ドレイモンドが声を取り戻すまでの道のりとベンチ出場について

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ドレイモンド・グリーンは今波乱に満ちたプレーオフのひとつを過ごしています。先週行われたキングスとのプレーオフ・シリーズのゲーム2で、キングスのオールスターのドマンタス・サボニスの胸を踏んで1試合の出場停止処分を受けてしまいます。しかも、今年のプレーオフは彼にとって予算オーバー&新CBAの厳しい金持ちチームの規制のためにサラリー削減モードに入るであろうと言われているウォリアーズに自分の価値を示す大事な場所でもあります。ロードでキングスに2連敗とドレイモンドとチームにとっても厳しい立ち上がりになりました。

そのドレイモンドは復帰したゲーム4でベンチから出場し、後半からキングスのエースのディアーロン・フォックスを守り、試合終盤でのディフェンスのプレーメイクをしてチームの勝利に大きく貢献し、ウォリアーズはシリーズを2-2のタイに持ち込みました。そしてゲーム5でも同じくベンチ出場して、チームはキングスに勝利し、シリーズに王手をかけました。

はじめドレイモンドがベンチ出場すると聞いた時は、ドレイモンドのチームメイトを走らせてパスをさばくスタイルではなく、ルーニーのスペースをアタックするロール重視のためだったと思いましたがが、実はこのベンチ出場案はドレイモンドから言い出した事だったそうです。すべてはドレイモンドがチームのために考えた事でした。

The Athleticのティム・カワカミによると、ドレイモンドは、ウォリアーズがキングスに快勝したゲーム3を自宅のテレビで観ていたそうです。その時ドレイモンドは、チームがジョーダン・プールでオフェンスの動きをつくったのを見た後、キングスを揺るがしたスターティング・ラインアップを変える必要があるのか?と考えたそうです。彼は試合残り数分でテレビを消して、自宅を出てチェイス・センターに向かいました。

ドレイモンドは試合の20分後にウォリアーズのロッカールームに着いて、「ステフはどこだ!」とスタッフに叫んだそうです。ドレイモンドはすぐにカリーをトレーニングルームで見つけ、すぐにゲーム4の計画を立て始めたそうです。おそらく自分のベンチ出場のアイディアを話したと思われます。もちろんカリーの素晴らしいパフォーマンスも褒めたそうです。

それからドレイモンドはそれをヘッドコーチのスティーブ・カーに伝えたそうです。スペースをつくるなら、いつもはルーニーではなくドレイモンドを5にして試合をはじめていましたが、ESPNのラモナ・シェルバーンによると、ドレイモンドは「ルーニーを下げる事はできない。それはブルシットだ。彼はそれに値しない。そうなるなら、それは私だ」と主張したそうです。同じようなことを考えていたヘッドコーチのスティーブ・カーはそれを了承。ドレイモンドはゲーム4でベンチ出場になり、チームはより多くのシューターをフロアに置いてスペースをつくる事ができました。

ドレイモンドは試合後に、「壊れていないものを直す必要はないと言う事を固く信じている。私が戻って来たからと言って物事を変えたくはなかった」と話しています。

ドレイモンドがこのようにチームのためにスタートしなくても良いと考えているのは、オールスターだったデヴィット・リーがチームのためにスターターの座を自分に譲ってくれてから自分のキャリアが始まったからだそうです。

ドレイモンド:「私にとって最も大事な事は、『コーチ、私はベンチから出場する必要がある』と言える事だ。なぜなら私はデヴィット・リーが私をハグして、腕を私にまわして、『これがあなたがする必要のある事だ』と言ってくれたのを見たからだ。それとは逆の方向へ行く事はできない」

このように、チームにかけた迷惑の責任をとって一歩引けるマインドと、チームのリーダーとしてチームの勝利をいちばんに考えられるのは素晴らしい事だと思います。

そんなドレイモンドも今シーズンは開幕前にチームメイトのジョーダン・プールを殴ってしまい、シーズン序盤はリーダーシップを失いかけていたようです。The Athleticのシャムズ・チャラニアが、ドレイモンドがどのようにして「声」を取り戻したのか特集していたので紹介します。


10月初旬のトレーニングキャンプでプールを殴った後、ドレイモンドは自分のリーダーシップの役割が、このウォリアーズで天秤にかかっていることを理解した。特にシーズン序盤の数ヶ月は、チームメイトもドレイモンドが控えめになっているのを感じていた。1月15日のブルズ戦で負けた際、ドレイモンドはサイドラインでコーチングスタッフのローテーションに異議を唱えるような暴言を吐いていた。

