シクサーズとネッツのトレード:シモンズ篇

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前回はハーデンをメインにネッツとシクサーズのトレードを描きましたが、今回はシモンズにフォーカスします。

あれだけNBAを騒がしていたシモンズのトレードも、すっかりハーデンの影に隠れてしまった感がありますが、シモンズはトレードまでどうしていたのでしょうか。気になったので調べてみました。

チームとの関係

シモンズは練習で守備のドリル参加を拒否して家に帰されていましたが、その後も罰金を避けるために呼ばれればフィルム・セッションや練習には参加していたようです。その時は、体だけいて魂は他に行っていたような状態で、ほとんど人と話さずに帰っていたとの事。

しかし、トレードされた場合に備えてコンディションは整えておかなければいけません。そのため、自分のトレーニングチームを組んで、ローカルのフィットネスクラブやジムを使ってワークアウトしていたようです。元NBA選手でフィラデルフィア出身のディオン・ウェイターズらとも高校のジムでピックアップをしたこともあったとの事。同じ日にウェイトトレーニングやジムを転々と移動しなければいけなかったのは大変だったようですが、シクサーズの練習場は避けていたそうです。

シクサーズの練習場を避けていたのは精神的な部分もありそうですが、ワクチンを接種していなかったのが原因のひとつだと思われます。ワクチン接種していない人がシクサーズの練習場を使うためには、コロナ検査を毎日受けなければならなかったそうで、ワクチン接種していなかったシモンズにとってはキツい日課だったのではないでしょうか。

ただ、ローカルのジムなどにいると、どうしてもSNSに出てしまいます。ディオン・ウェイターズと高校のジムでワークアウトしていたのはインスタにあがってしまいました。これは話題にはなりませんでしたが、いつか映像がリークするのは時間の問題です。そのためシモンズはワクチンを接種して、ようやくシクサーズの練習場に戻ったそうです。誰もいないシクサーズの練習場だけがシモンズにとって安全な場所とは少し皮肉な感じもします。

(St Joseph’s大学のジムを使っていたシモンズがキャンパスで目撃された時の映像)

シモンズが欠場している理由のメンタルヘルス面では、NBPAから紹介してもらったセラピストのセラピーを受けていたようです。選手が外部の医者を使った場合、普通チームはその診断や治療の情報を得られるのでが、シモンズはその情報をチームと共有するのを拒否。最終的にシモンズはシクサーズのセラピストの診断を得ることに合意したそうですが、セラピーがうまく行っていたのかは不明です。

一方、エンビードのベストシーズンを台無しにしたくないシクサーズは、シモンズにトレード以外の解決策を見つけるために、NBAや他スポーツの同じような事例すべてを調べたそうです。NBAではこのような長期間とお金(後述します)がかかったホールドアウトは前代未聞だそうです。NFLでひとつ同じような件が見つかったそうですが、シモンズの契約状況とは違うためあまり参考にはならなかったようです。

ただ、ひとつハッキリしているのは、罰金も厭わずに「2度とシクサーズのユニフォームは着ない」というシモンズの決意はかたいということでした。

罰金

これまでのシモンズの罰金は約19億円(2/1時点)。

シモンズはこれまでに約60億円稼いでいるとはいえ、約19億円を失うのは痛いどころではないでしょう。しかし、シモンズに近い関係者は「私たちは金のことなんて気にしない。みんなはそれを理解できない。でも、もし自分のことを信じて、今の状況が良くないものだと信じるなら、より良い場所に移ろうとするだろう。金は関係ない。財政的には影響がある、でも慣れる」と言っていたそうです。他のソースは、「腕にギブスをしていればケガをしているのがわかる。これはメンタルヘルスだ。見えないこともある。でも自分に聞いてみてくれ、どれだけの人がこれでお金を損しようと思うのか?それが全てを語っている」と言っていました。

シモンズは試合を欠場するごとに約3600万円の罰金を課せられていて、もしトレードされずにそのままの状態を続ければ、更に約12億円を失っていたそうです。ハーデンさまさまですね。

トレードもハーデンがメインになって、シモンズもあまり注目を浴びずに済んでラッキーだったと思います。シモンズはハーデンをクラブに招待するなどして、じゃんじゃんお礼をしたら良いのではないでしょうか。

シモンズの不満

約31億円を失ってまで、シクサーズにいたくないという理由はなんなんでしょうか。以前、自分のチームを持ちたいとか、エンビードとフィットすると思っていないとか、ヘッドコーチのドックとエンビードに裏切られてプライドが傷ついた等いろいろ出ていましたが、いくつか具体的な話が新たに出てきたので紹介します。

