2021-22シーズンのMVPレース!!

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レギュラーシーズンも残り10試合を切ってきました。そこで今回はレギュラーシーズンを振り返えり、誰がMVPに相応しいか数字を見ながら検証していこうと思います。

どの選手がMVPに相応しいか考えるためには、まずMVPを定義しないといけません。しかし、MVPの意味合いが曖昧すぎて、人それぞれの定義に違いが出てしまい、これを議論してまとめるのも難しいほどです。もちろんMVPを決める100人のメディアの投票者の定義もそれぞれ違うでしょう。残念ながら、NBAがMVPとは何かの定義をしていません。このような議論もニュースや記事になり、レースも白熱してリーグが盛り上がるからなのでしょうか。

これまでに言われているMVPの主な定義には以下のようなものがあげられています。

  • リーグのベストプレーヤーを讃える訳ではない
  • レギュラーシーズンでのベストパフォーマンスをした選手を讃えるもの
  • 最もチームの勝利に貢献した選手のこと
  • 成功のストーリーがある選手のこと(記憶に残る活躍と言ってもいいかもしれません)
  • ベストチームのベストプレーヤー
  • 個人のプロダクション(数字)、チームの成功(成績)、アベイラビリティー(出場試合数)のバランスが良い選手のこと

個人的には、①数字を残し、②チームの成功/勝利(プレーオフはマスト)に最も貢献した選手がMVPだと思っています。もし数字も成績も比べようがないほど接戦の場合は、プレー時間の多さやストーリー性や更なる数字を考慮にいれて総合的に判断するのが良いと思います。

しかし、チームの勝利に貢献ってところも曖昧な定義で、それを見極め分析するためのメトリックも数多く出ています。そのため、「勝利に貢献」はアドバンススタッツでのオフェンスとディフェンスの総合値の高さで評価することにします。ベースにするアドバンス・スタッツはEPM/LEBRON/BPM等が妥当だと思いますので、それらの数字を紹介していきます。

EPM

EPMは他の多くのアドバンススタッツと同じように100ポゼッションンベースで、どれだけ選手が試合に貢献したかを測るメトリックです。その中でもEPMは特にアナリティクス界隈で評判が高く、RPMをつくったスティーヴ・イラーディも「EPMはワンストップ・メトリックのゴールドスタンダードだ」と言っていますし、「ザ・ミッドレンジ・セオリー」というアナリティクス本の著者のセス・パートナウもお気に入りだと言っているので、今現在信頼性が最も高いメトリックだと思われます。

EPMの特徴としては、プレーヤー・トラッキングデータやラインアップのコンティニュイティーを利用し、RAPMからノイズを消してくれるため誤差が出にくいようです。(EPMの詳しい内容も書こうと思いましたが、リサーチして計算式を見ているうちに理解できない事の方が多く、みなさんに詳しい説明はできないと判断しました。すいません)

数字はオフェンスのEPMとディフェンスのEPMを足したものです。*3/22時点

 PLAYEREMP
1
ヨキッチ8.6
2エンビード7.8
3ヤニス7.2
4カリー6.9
5カイリー6.0
6レブロン 6.0
7KD 5.7
8テイタム5.6
9バトラー5.1
10KAT5.0

LEBRON

特徴としてオフェンスの役割、プレースタイルによる数値の修正、スリーやフリースローにも運の調整が入ります。もしベン・シモンズが最初の3試合でスリーが50%の場合、LEBRONはオフェンスの役を優先させて、予想数値に基づいてエフィシェンシーを下げて計算します。総合的にボックススコアのスタッツを最もうまく生かしたメソッドを使用していると言われており、特に短期的な評価に使えるそうです。新バージョンではトラッキング・データも取り入れているとのこと。*3/22時点

 PLAYERREBRON
1ヨキッチ7.57
2エンビード6.46
3ヤニス6.22
4ゴベアー4.65
5カリー4.35
6テイタム4.34
7ホーフォード4.22
8バトラー3.96
9CP33.89
10モラント3.75

BPM

選手のコート上での貢献度を測るメトリック。チームでのオフェンスの役とポジションも数字に反映させています。例えば、センターにとってのアシストはポイントガードのアシストよりも価値が高く計算されます。トータルでチームの選手たちのBPMスコアの合計がNet Ratingと合致するようになっているので、良いチームでプレーする選手の数字がブーストされる傾向にあります。基準は100ポゼッションで、トラッキングデータは使用してないので、導き出すための情報は、より複雑なLEBRONやEPMよりも少なさそうです。

