トレードのフィジカルで、キャリス・レヴァートの腎臓に小さな腫瘍のような塊(英語:mass)が見つかりました。現在レヴァートは治療のため、無期限欠場ですが、ペイサーズは彼が完全に復帰できると考えて、トレードを完了させました。いきなりトレードが成立しないかもしれないと焦りましたが、無事終わって良かったです。ペイサーズもほっとしているでしょう。
この4チーム・トレードについて、キャップやチームヘのフィットの視点から、ロケッツ、ペイサーズ、キャブスのそれぞれのチームのトレードを考察していきたいと思います。
まずは4チーム・トレードの詳細から。
ヒューストン・ロケッツ
OUT:約41億円
ジェームズ・ハーデン(約41億円)
IN:約32.38億円
ヴィクター・オラディポ(約21億円)
ダンテ・エグサム(約9.6億円)
ロディアンス・クルークス(約1.78億円)
ドラフトピック
2022 1stラウンドピック(プロテクションなし)
2024 1stラウンドピック(プロテクションなし)
2026 1stラウンドピック(プロテクションなし)
ドラフトピック・スワップ
2021 1stラウンドピック(プロテクションなし)
2023 1stラウンドピック(プロテクションなし)
2025 1stラウンドピック(プロテクションなし)
2027 1stラウンドピック(プロテクションなし)
ブルックリン・ネッツ
OUT:約34.08億円 + 約2.6億円キャッシュ
キャリス・レヴァート(約16.2億円)
ジャレット・アレン(約3.9億円)
トウレーン・プリンス(約12.2億円)
ロディアンス・クルークス(約1.78億円)
ドラフトピック
2022 1stラウンドピック(プロテクションなし)
2024 1stラウンドピック(プロテクションなし)
2026 1stラウンドピック(プロテクションなし)
ドラフトピック・スワップ
2021 1stラウンドピック(プロテクションなし)
2023 1stラウンドピック(プロテクションなし)
2025 1stラウンドピック(プロテクションなし)
2027 1stラウンドピック(プロテクションなし)
IN:約41億円
ジェームズ・ハーデン(約41億円)
インディアナ・ペイサーズ
OUT:約21億円
ヴィクター・オラディポ(約21億円)
IN:約16.2億円 + 約2.6億円キャッシュ
キャリス・レヴァート(約16.2億円)
キャブスが決める2ndラウンドピック
クリーブランド・キャヴァリアーズ
OUT:約9.6億円
ダンテ・エグサム(約9.6億円)
キャブスが決める2ndラウンドピック
IN:約16.1億円
ジャレット・アレン(約3.9億円)→ TPEで吸収
トウレーン・プリンス(約12.2億円)
*$1=¥100換算
ヒューストン・ロケッツ
ロケッツはこのトレードでうまくドラフトアセットも回収し、ジェームズ・ハーデンを今年で契約が切れるオラディポに変えました。
ロケッツの動きは、チームづくりよりもサラリーキャップ、特にタックスを中心に回りがちなので、このトレードを理解するために、まずはロケッツのサラリーキャップを見ていきます。
ロケッツはこのトレードで、サラリーが約139.4億円で約6.86億円のタックス超えから、約128.6億円までさがり、タックスまで約4億円になりました!(*ウェイブされたカボコロ含めず)
来シーズンもオラディポ込みの11人で約122.7億円になっており、タックスまで約14.3億円。
これでロケッツは当分タックスの心配をしなくても良さそうです。
しかし、このロケッツのトレードで謎なのは、なぜネッツとのストレード・トレードをせずに、ペイサーズとキャブスを絡ませたのかです。もしネッツだけのトレードになると、キャリス・レヴァート(約16.2億円)、ジャレット・アレン(約3.9億円)、トウレーン・プリンス(約12.2億円)、ロディアンス・クルークス(約1.78億円)の合計約34.08億円とハーデンの約41.2億円の入れ替えなので、サラリーは約130.3億円になり、タックスを回避できると同時に、その4選手をキープできます。
しかも選手的にはレヴァートとオラディポは似ていますが、レヴァートの方が若く、パスがあり、安く、契約が長い。
この辺りは、ペイサーズがレヴァートを欲しがっていて、ロケッツにオラディポとのトレードを持ちかけたように思われます。
GMのチャッド・ブチャナン率いるペイサーズは、トレードを終了させるためにすべてロケッツとやりとりをしていた。
「ネッツから直でキャリスを得られるとは思っていなかった」ケヴィン・プリチャードは言った。「私たちには3つ目のチームが必要だ」 https://t.co/CHjJdwRhFb
— NBA Reporter (@NBA_Reporterjp) January 17, 2021
しかし、ロケッツからすれば、オラディポとレヴァートをトレードすると、タックスが約2.5億円超えてしまいます。
この時点で、アレンを取るか、オラディポを取るかの判断になります。プリンスをトレードするのが手取り早いですが、彼を欲しがるチームはいないでしょう。ロケッツが1stラウンドピックをつければ話は別ですが… なので、ロケッツがオラディポを選べば、必然的にアレンをトレードに出してタックスを回避することになります。
