トレードシーズン:インディアナ・ペイサーズ

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前回はブレイザースを特集しましたが、今回とりあげるチームは同じく話題になっているペイサーズです。サボニスとターナーがうまくフィットしていない問題もあり、ふたりのどちらかがトレードに出されるのではないかと昨シーズンから言われて続けてきていますが、シーズン中のトレードはあるのでしょうか。

今シーズンのペイサーズ

成績。現在イーストの13位で下にはタンク中のマジックとピストンズしかおらず、プレーインが微妙な状況です。オフェンスは109.7でリーグ16位。ディフェンスは110.2でリーグ21位。ネットレイティングは-0.4でリーグ18位。538のRAPTOR による予想ではプレーオフ進出確率は12%、Eloモデルでは7%となっています。(1/6時点)

キャップは約134.2億円でタックスまで約2.3億円です。そのため、トレードがあったとしても出した選手以上のサラリーは引き取らないでしょう。契約が最後の選手にはTJ・ウォーレンとジェレミー・ラムがいます。(1/6時点)

全体的に、ケガが多くなかなか本領発揮ができない印象です。バブルで活躍したウィングのウォーレンはでまだ欠場していてシーズンデビューはしていませんし、シーズンはじめはキャリス・レヴァートをケガで欠いていました。

しかし、たとえ全員が揃ったとしても、サボニスとターナーのフィット問題、スター選手不在などの課題も多く、他の優勝候補のネッツ、バックス、ヒート、ブルズらとやり合うのはなかなか厳しい状況です。プレーオフへ進んだとしても1stラウンド敗退してしまうのではないでしょうか。

とは言え、このまま中途半端ではいられないので、マジックのように再建に入るか、勝ちに行くかの判断をしなくてはいけません。または、スモールマーケットで観客動員もリーグ通して低いので、再建はせずにプレーオフ狙いでこのまま行く選択肢もあります。

ペイサーズはどうするのだろうかと言われている中、チームプレジデントのケヴィン・プリチャードが、オーナーのハーブ・サイモンを説得して再建するというニュースが出て話題になりました。ペイサーズが最後に再建をしたのは2000年になります。はたして今回は再建に動くのでしょうか。

(オーナーのハーブ・サイモン Photo by Jeff Haynes/Getty Images)

ペイサーズのビジネス状況

ペイサーズはスモールマーケットのチームで、観客動員数はリーグ最低で、収容人数に対する収容率では29位です。他の収入である地方テレビの放映権もあまりうまく行っていないようです。それでも金は意外と使っていて、サラリーはリーグ17位になっています。タックスまでもう少しなので、球団としてはかなりがんばっているのではないでしょうか。

そしてスモールマーケットのチームの宿命ですが、トレードで得たスター選手にはFAで出ていかれてしまうリスクもあります(トレードを望んでいたオラディポ)。再建すれば、せめてドラフト指名した選手をオールスターに育て7~8年ほどキープできます(ポール・ジョージ)。

しかし、プレーオフ進出が厳しいのがわかった現在、リツールしてプレーオフを目指すのか、あるいは再建に動くか等の球団的の方向性を見直す必要があります。プリチャードがオーナーのサイモンを再建に説得して、長期的なスター選手をドラフトで得ようとするのは理解できます。オーナーにとっても、その方が8年後などの長期的利益は多いかもしれません。

オーナーの意向

オーナーのサイモンはタンクして指名権を得るような再建を嫌っているようです。彼の美学は、たとえ7位になろうが8位になろうが、プレーオフの1stラウンドで敗退しようが、コートには常にベストのプロダクトを置くことだそうです。

振り返れば、最後にペイサーズが再建したのは2000年のファイナルズ進出の後で、ロン・アーテスト、ジェメイン・オニールらをトレードで得た時で、もう20年以上も前になります。その後ペイサーズは2003-04シーズンにカンファレンス・ファイナルズに戻っています。その後もラリー・バードの元でリツールを成功させてカンファレンス・ファイナルズに戻っています。

