A-Rodのウルブス買収はうまくいくか?

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アレックス・ロドリゲス(以下A-Rod)とマーク・ロアーがミネソタ・ティンバーウルブスとリンクスの買収に乗り出しました。

ふたりはすでにオーナーのテイラーと基本合意書にサインしているようです。買収交渉期間は30日で、この期間独占的にオーナーのグレン・テイラーと交渉ができます。ということは5/10の週に買収に関しての何かしらの発表があるかもしれません。

買収価格は約1500億円。A-Rodとロアーの株式比率は50-50になるそうです。

A-Rodは、元MLBのスーパースターでMVPを3度受賞しています。ジェニファー・ロペスの元婚約者でもあります。残念ながら、このウルブス買収交渉のニュースが出てきたすぐ後に別れてしまったようです。

(A-Rodとジェニファー・ロペス)

そして、マーク・ロアーは元ウォールマートのeコマースを率いていたエリート起業家で、2011年に創業したQuidsiをアマゾンに約535億円で売却しています。その後、2014年にJet.comを創業し、2016年にウォールマートに約3300億円で売却。その時にウォールマートのeコマースのCEOに就任し、ウォールマートをアマゾンに次ぐオンライン小売へと成長させました。

(Photo by T. Fallon/Bloomberg)

A-Rodとロアーの2人はもう何年も一緒にビジネスをしていて、最近Archer Aviationという電気飛行機の会社を上場させています。また、昨年ニューヨーク・メッツの買収競合にも参加しましたが、スティーヴ・コーエンに敗れています。このメッツの買収計画にはウィザースのブラッドリー・ビールも参加していたようです。

 

現オーナーのグレン・テイラーのオーナーシップ・グループは「メンター期間」として2.5年で彼らに球団運営のノウハウを教えてから完全引き渡しになる条件を提示しているそうです。そして他の重要なポイントは、ウルブスをミネアポリスから移さないこと。テイラーはウルブスを公共のドメインだとも考えているため、彼にとってそれは譲れないそうです。

そして、注目されているのが、テイラーは本気でウルブスを売却するつもりなのか?です。なぜならテイラーがウルブスを1994年に約88億円で買収してからこれまで何度もウルブス買収の話が出ては消えているからです。

テイターがこれまでに買収交渉をした主な相手は:元グリズリーズのマイノリティー・オーナーのスティープ・キャプランとダニエル・ストラウス、クリーブランド・ブラウンのオーナーのジミー・ハスラム、ソフトウェアのビリオネラーのヴィニー・スミスと元NBA選手のアーロン・アロファロ、現ジャズのオーナーのライアン・スミス… テイラー曰くケヴィン・ガーネットはどの買収グループにも名前が入っていなかったそうです。

(グレン・テイラー Photo by Associated Press)

このように、買収の交渉がうまくいかなかったのは、テイラーが買収先に期待することに次の2つに固執しているからだと思います。

まずひとつ目は、次に託すオーナーは自分と同じような価値観を持った人でなくてはいけない。

テイラーは、今まで大切にしてきた球団やそこで働く人たちをよくしてくれる後継者を探しているそうです。ビジネスの交渉では個人的なコネクションを大事にしていて、家族的な雰囲気に価値を見出せる人たちではくてはいけないようです。

A-Rodとロアーはこのテイラーの考えをリサーチずみなのか、本当にそのような人たちなのかわかりませんが、テイラーにはすごく気に入られているようです。テイラーはふたりについて、「彼らの考え方やどう人と接するのか、そしてどう人と働くのかを気に入っている」と言っています。

そしてふたつ目は、球団を他マーケットに移さないこと。

テイラーは、1994年にニューオリンズへ移されそうになっているウルブスを買収して、ウルブスが他のマーケットに移るのを阻止しています。彼はウルブスをバスケを愛するコミュニティーへの贈り物とだと考えているようです。そのため、売却する際の契約書には球団を他のマーケットに移さない条項を加えているようです。

しかし、弁護士の腕次第ではそれを回避できる文言を入れ込むことも可能だそうです。A-Rodは、シアトル・マリナーズでスターだったので、NBA球団を欲しがっているシアトルとのコネクションがあり、買収したら数年後にはシアトルへ移すとの報道もありました。また、買収する側としては、約1500億円を出して買収するのに自分の自由にならないことは受け入れられないのではないでしょうか。

ただ、マーケットチェンジにはNBAの縛りがあるようで、もし球団が他のマーケットに移る時には「エクスパンション・フィー」を払わなくてはいけないそうです。エクスパンション・フィーは、新球団立ち上げ時に、新球団側がNBAと他のオーナーに支払うNBA参加費のようなものです。

いまある球団を他の都市に動かすのにも球団設立時と同じような料金がかかってくるということですね。それもどうやらウルブス買収価格よりも高い約2000億円に設定されるのではないかとのこと。そうなると、A-Rodたちは約1500億円の買収金額を払い、さらにエクスパンションフィーの約2000億円を払わなくてはいけなくなります。さすがに約3500億円を出してまで球団を買わないのではないでしょうか。そのため、テイラーもA-Rodたちがそんなバカなことをするはずがないと言っています。

ちなみに、Forbsによると、ウルブスの価値はNBAで28位で約1400億円です。営業利益は約32億円。約3500億円あればNBA4位のシカゴ・ブルズに手が届きます。

また、ミネアポリスは小さなマーケットだと思われがちですが、実際にはポートランド、デンバー、クリーブランド、マイアミよりも大きく、NBAでは14位(169万人)です。移転先のシアトルは12位(176万人)なので、あまり変わりませんね。約2000億円かけて移す意味はなさそうです。