BPMの基準:

-2.0はベンチ選手(代替可能な選手)
0が平均で、普通のスターターや手堅い6マン
+2.0が良い選手
+4.0がオールスターに入るかもしれない
+6.0がオールNBA選出レベル
+8.0がMVPレベル(ダークやシャックのピーク)
+10.0が歴史に残るレベル(ジョーダンやレブロンのピーク)

BPMよりも良さそうな改良版の Backpicks Box Plus/MinusやAuPMがありますが、アクセスがないためBPMにしました。*3/22時点

 PLAYERBPM
1ヨキッチ13.8
2ヤニス11.1
3エンビード9.4
4ルカ8.1
5レブロン7.6
6KD6.9
7バトラー6.7
8モラント6.0
9カリー5.8
10KAT5.5

PER

2007年に紹介された最も古いアドバンス・スタッツのひとつ。平均得点はプレー時間を考慮にいれませんが、PERはプレー時間のパフォーマンスにペースの修正を入れ、ミスしたショットやTOやファウルも組み込んだメトリックスです。オフェンスに重きがおかれ、ビックに高い数字が出る傾向があります。PERに関しては、弱さも多く指摘されていますが、すでに広く浸透しているため、使い続ける傾向があるようです。

PERの平均点は15.00で、良い選手ほどプラスになり、悪い選手ほどマイナスになります。ちなみに、2015-16シーズンに満票でMVPだったステフ・カリーが31.56でした。*3/22時点

   
1ヨキッチ32.82
2ヤニス32.47
3エンビード31.15
4レブロン26.46
5KD25.94
6トレ25.39
7ゴベアー25.04
8モラント24.89
9KAT24.77
10ブランドン・クラーク24.23

プラス・マイナス

また今シーズンのプラスマイナスはというと…

  • 1位:テイタム +804
  • 2位:ミケール・ブリッジス +727
  • 3位:カリー +658
  • 4位:ブッカー +630
  • 5位:JJJ +628
  • 6位:ジョーダン・クラークソン +626
  • 7位:ヤニス +606
  • 8位:CP3 +599
  • 9位:スティーヴン・アダムス +598
  • 10位:KAT +582

*3/28時点 Statmuseより

スタッツまとめ

こうしてみると、ドバンス・スタッツでヨキッチ、ヤニス、エンビードの3人が抜き出ているのがわかります。ただRAPMとRAPTORでは入れ替わりの選手も出て、PAPMでは:1位ヨキッチ、2位エンビード、3位カリー、4位テイタム、5位ヤニスになります。RAPTORでは:1位ヨキッチ、2位テイタム、3位ヤニス、4位エンビード、5位カリーになります。数字的には接戦ですが、ヨキッチがあらゆるアドバンス・スタッツの1位をほぼ総なめしています。

 EMPLEBRONBPMRAPMRAPTORPER
1ヨキッチヨキッチヨキッチテイタムヨキッチヨキッチ
2エンビードエンビードヤニスカリーテイタムヤニス
3ヤニスヤニスエンビードヨキッチヤニスエンビード
4カリーゴベアールカジョージ・ヒルエンビードレブロン
5カイリーカリーレブロンガーランドカリーKD
6レブロンテイタムKDエンビードゴベアートレ
7KDホーフォードバトラーミケール・ブリッジスFVV
ゴベアー
8テイタムバトラーモラントジュルー・ホリデールカモラント
9バトラーCP3カリーKDトレKAT
10KATモラントKATクウィックリージュルー・ホリデー
ブランドン・クラーク

*RAPMは3/28、他はすべて3/22時点の数字です

数字以外の要素

MVP投票者はアドバンス・スタッツだけを考慮するわけではありません。特に平均得点などのノーマルのスタッツがまだメディアでも大きく取りあげられているので、そちらに重きを置く投票者の方もいると思いますし、下にあげる数字以外の要素も考慮に入れて投票することになると思います。