ちなみにペイサーズが最後にドラフト10位未満の指名権があったのは、なんと1989年の7位指名になります。その時はジョージ・マクラウドを指名しました。

このように、サイモンはリツールを繰り返し、カンファレンス・ファイナルズへ戻っているため、再建しなくてもうまく行くだろうと考えているのかもしれません。

2017年に、プリチャードはサイモンに再建を提案しましたが、サイモンはその時も反対したとのこと。そのシーズン、ペイサーズはダレン・コリソン、ボーヤン・ボグダノヴィッチと契約し、コーリー・ジョセフをトレードしてリツールしています。

再建が話題になったため、サイモンは3、4年ぶりにインタビューに応じ、再建は必要ないと繰り返しました。サイモン曰く、ペイサーズはパニックモードには入っていない、この球団にはパニックという文字はないとのこと。

サイモン:「私たちは良い指名権を得るために試合を捨てる球団ではない。全試合勝ちに行く…(タンクに関しては)そうするチームもあるが、私はそれを信じない」「私は再建を見たくない。ファンもそれは見たくない」「ドニー・ウェルシュもラリー・バードも再建はせずに出来た。ケヴィンもそうするだろう」

サイモンとプリチャードの意見の相違はもう数年続いているようです。

リック・カーライル

再建を望んでいないのはサイモンだけではありません。4年約29億円の契約で新しくペイサーズのヘッドコーチに就任したリック・カーライルもサイモンと同じ意見です。彼がペイサーズに来たのは、良い選手が揃っていて十分に戦えそうだったからだそうです。

オフシーズンにサボニスかターナーのトレードをしなかったのは、カーライルが2人がどう成長するのか見る機会を欲しがっていたからとも言われています。しかし、結局うまくは機能していないようです。

そのため、リツールとしてサボニスかターナーのどちらかがトレードに出されるのではないかと言われています。

将来のスター狙い?

プリチャードは今のロスターには球団を背負って立つスター選手はいないと考えているようです。インディアナのようなスモールマーケットにフリーエージェントのスターは来ません。そのためドラフトかトレードでスターを得るしかないのですが、インタビューでうっかり口を滑らせて本音を言ってしまいました。

プリチャード:「どこかのタイミングで、私たちは本当のスターを生み出さなければいけない。ポール・ジョージがいた。彼にはその要素があった。オラディポにもだ。我々はそれを得ようとしている。フリーエージェンシーで我々がそれを得るのはむずかしい」

これに対し、オールスター2度選出のサボニスがどう思うか聞かれ、「なんて言ったらいいかわからない」と答えています。

とにかく、サイモンが再建に反対しているため、リツールでプリチャードの言う「スター選手」を狙って行くのは間違いなさそうです。おそらく今シーズン勝ちに行くチームに埋もれている元ロッタリーピックの若手を得るつもりでしょう。

ここでトレードに出されそうな候補ナンバー1はマイルス・ターナーです。

トレードの噂

ターナーは自分の起用法について不満があるようです。

ターナー:「ここで私にはロールプレーヤー以上の価値があると見られていないのは明らかだ。私はもっともっと機会が欲しい」

ターナーはサボニスの弱点であるシュートと守備のなさを補完するために、オフェンスではサボニスのためにスペースを空けてコーナーにいたり、ディフェンスではサボニスが守れないCでリムプロテクションをこなして来ています。サボニスが試合を欠場している時はオフェンスでもよりボールやアクションに絡んでいい数字を残しているので、彼がそう言うのもわかります。

ふたりは4シーズン目で、コーチはカーライルで3人目ですが、サボニスがスリーを決めれたり、相手のCをペイントで守れるように成長しない限りは、このデュオがこれ以上良くなることはなさそうです。

カーライルはマーヴェリックスでクリスタプス・ポージンギスで同じような経験しているのですが、アプローチを変えるつもりはないようです。コーチとしてはターナーにも成功できるような状況をつくってあげないといけませんが、むしろ逆でターナーを試合終盤にベンチに置いている時もあります。これでターナーを上手く使えば、古いスタイルで低いEQ評価もあがると思うんですが… パスもあるサボニスのオフェンスを優先させたい気持ちもわかります。(ちなみにターナーをコーナーに置くのはカーライルだけでなく、マクミランとビョークレンもでした)