個人的にはレヴァートとアレンの2人ともキープすればいいのになとも思いますが… やはりウォールにはスクリーンがうまいセンターが必要なイメージがあるし、ウッドのディフェンスが悪すぎるのもあります。
話を戻しましょう。オラディポを選んだ理由を考えるとすれば、オラディポは3/4にまたトレードできるので、うまく大活躍すればその時までに価値があがり、ロケッツが所望する「有望な若手」とのトレードに使えるかもしれません。
例えば、オラディポに興味があると言われているヒートの来シーズンのキャップスペースは約23億円です。オラディポは、ペイサーズの約25億円の契約延長を断っているらしいので、ヒートがFAでオラディポと契約するにはちょっと足りませんね。ひょっとしたら、焦ったヒートがヒィーロやロビンソンら「有望な若手」とオラディポをトレードしてくれるかもしれません。または、コロナの隔離が成績に影響して焦ったチームが出てくるかもしれません。その時は、即戦力としてレヴァートよりもオラディポの方が良さそうです。
もし最悪、上記のようなオラディポのトレードもなく、彼のパフォーマンスが期待ハズレだったら再契約しなければ良いだけです。オラディポがいなければ、ロケッツの来シーズンのキャップは約93億円になり、約10億円近いキャップチームになります。
また、このトレードにより、ロケッツは約15.4億円のトレード・エクセプションを得たようです。タックスを払わないロケッツはフルで使うことはないでしょうが、もしタッカーやゴードンをトレードしてタックスまで5億円とかになった場合は、これを使えます。ただ、このTEを欲しかったためにオラディポとレヴァートのトレードをしたというのはありません。あくまでも副次的なものです。
そして、ロケッツがレヴァート&アレン オラディポのトレードをペイサーズとしなかったのは…
ペイサーズはすでにサボニスとターナーがいるため、スターターレベルの5を必要としていなかった。 ペイサーズは、現時点で来シーズンは11人で約120億円とタックスまで約15億円。夏のRFAで、MLE以上のサラリーを提示されるであろうアレンにタックスを払いたくない。この夏出ていく選手に今シーズンサラリーを払いたくない。ちなみにペイサーズはアレンを引き受けるとタックスまであと約4000万円になります。ギリ行けますね..オラディポを選んだロケッツは、タックス回避をオーナーから命じられているため(妄想)、プリンスの安い選手に変えようとトレードパートナーを探します。そこでキャブスは、アレンをくれるなら、プリンスの約12.2億円とダンテ・エグサムの約9.6億円を交換すると交渉したのではないでしょうか。キャブスには下でも書きますが、後1ヶ月で切れるTPEも使いたいし、アレンのようなアセットを取れるならプリンスを受け取っても良いでしょう。タックスを払いたくないロケッツはそれにOKを出します…
こんな感じだったのでないでしょうか。
ロケッツは、仮にこのトレードでキャブスと無理にトレードしなくても、サラリーを数億円削るチャンスはあります。PJ・タッカーだけではなく、エリック・ゴードンもトレードできます。しかし、それが可能だったとしても、来年RFAになるアレンのオファーシートにマッチすると、オラディポがまだいた場合/オラディポをトレードした選手がいた場合はタックス超えになってしまいます。今先手をうってアレンをトレードする事で、そのリスクを避けたのかもしれません。
いずれにしても、タックスを見据えた動きでしょう。
ロケッツのドラフトアセット
急に増えたロケッツが集めているドラフトアセットがどのくらいになっているかをまとめました。
2021年:サンダー、ヒート、ロケッツの3つの指名権の3番目/ネッツの1順目2022年:ロケッツの1順目、ネッツの1順目、バックスの1順目
2023年:ネッツとのスワップ
2024年:ロケッツトップ4プロテクション/ネッツの1順目
2025年:サンダーとのスワップ/ネッツとのスワップ
2026年:ロケッツトップ4プロテクション/ネッツの1順目
2027年:ネッツとスワップ ピストンズの1順目(2021トップ16プロテクション→2022 トップ16プロテクション→2023 1~18プロテクション→2024 1~18プロテクション→2025 1~13プロテクション→2026/1~11プロテクション→2027 1~9プロテクション) ブレイザースの1順目(2027年まで1~14プロテクション) ウィザースの1順目(2023 1~14プロテクション→2024 1~12プロテクション→2025 1~10プロテクション→2026 1~8プロテクション)
ベン・シモンズ
ちなみにロケッツは、シクサーズのベン・シモンズは取ろうと思えば取れたとのことですが、ネッツのパッケージを選んだそうです。
ザック・ロウ:「私が98%わかっている事は、ロケッツが望むならシモンズを得る事ができた」シクサーズのオファーがマキシィとピック2つなのかサイブルがプラスされたのか何なのか詳細はわからないが、ロケッツはネッツのパッケージを選んだとのこと。
(📷/@ClutchPointsApp) pic.twitter.com/0qdvkMtrPX
— NBA Reporter (@NBA_Reporterjp) January 14, 2021