しかし、その2週間後、真実の瞬間が訪れた。

1月27日、ホームでラプターズに129-117で勝利した後、トレーニングキャンプのパンチ以来、今シーズン初めてドレイモンドが試合後のロッカールームでプールを厳しく叱ったとリーグ関係者が語っている。この10年間、ウォリアーズにおけるドレイモンドの価値はスタッツ以上のもので、それはその存在感、ロッカールームでの声、そして彼の意思で判断されてきた。そのため、この1月下旬の夜、ドレイモンドはプールに対して、より良い意思決定とすねない事を要求する言葉を浴びせたそうだ。プールはドレイモンドからの言葉を受け入れ、ステフ・カリー率いるウォリアーズのリーダーシップは、自分の考えを発したドレイモンドに拍手を送ってサポートしたと情報筋は語っている。

それがドレイモンドのターニング・ポイントだった。

The Athleticが最近ドレイモンドに1月27日のロッカールームでの出来事を持ち出すと、彼は微笑んで肩をすくめ、「聞いたか?」と言った。

「あの時のことは覚えているよ」とドレイモンドは語った。「まず1つ目: 私たちは皆が状況をわかっている。何があったかはみんなが知っている。そして、私は自分の声に信用を取り戻さなければいけないと感じていた。声は与えられるものではない。私としては、『私はドレイモンドなんだから、みんな話を聞いてくれるよ』と言うだけでなく、それを取り戻すために何かしたかったんだ。それがうまくいくかもしれないし、うまくいかないかもしれない。でも、もしうまくいかなければ、リスペクトを失い、みんなの耳を失うことになる。私にとって、シーズンの最初の3ヶ月から3ヶ月半の間はそれをする価値はなかった。私はリスペクトを取り戻し、声を取り戻す必要があった。ドレイモンドだから、ドレイだから、この球団でこうしてきた、ああしてきた、だからみんな聞くんだ、というだけではだめだ。物事はそんな風にできていない」

「1歩引いて……3、4歩下がって、ただただ成り行きに任せた。時がすべての傷を癒してくれる。だから、私がそれを取り戻す間、努力して、毎日体を張って、飛び込んで、時々何かを言うけれど、あまり高圧的にならないようにしている間に時間が傷を癒した。でも、シーズン中のその時は追い込みの時期だった。今が走り出す時だった。そして、誰もが、負けた後よりも勝った後の方が物事をよく受け入れられる」

「オールスター休暇に入る前に、あの瞬間があった…あの瞬間を迎えることが重要だと感じた。しかし、それは適切なタイミングでなければならないとも感じていた。1年を通して、あまり勝ち星を積み重ねることができなかったので、適切なタイミングを見極めようとしていた。私たちはホームで勝利を積み重ねようとしていた。その時こそ、自分を取り戻そうとする時だったと思う。そうは言っても、その場で自分を取り戻そうとしても、それが受け入れられないこともある。もし、それが受け入れられなかったら、それは自分の責任だ。もう一度一歩下がればいい。しかし、もしそれが受け入れられたら、それは『よし、これで、いろいろな事ができるようになって、良くなって行く』ということだ。今、それを感じることができる。チームはここにいて、準備はできている。完璧なタイミングだ」

● リーダーシップに関して、ジョーダンとその1月27日の瞬間から、自分自身を取り戻したと感じるか?

「自分らしさを感じている。自分の『声』はあると感じている。そして、永遠にそうではいられないということを理解し、『自分には何の価値があるのか』と考えていた。CEOであれ、コーチであれ、GMであれ、選手であれ、どんな形のリーダーシップであれ、多くの人が自分の声を消していくのを何度も見てきた。そうはなりたくない。だから私は、不満を言わずに仕事に行き、何か言うべきことがあれば言うが、どちらかというとでしゃばらないでいるのが大切だとわかっていた。そして、それが私たちにとって良い結果を生んだと思う」

● メッセージが響いた時どう思ったか?

「とてもいい良く感じた。それに、JP(プール)は勝ちたいんだ。彼は人生の中でずっと勝ってきた。彼は勝者だ。ミシガンを勝利に導き、ここに来てチャンピオンシップを手に入れた。そして、私も勝ちたい。結局のところ、それに尽きる: 試合に勝つためにやるべきことをやり、それ以外のことはやりながら考えていく」


このように、ドレイモンドはチーム内での自分の「声」を取り戻すために、再びみんなからの信用を得ようとシーズン通して努力してきたようです。しかし、声を取り戻したと思った矢先に、今度は大事なプレーオフの試合で退場と出場停止処分になってしまい、結果的にチームの足を引っ張る事になってしまいました。ドレイモンドは自分のポッドキャストで「出場停止になっていちばん気に障るのは、チームメイトたちを戦いに残して来てしまい、ドッグファイトに参加できない事だ」と言っていたように、チームメイトたちに申し訳ない気持ちがあるのが伝わってきます。このベンチ出場も、迷惑をかけてしまったチームや球団からの信頼を再び勝ち取ろうというドレイモンドの決断だったのかもしれません。


サムネイル画像:Photo by Christian Petersen/Getty Images

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