MVP獲得の空気づくりと投票者を意識したPR活動はどうかと言うと、ヨキッチはインスタもしていませんし(ルカがやらせようとしたら拒否られたと言っていました)、メジャーメディアの特集記事も断っているそうなので、活躍している割には他選手よりも露出が少なくなっています。オールスター選出もあまり興味なかったようですし、結構賞とかには無頓着なのではないでしょうか。自分の馬がレースで優勝した方が喜ぶような気もします。

ヤニスも露出面では気にしていなさそうです。SNSをやっていますが、バックスのPRに一任しているそうですし、今はMVPのことよりも「優勝したい」そうです。

エンビードにはエージェントがいないのでPR的にメディアへの働きかけは弱そうです。しかし、本人そのものが動くPRと言っていいほどユニークな存在感なのと、KDのコメントなどもあり(下ツイート参照)、エンビードのMVP最有力候補の空気感が生まれていて、それが投票者の背中を後推ししていきそうです。本人もMVPを狙っており、「自分のプレーがそれを証明している」と語っています。シモンズのドラマの中、チームを引っ張ってきたことを強調していおり、今後ダリル・モリーやシクサーズからのプッシュも大きくなりそうです。

また、投票要素となる「ナレティブ(ストーリー性)」的にはヨキッチが有利だと思われます。ヨキッチはジャマル・マリーやマイケル・ポーターがいない中、たったひとりでチームを43勝まで引っ張っています。エンビードにはジェームズ・ハーデン、トバイアス・ハリス、タイリース・マキシィらがいますし、ヤニスにもオールスターのクリス・ミドルトンやジュルー・ホリデーがいます。ヨキッチにはアーロン・ゴードン、ウィル・バートン、モンテ・モリスとトップ60に入るようなチームメイトはいません。それでも彼のオフェンスのEPMは+7.3とリーグ1位です。

43勝はたいしたチーム成績ではないかもしれませんが、シクサーズとバックスの45勝とほぼ同じになり、チームへの貢献度はエンビードやヤニスよりもヨキッチの方が高いと言えるのではないでしょうか。

投票疲れの要素もあります。ヤニスはMVPをすでに2回受賞しているため、MVP投票者もアドバンスの数字を考慮に入れずに候補から外す人も出てきそうです。ヨキッチはまだ1回なのでチャンスはありますが、2年連続1位投票するには何故か決定的な何かが足りない気もします。そうなるとエンビードが有利なのかもしれません。

出場時間の多さ(チームへの貢献の多さ)を考慮するなら、ヨキッチが安定して他のふたりよりもチームへの貢献が高いと言えます。

プレー時間 (3/22時点)

  • ヨキッチ:2151分 65試合
  • ヤニス:1940分 59試合
  • エンビード:1939分 58試合

ヨキッチはエンビードと比べて7試合分多く貢献していることになります。仮にヨキッチが今から残りのシーズンを欠場しても、エンビードとほぼ一緒のプレー時間になりそうです。

2021-22シーズンのMVP予想

こうして全体を見ていくと、ヨキッチ、エンビード、ヤニスの誰がMVPになっても驚きはないほど全員がMVP級の活躍をしています。私が強いて選ぶなら、アドバンス・スタッツも素晴らしい数字で、自分以外にスターがいないチームをプレーオフにまで率いているヨキッチです。チームの成績もそれほど差があると思いません。

しかし、もしナゲッツがプレーインに落ちたり、ウェストブルックがMVPを獲得した時のサンダーの47勝に届かなければヨキッチの評価が大きく下がるかもしれません。

また、ここからリーグ1位のサンズのブッカーが残り試合を30得点したり、セルティクスのテイタムが50点試合を数回してチームがイーストの1位でシーズンを終えれば、これまでのMVPレースの流れが変わる可能性もあります。それにより、ヨキッチやヤニスの獲得点数が減るとエンビード有利の展開になるかもしれず、まだまだどうなるかわかりません。それくらい今年のMVPレースは接戦だと思います。

そんなヨキッチ、エンビード、ヤニスの3人は、現在26~27歳でプライム真っ只中です。3人のMVP争いは今シーズン以降もまだまだ続いて行くでしょう。それに来シーズンは、ルカ、テイタム、ジャ・モラント、トレ・ヤングらの若い選手もMVP争いに参加してくると思われ、ますます白熱したMVPレースが期待できそうです。NBAの未来は明るいですね。


参考サイト:Inside the tension between Kawhi Leonard and the Spurs
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