そう考えると、ウルブスはマーケットの大きさの割には球団価値が割安でお買い得です。計算したところ、NBA球団中お買い得度は30球団中の7位と上位でした。これらのことを考えれば、A-Rodとロアーはテイラーのミネアポリス縛りの条件を飲むと思われます。

このNBAのエクスパンションですが、コミッショナーのアダム・シルヴァーがこれまで否定して続けていましたが、その可能性について言及しました。簡単にいうと、シアトルやラスベガスなどの大きな都市に2球団追加して、30チームを32チームに増やすというものです。その際に、NBAと現オーナーは新球団にNBA参加料として1球団につき約2000億円を徴収できます。コロナで収益がなくなったため、その損失を「エクスパンション・フィー」で埋め合わせるためにリーグ拡大の話もNBA内で議論しているということです。

話がそれますが、このエクスパンション・フィーについてダラス・マーヴェリックスのオーナーのマーク・キューバンが面白いことを言っていたので紹介します。

このエクスパンション・フィーは、新オーナーがNBAと現オーナーたちに支払う料金で、前述したように1球団あたり約2000億円に設定されるのはないかとのことです。もし2球団分の約4000億円を30オーナーたちとシェアすると、1球団につき約133億円もらえることになります。しかも、これはBRIにカウントされないので、選手たちと分け合う必要もありません。これはコロナで売り上げが激減したオーナーにとっては出資することなく入ってくるお金なので、かなりうれしいお金ではないでしょうか。

しかし、デメリットもあります。この先ずっと30球団で分け合っていたBRIを32球団で分け合わなくてはいけなくなります。来シーズンのサラリーキャップが約112億円(予想)なので、オーナーたちが分け合う合計金額は約3360億円になります。これを32球団で分け合うと1球団約105億円になります。1球団につき本来得られていた約7億円がもらえなくなってしまうことになります。

そうなるとスモールマーケットのチームほど損をします。なぜなら営業利益はほぼマーケットサイズに比例するからです。例えば、一番マーケットが小さいメンフィス・グリズリーズの営業利益は約22億円で、これに約7億円がもらえなくなると思うとショックですね。次の放送契約で大きな利益が得られるかもしれませんが(ローカルTVではなくアマゾンプライムなどとの契約)、それでも約7億円というのは大きな数字です。

そして、仮に約7億円のロスが続けば、エクスパンション・フィーで得たお金分の利益プラスマイナスは20年以降で相殺されてしまう、それから損をし続けることになります。

結局のところ、エクスパンション・フィーは現オーナーたちが約4000億円を借りて、この先ずっと金を返し続けていく「ローン」と同じです。ただローンと違うのは返済し終わったあともずっと金を払い続けていかなければいけない点です。

しかも、現在銀行などの金融機関から同じ金額だけ借りればもっと安い利率の返済になるようです。なので、エクスパンションの意味(というかうまみ)はあまりないと思われてきました。しかし、これが古い頭のオーナーたちには理解できないコンセプトだそうで、彼らが目先の金のために動く可能性もあるとのことです。オーナーにはお年寄りの方も多いので、20年先の球団の運営状況などのは興味ないのかもしれません。

NBAのエクスパンションもオフシーズンに何かしらの方向性が見えてくると思います。メキシコシティーはNBA球団拡大の候補地で、NBAはGリーグチームを設立して様子を見ようとしています。この実験のタイミングも2025年の放送契約更新に合わせた動きだと思われ、メキシコシティーがうまく行けば、エクスパンションの話も大きく加速していきそうです。現オーナーとNBA選手たち次第ですが…

話をウルブスに戻しますね。

これからウルブスの買収がどうなるかですが、ウルブスを愛するテイラーにとって、ミネアポリス縛りと同じ価値の共有の他にもA-Rodはかなり魅力的な相手なので、買収はうまく行くと思います。

A-Rodは、メジャーリーグのシアトル・マリナーズ、テキサス・レンジャース、ニューヨーク・ヤンキースでプレーし、2016年に引退してからの5年間でアントレプリナーとメディアスターになりました。ESPNやマーク・キューバンの「シャークタンク」に出演しながら、FanaticやデリバリーサービスのgoPuffに投資して成功しています。上でも出てきたように上場企業のオーナーでもあります。そして、元婚約者であるジェニファー・ロペスのJ-Lo Beautyのファウンダーでパートナーでもあります(ふたりは4/15に別れを発表しましたが、ビジネスは一緒に続けるそうです)。

またウルブスのスター選手であるカール・アンソニー=タウンズ(以下KAT)は子供の頃A-Rodの大ファンだったそうです。KATは、子供だった時、家が貧しかったにも関わらず、ウォールマートで母に大ファンだったA-Rodの35ドルのジャージーを買ってもらったという思い出話を披露していました。そのジャージーは今でも家にあるそうです。KAT:「そのジャージーが全てだった」

KATは今シーズン終わった後の2年後にフリーエージェントです。チームが弱いとトレード要求をしてくるタイミングです。A-Rodがオーナーで再建失敗でもKATをキープできるかもしれません。

ルーキーのアンソニー・エドワーズは、A-Rodのことを知らないようですが…

このように、A-Rodは元プレーヤーでスポーツビジネスにも見地があり、若い起業家でという稀有な存在です。選手たちやコーチたちからの球団への信用も大きくなるでしょう。このウルブスの買収話、どちらかと言えば、グレン・テイラーの方がA-Rodを逃してはいけないように思えます。今回は交渉が成立するのではないでしょうか。

(NBAを観戦するA-Rod)

 


参考サイト:Alex Rodriguez, Marc Lore negotiating to succeed Glen Taylor as Timberwolves and Lynx owners/A Timberwolves sale to A-Rod and Marc Lore creates questions: What we know on relocation talk, timelines and more
サムネイル画像:Photo by Thomas Lovelock/MLB Photos via Getty Images