その日、18歳の高校生のケヴィン・ガーネットは、大学に行くためのSATやACTのスコアの結果に落ち込んでいた。今までにないくらい勉強したが、テストの点が思うように伸びず、ミシカン大やUNC(ノースカロライナ)に入るためのスコアには達しなかったのだ。
そんなKGの元に友人がバスケにしに行こうと誘いに来た。最初は気が乗らなかったが、彼はバスケをすればネガティブを取り払えると言った。それも一理ある。KGはバスケの試合を探しに家を出た。
その時、ブルズの練習に潜り込もうという話になった。うまくいけばマイケル・ジョーダンが見れる!(KGはシカゴで育った)
友人がどこでブルズが練習しているか知っていた。ふたりはヒルトンのジムへ向かった。
KGたちが横のドアからジムに忍びこむと、そこにはマイケル・ジョーダン、スコッティー・ピッペンがいて、練習の試合をしていた。KG曰く、彼はそのゲームを鬼ほど集中して見ていたそうだ。
1時間ほどたった時、警備員から声をかけられた。「おい、お前!」彼はKGに向かって叫んだ。
KGは「オレ?」と返した。
警備員はKGにコートに降りて来るように言った。
コートに降りると、ピッペンは「ここにいるには若すぎる。ただの高校生だろ」と言った。
ジョーダンが、「やろう」と言って、KGを指さして「お前がスコッティーを守れ」と言った。
KGは「憧れの人と対戦できる、キャリアベストのシーズンを終えた人と対戦する」と思ったそうだ。
警備員は、若者をジョーダンとピッペンにて差し出して良いことをしたと思ったのか、優しさで仕事を犠牲にしてまでKGに夢のようなチャンスを与えてくれたのか?KGにはわからなかった。しかし、感謝している。
試合がはじまると、すぐにピッペンがボールを呼んでシャッタームーヴをしてすごいスリーを決めた。
「あのショットを決められるはずがない」KGは思った。
しかし、それからKGに本能のスイッチが入った。バン!ダンクを決めた。バン!

スコッティーと言い合いにもなった。それでまたKGが燃えた。最も偉大な選手のひとりとやりあえている、と思った。
試合が進むごとに、自信がついていった。気後れはしなかった。誰もKGのことをバカにしなかった。「こいつらと競争できている」。KGは、ピッペンに対して、近く、ハードに、タフにプレーして、この時のために今までの人生のすべての瞬間があったかのようにプレーした。KGは燃えていた。

そして、休憩中に、すべてを見ていたアイゼィア・トーマスがやって来た。
ジョーダンとピッペンとピックアップゲームをしている同じ日に、あのアイゼィア・トーマスががいる!
KGにとって、アイゼィア・ジーク・トーマスはシカゴの大統領だった。彼はフッドの政治家だった。シカゴのフッドで生き抜いてきたアイゼィアは伝説的だった。
その時、アイゼィアはアキレス腱を損傷して引退していたばかりだった。アイゼィアは34歳、KGは18歳だった。
アイゼィアはKGに、「ケヴィン、おまえはたった今スコッティー・ピッペンとやりあったんだ。スコッティーはリーグのベストプレーヤーだ。お前は今リーグでプレーできる」と言った。
その瞬間、KGのまわりの時間が止まった。今なんて言った?
アイゼィアは前よりも目を見開いて「今リーグでプレーできるんだ」と言った。
「どうなんだ?リーグへ行けるか?」
それが他の誰でもないアイゼアから聞いたのが大きい。
心も体も魂も「Yes」と言った。
KG:「私は彼になぜその日にそこにいたのか聞いたこともないし、彼は私になぜあの日そこにいたのか聞いたことがない。私たちはそこにいた。ただの宇宙のすごい偶然のうちのひとつに過ぎない」
これがきっかけで、KGは高校から直でNBAへ行くことを決意します。その時、アイゼィアはラプターズ初のGMで、KGをはじめにスカウトしたと言っています。ドラフトは7位で、他チームは高卒の痩せたKGは指名しないと思っていたようです。当時ウルブスでVPをしていた友人のケヴィン・マケールからKGのことを聞かれた時に、「あなたが指名しないなら、私がする」とアドバイスしたそうです。
そして、1995年のドラフトで、KGは20年ぶりはじめて高校生としてミネソタ・ティンバーウルブスに5位指名されました。
その恩もあり、KGは殿堂入りのプレゼンターにアイゼィアを指名していました。

このKGのエピソードはKGの本で読むことができます。KG A to Z:An Uncensored Encyclopedia of Life, Basketball, and Everything in Between

参考サイト:Kevin Garnett recalls the pickup game with Scottie Pippen that proved he could jump to the NBA
サムネイル画像:Photo by AP