ペイサーズはトレードの問い合わせも受け付けているそうで、サボニスかマイルス・ターナー以外にもキャリス・レヴァートのトレードにオープンなようです。どうやらルーキーのクリス・デュアーテにプレータイムを与えたいようです。サボニスとターナーへの問い合わせはこの数年でずっとあったそうで、まだ二人の需要は高いようです。スペースが空けられ守備も良いターナーはプレーオフや優勝を狙うチームにはフィットしそうですし、ペイサーズも試合をクローズできない時もあるターナーの方がトレードに出しやすいでしょう。

実際、リムプロテクションがあり、スリーも撃てるターナーを狙うチームは多いようです。ホーネッツやニックス、ペリカンズ、ウルブスがターナーのトレードの問い合わせをしたと言われています。レイカーズやも問い合わせはしていたようです。彼はプラグ&プレータイプなのでシステムを選ばずにチームに組み込めるのが魅力的で、すぐにチームを変えられる力を持っています。サラリーも約18億円と手頃なので人気が高いのかもしれません。

サボニスに関しては、意見が分かれるところです。バスケIQが高く、オールスターのボーダーラインにいるということもあり、今なら高値で売れそうです。相場的にはマジックがヴチェヴィッチのトレードで得た1位指名権2つ+若く有望なロッタリー選手のリターンが得られそうという見方もあれば、ウィークポイントも多く、そこまでの多くのリターンは得られないとの見方もあります。後者の理由には、守備では横の動きが遅いためスウィッチで狙われたり、スリーが30%ほどしかなく、運動能力がある訳ではないので、優勝候補のチームへ行けば3番手の選手になりそうだという事があげられています。

また、TJ・ウォーレンとジェレミー・ラムが夏にFAになってしまうので、彼らをキープするかトレードするか決断しなくてはいけません。ウォーレンはインディアナを気に入っているそうなので、バードライトを使って再契約できるかもしれません。ラムは2巡目指名権とトレードする可能性はありそうです。

マルコム・ブログドンはオフシーズンに2年の契約延長をしてしまったので、それから6ヶ月はトレードできない状況です。つまり、トレードデットラインを過ぎるまでトレードには出せません。もしブログドンをトレードするなら夏になるでしょう。

ターナーが行っておもしろそうなのは、若いグリズリーズやホーネッツだと思います。グリズリーズには1巡目指名権が2029年まで残っているし、どのようなサラリーマッチもできるサラリーが揃っていて、若い有望な選手もいます。契約が切れるカイル・アンダーソン+有望なベイン&ティルマンをマイルス・ターナーとトレードするのはどうでしょうか。JJJとターナーのフロントラインは面白そうです。ホーネッツもPJ・ワシントンや以前ペイサーズ行きが噂になっていたゴードン・ヘイワード、若いジェームズ・ブックナイトがいます。ヘイワード+ブックナイト+指名権 ⇄ ターナー+レヴァート+サラリースローイン(アイゼィア・ジャクソン?)もWin-Winだと思います。

ホークスもアセットは揃っていますが、ターナーとコリンとのフィットが難しそうです。ニックスもランドルの守備をクリーンアップできそうなターナーはハマりそうですが、バーレットをパッケージに入れないといけないのではないでしょうか。バーレット+トッピン+ケンバ+指名権/トッピン+クイックリー+ミッチェル+ケンバ/フォーニェ+若手+指名権 ⇄ ターナーなどいろいろ考えられます。

このように、ペイサーズはオーナー、フロント、コーチ、選手の間で同じビジョンが共有できていませんでしたが、オーナーがわざわざ主要レポーターたちを集めて数年ぶりにインタニューを受けた時に、チームの再建はしたくないと明言したので、再建はせずに戦力を維持しながらプレーインを再び目指すリツールになるでしょう。2月のトレードデットラインまでにサボニス、ターナー、レヴァートの誰かがトレードされることになりそうです。

なんとなくサボニスを良く言っていない気もするので、さいごにポイントセンターで素晴らしいパスをさばいているサボニスのムービーを置いておきます。


参考サイト:Pacers potentially move to rebuild, receptive to trade talks on Caris LeVert, Domantas Sabonis, Myles Turner: Sources/As Pacers consider shake-up, Myles Turner seeks bigger role with ‘more opportunity/Kravitz: Pacers owner Herb Simon offered thoughts on the state of his team. Many missed the mark
サムネイル画像:Photo by Rocky Widner/NBAE via Getty Images

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