどうするのが正解なのかはまだわかりませんが、予算オーバーになってしまう事だけは確かです。

そのため、このシリーズの行方がチームの未来の方向性を決定づける事になるかもしれません。ドレイモンドがチームメイトを殴っても、相手チームの選手を踏んづけたり、アウェイの観客に向かって叫んでも許されているのは、勝てているからであって、勝てなくなりはじめたら話は変わってくると思います。そうなってしまうと、もう手遅れです。ドレイモンドのトレードのリターンも悪くなるし、負けが続けばチームとの関係も悪化するでしょう。現に、ドレイモンドは特に若く最近入ってきた選手たちにとっては以前ほど絶対的存在ではなくなっているようです。その時は、財政的にも、チーム構成的にもいつまでも過去にこだわっていないで先手をとって動くのが正解でしょう。

また、プレーオフ早期の敗退になれば、ボブ・マイヤーズの再契約交渉にも影響を与えそうです。もしマイヤーズが去ってしまったら、ステフと球団の信頼関係にも影響を与えるかもしれません。ドレイモンドと球団の信頼関係にはもっと大きな影響を与えそうです。

ここまで来ると、ドレイモンドがチームに残るために残された道は、このシリーズで大活躍したり、チームをカンファレンス・ファイナルズへ導くなどして自分の価値を証明する以外にはなさそうです。それができなければ、この夏はドレイモンドのオプションやトレード、ウォリアーズの未来についての話題が多くなるのは間違いありません。


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