NBAファイナルズの見どころ

Browse By

Los Angeles Lakers vs Miami Heat

ここまで来るのが長かったですね… 本当にいろいろなことがあったシーズンでした。プレシーズンにあった中国との揉め事ははるか遠くの過去のようです。それはESPNのケヴィン・アーノヴィッツさんがうまくまとめていますので、興味がある方は読んでみてください。

そして、NBAもコロナを乗り越えるためにバブルをつくってシーズンを再開。検査体制も試合運営も大変だったでしょうが、なんとか感染者を出さずにファイナルズまで来ることができました!すばらしい事だと思います。

そんな波乱万丈のNBAファイナルズはレイカーズ対ヒートになりました。

レイカーズは2010年以来初のファイナル進出。その時は優勝してコービーがファイナルズMVPに輝いています。

ヒートは2014年以来初のファイナル進出。その時はレブロンを筆頭にしたウェイドとボッシュのビック3で3連覇を狙いましたが、スパーズに優勝を阻まれています。

スポーツ賭博のオッズではどこもレイカーズが本命、ヒートがアンダードックですが、「538」ではヒートの優勝は73%で、レイカーズは27%となっています(*9/29調べ。下の表の538の数字は古い)。

チーム構成

この対戦で言われているのは、このシリーズでレイカーズにはレブロン、ADとベストプレーヤーが2人揃っているが、その後の3人目がはぐっとさがって、両チーム合わせて8番目になる、という事です(3~7番目にはヒートの選手がきます)。レブロンとADから次の選手のレベルが下がるということを言いたいのでしょうが、これと同じようなことはナゲッツシリーズでもロケッツシリーズでも言われていたので、あまり気にしない方がいいかもです。

しかし、「トップ選手2人+ロールプレーヤーのチーム」 vs 「バランスがいいチーム」の対戦ということは間違いありません。

チーム構成のアプローチも対照的で、レイカーズはビックで守備がいい割とトラディショナルなチーム、ヒートはスモールでスペースを利用してのモーション・オフェンスのチームとなっています。

両チームともファイナルズに進出することだけあって、プレーオフで良い数字を残してきています。

レイカーズ:OffRtg 115.6で2位、DefRtgは107.8で5位、NetRtgは7.7で1位
ヒート:OffRtg 113.4で4位、DefRtgは108.9で7位、NetRtgは4.5で3位

このシリーズをより面白く観るためのポイントを見ていくために、まずはマッチアップから確認していきましょう。

マッチアップ

試合は次にようなマッチアップではじまるのかな、と思います。

ハワード ⇄ バム
AD ←クラウダー(ダブル?)
レブロン ←ジミー(レブロンは守備の時はクラウダーに隠れるかも)
グリーン ⇄ ロビンソン
KCP ⇄ ドラギッチ

2Qと4Qの終わりにはADが5になり、バムとマッチアップするでしょう。バムのフィジカルやスキルがADに通用するのか?前半と後半の終わりはアツい展開になりそうです。

こうして見ると、レイカーズはオフェンス面ではビックを多く使うメリットが大きそうですが、ディフェンス面ではビックがいる事によってデメリットも出てきます。特にマギーはスウィッチに不安が残り、ドラギッチとバムのPnRにやられそうなので、このシリーズはあまり出番はないかもしれません。このように、ゲーム1はどのチームが何に苦しんでうまく対応できなかったかの様子見が多くなりそうです。

レイカーズのオフェンス(ヒートのディフェンス)

レイカーズの最大の武器である高さとトランジションは、ヒートの最強の盾である2-3ゾーンの相性が良さそうです。

これまでのプレーオフで、レイカーズはトランジションが18/5%で2位、トランジションのPPPは1.16で3位です。レイカーズはゾーンを敷かせないため、リバウンドをとったら走ってくるでしょう

また、レイカーズは高さを活かしたペイントでのタッチは24.5回とプレーオフで1位、FGAは29.8で1位です。

ヒートの2-3ゾーンは変わっていて、トップにリーチがあるウィングを並べてパスやゾーンブレイクを制限するため、下の両サイドにはガードを置いています。そうなるとゾーンの真ん中にカットしてくるADやビックにパスをしたり、コーナーからベースラインをカットしてくる(またはすでにベースライン際にいる)ビックにロブを放り安くなります。

対するヒートは、セルティクス・シリーズで2-3ゾーンを177ポゼッションして、相手をポゼッション平均0.96に抑えています。しかし、これがロケッツのパックライン・ディフェンスを攻略し、サイズのあるレイカーズに同じように通用するのか?ちょっと厳しそうですね。

このレイカーズとの相性を考えれば、ヒートはゾーンを無くさないまでも回数は減らしてくるでしょう。

リバウンド

これもレイカーズの強みである高さに関係してきますが、レイカーズのオフェンシブ・リバウンド率はプレーオフで29.7%で2位。対するヒートのプレーオフでのDリバンド率が75%で8位良いとはいえません。ここでもヒートは注意をしないとバムのファウルトラブルだったり、セカンドチャンスで点を取られてしまいます。

