ジェームズ・ハーデンのステップバック・スリー

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2015年にステフェン・カリーがスリーでNBAを変えてから4年、ハーデンがスリーに革命を起こしました。ステップバック・スリーです。

ハーデンは、NBA史上2位となる「30得点を32試合連続」を記録し、ケガが多くスランプだったチームをウェスト上位まで導き、今シーズンのMVP候補になりました。アイソのオフェンスは何でもできるため、史上最高のオフェンシブ・プレーヤーの1人と言われています。そんな凄まじい活躍をする彼のもっともインパクトのある武器の「ステップバック・スリー」がフォーカスされはじめました。

もちろんハーデンがステップバック・スリーをはじめて編み出した技ではありませんが、ダブルステップバック・スリーをした時にトラベリングではないかと言われて大きな話題なってからは、ステップバック・スリーと言えばハーデンのような感じになっています。

また、ステップバックスリーだけではなく、NBA全体でも「ステップバック」が増えてきました。TNTのブレント・バリー曰く、「ステップバック」が増えてきたのは、オフェンスがスイッチディフェンスに対応するためだそうです。大きなディフェンダーがスイッチして来た時に、ガードにとってステップバックはアイソのベストオプションになっているとの事です。

そんな訳で、今シーズンNBAでもっとも注目を浴びているショットである「ハーデンのステップバック・スリー」を見ていきます。数字はすべて3/3時点のものになります。

まずはハーデンのスリーから

今シーズン、NBAのスリーの83%はアシストによるものです。しかし、ハーデンのスリーのアシスト率は極端に少なく14%になっています。今シーズン、ハーデンは844本のスリーを撃ち、決めたのは303本(0.359)。その303本の内、242本がアンアシテッド・スリーになります。なんと約80%のスリーを自分でクリエイトしているのです。(しかもハーデンのペースはNBAで2番目に遅い。ダークが最下位)

ジェームズ・ハーデンのアンアシステッド・スリー・メイド
2018-19シーズン:242/303本 79%
2017-18シーズン:196/265本 74%
2016-17シーズン:179/262本 68%

OKC時代のスリーは、普通に85%がアシストされたものでした。ケヴィン・マケール時代のロケッツでの2015-16シーズンは、50%がアシストされたものです。マイク・ダントニがロケッツのヘッドコーチに就任してハーデンのスリーにグリーンライトを出してからは、スリーを生み出す回数が伸びました。コーチとの相性は大事だと言うのがわかります。

ちなみにダントニは、以前スリーが20%前後だったコーリー・ブリュワーになぜスリーを撃たせ続けるのか聞かれた時、「選手の限界を決めてしまうような事はしない」と言っていました。ダントニの元で伸びる(または数字を残す)選手は多いですが、この「信頼されている」感が大きいのではないでしょうか。

ハーデンのステップバック・スリー

ステップバック・スリーの平均アテンプトは、リーグ最多の1試合で8ショットで独走状態です。
1. ジェームズ・ハーデン:8/game
2. ルカ・ダンチッチ:2.9/game

ジェームズ・ハーデンのステップバック・スリーのアテンプト数の推移
2016-17シーズン:0.9
2017-18シーズン:2.4
2016-17シーズン:8

また、ハーデンとロケッツにとって、ステップバック・スリーは非常に効率よいオフェンスになっています。どれくらい効率的かと言うと、ハーデンは1ステップバック・スリーにつき1.20ポイントを生み出しています。これはリーグトップのオフェンスを誇るウォリアーズのオフェンスの1.15ポイントよりも高い数字です。NBAはまだハーデンのステップバック・スリーをどう守るかの答えを見つけていない表れですね。

ステップバック・スリーのサイエンス

ハーデンのステップバック・スリーとは一体どんなショットなのでしょうか。ジェームズ・ハーデンは、ディフェンスから6フィートのスペースをステップバックで生み出し、クリーンな3を作り出しています。

・ディフェンダーの重心を後ろに移動させるためにジャブステップで釣る
・この時、ハーデンの右足の位置は動かない。そこがシュートポイントになる
・ハーデンのステップで、ディフェンダーの重心はリム方向に移る。その瞬間を見計らい、ハーデンはジャブステップから後ろ足のポイントまでステップバックする
・両足をそろえ、発射開始。ドリブルをギャザーし、ボールをショットポケットからリリースポイントまで持っていく

この1連のアクションを1秒以内にしています。

これを守るのがむずかしいのは、ハーデンにドライブがあるからです。ジャブステップを無視してしまえば、リムまで行かれてしまい、フローターかレイアップか(ファールも)を決められてしまいます。基本的にドライブがないレディックやバロック等の3ポイントシューターのジャブステップは怖くありません。しかし、ハーデンを守る場合、ディフェンダーはまず彼のドライブに対応しないといけないため、ステップバックがうまく機能しているのです。

サウスポーのハーデンはたま〜に左へのステップバック・スリーを撃っています。すごいですよね。

どうやってハーデンを守るか

多くのチームはハーデンにはチーム・ディフェンスで対抗しています。ハーデンはサウスポーなので、左に行かせないように守り、同時にビックはリムあたりまで深くドロップしてドライブを防いでいます。ハーデンにはフローターがありますが、ゴール下の確実な2点よりもフローターを撃たせた方がいいでしょう。

バックスはこれを徹底していました。ロペスを深くドロップさせ、ブレッドソーはスリーを撃たせないようにきっちりハーデンの左につきながら、ハーデンをドライブへと誘導していきます。

スコッティー・ピッペンも同じようにハーデンを守ると言っています。

「まず、ハーデンがアリーナに着くのを阻止する(笑)」

これは彼のジョークですが、「まず点をとったらすぐにハーデンを見つけディフェンスをはじめ、クロックから時間を削っていく。左腕にきっちりついて、右に行かせる。でも、リムへの直線は与えない。右手を使わせて、左肩をずっと守る」だそうです。

来シーズンはもっとたくさんのステップバックが見られるようになるでしょう。夏にステップバック・スリーをマスターする選手が多くなるのではないでしょうか。年をとって運動量が落ちるレディックやコーヴァーのステップバック・スリーも見てみたい気もしまう。

NBAの進化とともに、ステップバックなどの活かされる技術も変わってきています。このような進化を見ていくのもNBAの楽しさだと思います。

参考サイト:Those step-back 3s are sent from another planet
サムネイル画像:Photo by Getty/Tim Warner