まず、エンビードの不満

シモンズは、エンビードが昨年のプレーオフで彼を公に責めたので怒っていたと言われていました。シモンズは、エンビードの2019年のプレーオフのラプターズ戦での悪いパフォーマンスを責めなかったのに、なぜ自分だけそんなことが言えるんだと思っていたようです。シモンズにすれば、自分も悪いプレーしたくせに人のことが言えるのかという感じでしょうか。

ドック・リヴァースへの不満

シモンズは昨年のオフシーズンにロスでトレーニングしていましたが、ドック・リヴァースがロスにいる間に自分に会いに来てくれなかった事に「苛立っていた」そうです。シモンズはリヴァースもシクサーズもどこのジムにいるのか知っているのだから、自分に会いに来ることくらいできただろうにと思っていたようです。リヴァースはシモンズに何度も電話もテキストも送っても、返信しなかったそうですが…

シクサーズへの不満

シモンズはシクサーズにレポートしたくなかったそうですが、エージェントのリッチ・ポールから契約が4年も残っているのだからレバレッジがなく、少なからずシクサーズに戻って誠意を見せるように説得されてチームに戻ったそうです。その時、プレシーズンの試合だったので、試合に間に合うように急いで会場に行ったそうですが、シクサーズからは罰金を課せられてしまいました。シモンズは自分は誠意を見せたのにチームからは感謝されなかったと感じていたそうです。

他にも、メンタルヘルスにも関わらず、シクサーズが罰金を課したことにも怒っていたそうです。

逆にシクサーズはそれは契約中の選手なら当然のことだと考えて、シモンズに罰金を課し続けていたそうです。

モリーの問題

シモンズとシクサーズの間の歯車が狂ってきたのはダリル・モリーがプレジデントとしてシクサーズにやってきてからです。モリーのシモンズに対するマネジメントにも問題があったと思われます。

モリーはシクサーズのプレジデントになってからすぐにシモンズをロケッツのハーデンとのトレードパッケージにいれました。シモンズはポールからヒューストンの家を探しはじめるように言われているほどトレードは締結間近だったそうです。結局トレードはなかったのですが、ここでシモンズはシクサーズにとってエンビードよりも大事ではないと気づいたようです。

モリーはエンビードとはテニスやチェスをしたりと親交を深めていきましたが、シモンズとはそういう交流の場は持たなかったようです。

(テニスでペアを組むエンビードとモリー)

モリーもシモンズのことは、シモンズと良い関係だったGMのエルトン・ブランド(シモンズとマックス契約延長をした)に任せていたようです。シモンズも内気でトップと仲良くするような感じではありませんし、モリーもロケッツ時代のハーデンのようにエンビードとの関係を重視していたため、気づかない内に両者の溝が深まって行ったのではないでしょうか。

シモンズは相当繊細っぽいので、リーダーはそういう性格の人に対しては気を使ってマネジメントしてあげないといけないと思います。特に24人のオールスターに入るレベルの選手なら尚更です。

ブレット・ブラウン時代、シモンズは練習(シュートアラウンド)の時にはジミー・バトラーとエンビードと重ならないように早めに行っていて、ロッカールームに彼らがいない時は冗談を言ったりして元気らしいのですが、声の大きいその2人がロッケールームに戻ってくると静かになってしまうそうです。そんな引っ込み思案な性格は(ダンクをしなかったプレーに通じる部分もあると思います)フロントも把握していたはずなので、シクサーズももっとシモンズへの対応の仕方はあったと思います。

思えば、シモンズは子供の頃から知り合いだったヘッドコーチ兼フロントトップだったブレット・ブラウンにかなり守られていました。コートの外と中で合わないバトラーをトレードしたのもシモンズを守るためでしたし、コミュニケーションもモリーよりもとっていたはずです。それがブラウンが首になってしまい、ブランドのトップにモリーが入ったことにより、シモンズは今までになかった疎外感などを球団内で感じていたのかもしれません。

いずれにしても、状況が悪化する前にシモンズと信用し合える関係を築いてこなかったのはフロントのミスだと思っています。オールスターでもあり、エンビードとすばらしいペアになれる選手(モリーはそう言ってシモンズをプレーさせようとしていた)なら尚更です。シモンズもシモンズですが、シクサーズにもこのような状況になった責任の一端はあると思います。

ネッツのGMのショーン・マークスも、ヘッドコーチのスティーヴ・ナッシュもEQは高そうなので、その辺りの心配はなさそうです。そもそも、ネッツはKDとカイリーのチームなので、シモンズのプライドにまつわる繊細さが関係してくるような状況にはならなそうですし、シクサーズの時のようなメンタル問題に発展するようなことにはならないいでしょう。


参考サイト:The specter of this saga haunts Ben Simmons and the Philadelphia 76ers
サムネイル画像:Photo by Jason Szenes/New York Post