レイカーズはビックを活かすために、セルティクスがヒート相手にどうエネス・カンターを使ったかを研究してくると思います。

カンターはヒートとのシリーズで、100ポゼッション:オフェンシブ・リバウンド 9.5(チーム1位)、ディフェンシブ・リバウンド14.9(チーム1位)、セカンドポイントは10.8(チーム1位)と、リバウンドとセカンドチャンスの得点で貢献しました。

また、ADはFTスローのリバウンドには参加せずに、セットディフェンスに対し優位に立つために後ろで待機しています。ヒートはバムが5でADにマッチアップしている時、FTのリバウンドを優先させるのか、それともADヘの守備を優先させるのでしょうか?バムがいなければ、ADに(クラウダー相手に)ポストアップされた上にダブルのヘルプの来ない… 自分のFTが不利に働くという奇妙なことになってしまいます。ADにはじめから2人体制で警戒しておくのがいいのかもしれません。

スウィッチ

ヒートは、ガードも守れるバムがいるため、スウィッチもうまいチームです。レイカーズはヒートのスウィッチに対してどうするでしょうか。

レイカーズはドライブがプレーオフでは32.6回と最下位なので、ヒートはパスコースを防ぎながらスウィッチやマンDを多くしてレイカーズのオフェンス手段を制限しても良さそうです。

レイカーズはナゲッツシリーズでは、守備が弱いMPJをかなり狙っていました。このシリーズでも、レブロンは、守備が弱いロビンソン、ヒィーロ、ドラギッチあたりをターゲットにして仕掛けてくると思います。

対するヒートは、判断力が高いレブロンの手からボールを離すために(調度レイカーズがハーデンにしたように)ダブルチームでアイスして、レブロンをオフェンスから切り離してもいいかもしれません。対策はされるでしょうが、ショットクロックを使わせるだけでもその意義はあるでしょう。ショットクロックが少ない場合、レイカーズは、レブロンのジャンプショット(ISOのPPPは1.06/ちなみにマレィは1.31)かADのポストアップ(PPPは1.04と思っているほど爆発的ではない)が多くなるので、そこは割り切ってもいいのではないでしょうか。

ADにダブルチームをして、レブロン以外の選手に点を取らせるようにしてもいいかもしれません。

レイカーズのディフェンス(ヒートのオフェンス)

ヒートのオフェンスは大きく分けて3つになります。

・ポイントバム
・PnR/DHO
・スリー

これをレイカーズはどう守っていくのでしょうか。

・ヒートのオフェンスは、バムがエルボーやトップでパスをさばいたり、バムがドリブルしてプレーメイクをしたり、バムが中心となっています。

いずれにしてもロケッツと違うのは、他の選手たちがDHOなどでオフ・ザ・ボールで動くことです。これにレブロンを巻き込んで守備にエネルギーを使わせてしまうのもひとつの手です。プレーオフでは、レブロンはかなり献身的に守備もしているので、疲労度も高くなり、シュートが多くなりそうです。特にウェスタン・カンファレンスを優勝した時に床に座っていたのは、4Qでジャマル・マレィーを守っていた疲労の現れではないでしょうか。

・PnRはADがいるので、難易度が高いですね。ADが5の時にストレートでPnRしても、ADはローラーのバムにもフィジカルで勝てますし、スピードがあるので、ボールを持つジミーやドラギッチにもついて来れてしまいます。ADが4の時はヘルプで出てくるので、これの突破もむずかしそうです。ヒートは、スウィッチさせてボールからADを引き剥がして、いちばん守備が弱い選手を狙うことができるでしょうか。

また、DHOやヒートのスリーを限定するために、レイカーズはスウィッチしてくるでしょう。

・スリーはポイントバムとDHOからの波及の結果で、ディフェンスを動かしてからフリーになってからのスリーやDHOからのスリーを得意としています。これを守るのもやっかいですね。ヒートはスリーが入ればいいシリーズに持ち込めるのではないでしょうか。ヒートにはスリーがあるので、レイカーズはナゲッツとのシリーズでも見せたゾーンはそれほどやって来ないと思います。

それ以外でも、セルティクスがバムに対してやっていたように、ヒートはADをバムでペリメターに釣り出し、サイドPnRでドライブしても良いと思います。ウィークサイドのレブロンがヘルプに来ても、カットやスリーへのパスが出せます。

ヒートの課題

バムがいない時のヒートの数字はこれです。

オン: 100ポゼッションで116.1点、+/− 7.9とチームトップです。
オフ: 100ポゼッションで99.2点、+/− −3.6

ヒートはバムがいない時間をどうやって生き延びるのかが勝利の鍵を握っているといえるのではないでしょうか。セルティクスのシリーズ後半ではイギーをCにしてタイスなどを守っていましたが、同じことがADに対して通用するかは疑問。マイヤース・レナードを出すか、オリニクとADでマッチアップさせるのか…守備はゾーンでごまかせるかもしれませんが、オフェンスはバムがいないとかなり苦労しそうです。

このあたりもシリーズを通してどうスポが対応していくのか見ていきたいと思います。

ヒートはボールハンドルリング/パスができる選手が多いのと、誰でもフレアスクリーンをするので、ウォリアーズのようなモーション・オフェンスが可能です。ディフェンスを見てどう攻めていくのかをチーム全体で理解しているように見える時があり、そのチーム力を持続していけるのであれば、ヒートにもワンチャンあると思います。

サムネイル画像:Photo by Getty Images, Michael Reaves