クリス・ヘインズ:「ロケッツのオーナーのティルマン・フェルティッタは断固としてダリル・モリーが今GMをしているシクサーズとトレードはしないと聞いた」https://t.co/Mry9xijzXj @Yahooより
— NBA Reporter (@NBA_Reporterjp) January 15, 2021
シモンズは明らかにオラディポ、エグサムよりも良い選手です。ウォールとかぶりますが、それでも才能とスター性ならオラディポよりも上です。彼にはシュートがありませんが、バックスがヤニスにしているようなチーム構成もできますし、昨シーズンは実際にウェストブルックでカタチにしていましたので、個人的にはシモンズの方が良かったと思っています。
シモンズはシクサーズに残りたかったようで、シモンズのエージェントのリッチ・ポールがロケッツに働きかけたかもしれません。ハーデンやアンソニー・デイヴィスと同じことをするとを匂わせていれば、トレードはしないでしょう。
インディアナ・ペイサーズ
このトレードに関わったチームの中で、チームづくりもキャップの両方とも1番うまくいったチームなのではないでしょうか。
ヴィクター・オラディポの契約は今シーズンまでで、おそらく再契約はないと言われていました。オラディポのバードライツがあるとは言え、彼とマックス契約したらペイサーズはタックスに大きく突入してしまいます。スモールマーケット・チームのペイサーズが優勝候補でもないのにタックスを払うとは思えません。オーナーのビジネスもコロナで影響を大きく受けています。そのような事情もあり、ペイサーズはトレードデットラインまでにオラディポをトレードするだろうと言われていました。
(オーナーは、ゴードン・ヘイワードであればタックスも辞さなかったとのレポートもあります)
そのオラディポを、このトレードにちゃっかり乗っかってキャリス・レヴァートを確保。レヴァートは契約も今シーズン入れて3年残っていますし、サラリーは手頃感ありますが、プレーはオラディポに似ていて、さらにパスができるし、サイズもあります。チームへもそのまま問題なくフィットするでしょう。
個人的にはオラディポよりもレヴァートの方がハンドル&パスがあり、攻守においてチームに貢献できると思っています。チームづくりにおいても、キャップ的にも素晴らしいトレードだったと思います。
早く病気から回復して欲しいですね。
サラリーキャップ
2020-21シーズンのトレード前のサラリーは約133億円と、タックスを約5000万くらい上回っていましたが、このトレードにより約127.8億円とタックスを回避できました。
しかも2巡目指名権もつけてもらっています。
しばらくはタックスを意識しなくても良さそうです。
クリーヴランド・キャヴァリアーズ
キャブスは今年の25~30位になるであろうバックスの1順目指名権を、ジャレット・アレンとプリンスに変えました。すでにデベロップしているアレンの獲得により、再建が加速したのではないでしょうか。22歳のアレンはセックスランドとの成長曲線と合わせられます。
同時に、プリンスを得て、足りていなかったウィングの補強もできました。彼はスリーも35%と悪くありません。2人の獲得で、守備が格段に良くなったのではないでしょうか。特にセックスランドはサイズがないため、彼らの後ろを守るアレンやプリンスの守備は大事です。試合にあまり出ていなかったエグサムの価値が倍になって返ってきたような感じですね。

(Graphic/Clutchpoints)
また、キャブスにはジョーダン・クラークソンのトレードで得た約3.84億円のトレード・エクセプションがあり、アレンのサラリーはそれで吸収しました。そのTPEは後1ヶ月で切れるところだったので、トレードのタイミングとしては最高でした。ハーデンのトレードが1ヶ月遅れていたら、キャブスはアレンを獲れていなかったかもしれません。
サラリーキャップ
キャップは約124.8億円から約131.4億円に増えました。タックスから約1.1億円出てしまっているので、まだこれからトレードがありそうです。特に来シーズンFAのドラモンドはトレードされそうですね。そうすればタックスを回避できます。
そもそもビックがドラモンド、アレン、マギー、ナンス、ラヴと多すぎるので、足りていないウィングを補強したいところです。ひょっとしたら、マギーの約4.2億円もトレードされるかもしれません。個人的にはセルティクスのTPE候補だと思います。セルティクスはタックスまで約15億円あるので、ビックやPGに使いたいところです。
来シーズンのサラリーは約108.9億円になり、タックスまで約27.6億円になります。この夏にRFAになるアレンへのオファーシートのマッチも出来ますね。
セックスランド、オコロ、プリンス、アレン、今年のドラフト上位でウィングを指名…だんだんとチームのカタチも出来てきたのではないでしょうか。
コリン・セクストンとダリアス・ガーランドは一緒にプレーするビックには困らない👀😳
「セックスランドは今木々に囲まれている」
ー ラリー・ナンス https://t.co/jl4Jlqy2ez— NBA Reporter (@NBA_Reporterjp) January 14, 2021
ネッツのトレード考察の記事はこちらで読めます。
サムネイル画像:Graphic by Clutch Point