シクサーズのシーズン終了イタンビューが2年連続で荒れてしまいました。しかもまたきっかけはドック・リヴァースとジョエル・エンビードの2人の発言でした。
特にリヴァースの「私たちはマイアミに勝てるほど良くはない」とエンビードの「みんながロケッツのジェームズ・ハーデンを期待していた。でも彼はもうそのような選手ではない。彼はどちらかというとプレーメイカーだ」が切り取られ、各メディアで大きく取り上げられました。今回は去年のベン・シモンズのように大ごとにはなりませんでしたが、それでも同じようにカンファレンス・セミファイナルズで敗退したサンズやバックスのインタビューとは大きな違いです。
ちょっとずつ学んでいるのでしょうか。我々が慣れてしまったのでしょうか。それとも実際には問題になるような発言内容ではなかったのでしょうか。
今回はそれを検証するために、試合後のインタビューで誰が何を喋ったのかを紹介します。
ドック・リヴァース
まずはヘッドコーチのドック・リヴァースから。
リヴァースがヒート・シリーズで最終戦になったゲーム6前にもチームの努力が足りないと、勝てないのはまるで選手のせいだったかのような発言をしていましたが、今回はチーム構成についても微妙な発言をしました。
ヒートに何があるかわかっている。それは見ることができるのでわかっている、彼らには運動能力がありサイズがある。私は思っていた…わからない…私たちにはもっとあると思っていたんだ
彼ら(選手たち)の多くは街に尽くし、自分が持てっている全てを与えている。そして時としてそれは十分ではない。試合の最後に私は結論づけた。私たちはマイアミに勝てるほど良くはない。私はそれを受け入れる。私たちはただ良くないんだ。そしてそれを言うのはむずかしいが、私たちは良くなかった
私は自分の仕事については心配していない。私はすばらしい仕事をしていると思う。あなたたちはそれを書くべきだ、なぜなら私は懸命に働いてチームをここまで来させた。最初に私がここに来た時は、誰も私たちがどこかへ行けると選ぶ人はいなかった。そしてそれは今年になっても同じことだった
これはまるで、自分は素晴らしい仕事をして来たのにチームが良くなかったと、責任には自分にはないかのような発言です。
ただ、これに関しては、リヴァースが3-1から敗退したシリーズのすべての言い訳(説明)や、多くが批判的だったディアンドレ・ジョーダンのスタート判断を正当化していた件からの一連の流れの最後だったため、余計に大きく取り上げられてしまった感もあります。
それでも、チームのマネージメント責任者として「自分はいい仕事をしていたけどチーム自体が相手に劣っていた」と言うコーチはなかなかいないですし、自分が来るまで誰にも期待されていなかった(セミファイナルズでラプターズに敗れた後だったので、更に上の結果を期待されていた)と事実とは違うことを話したのは印象悪です。大手メディアのレポーターからビートライターまでドックは何を言っているんだ?というあきれた感じからなぜそんなことを言うんだという否定的な意見が多い会見でした。
印象として、昨年はシモンズをバスから放り投げました(裏切った)が、今年はフロントや選手たちを放り投げた感じがします。それでもプレジデントのダリル・モリーは、リヴァースは来年もシクサーズのコーチをすると明言していました。彼がロケッツにいた時のクリス・ポールやメロのトレードなどで最初は同じように否定していたので、今後まだどうなるかわかりませんが、現在のところ、リヴァースが辞めない限りシクサーズのヘッドコーチはこのままいきそうです。来シーズン選手たちがどこまでリヴァースについて行くか気になるところです。
トバイアス・ハリス
「本当に私たちは努力が欠けていた」と言っていたとリヴァースに合わせていたのはトバイアス・ハリスです。
ハリス:「メンタル・タフネスだ。それも一因だ。私たちにはまだそれがないと思う。ミルウォーキーの試合(セルティクスに接戦で勝利)を昨日観て、あれが戦うことができて、そのまま突き進むことができて、炎をくぐり抜けて来たチームだ。時として、私たちのグループは全体としてたくさんのことに影響され過ぎたと思う。私たちは頭を下げ過ぎた。私たちのボディー・ランゲージはとても悪かった。私たちはシリーズ通してもっと良くなる必要があった」
メンタルの強さがなかったということでしょうか。顔の骨折と利き手の親指靭帯損傷でもプレーしていたエンビードはタフなことはまちがいないので、自分を含めて彼以外のチームメイトのことを言っているのかもしれません。
ジェームズ・ハーデン
シーズンがかかった試合の後半に、わずか2ショットしか撃たず、0得点だったハーデンはその理由を聞かれ:
私たちはオフェンスをランしたが、ボールが動き、私にそれが戻ってこなかった」と答えました。その後、もっとアグレッシブに行けなかったのか聞かれると、「私たちはオフェンスをランしたが、私にボールが戻ってこなかった
と頭を掻きながら同じことを答えました。
気持ちはわかりますが、ここまで振り切った回答をすると、余計に何か不満があったのではないか等の憶測を呼ぶことになりそうでハラハラしてしまいます。ひょっとして、自分のせいではないと遠回しに言っているのでしょうか。
また、自分が来てからのシクサーズに関しては、ケミストリーを築く時間がなく、またチームには数ピース足りなかったとの答えでした。
この夏にFAになることもできるので、来シーズンのことを聞く質問もありました。
私はここにいる、このチームが成長し続け、より良くなり、最高のレベルで競争し、優勝するために必要なことができるために許されることはなんでもする
ハーデン:「私はここにいる、このチームが成長し続け、より良くなり、最高のレベルで競争し、優勝するために必要なことができるために許されることはなんでもする」
その後に、「私たちはオフェンスをランしたが、私にボールが戻ってこなかった」と答えた時に質問をしたレポーターから「それはコーチがプレーコールしてもボールが戻ってこなかったということなのか」とまた突っ込まれた質問をされると(頭をかきながら聞いていた)、それを遮ってひと言:
次の質問
質問はハムストリングに移ります。
正直言って、私にとっては長い2年だった。ちょっとまたOKと感じはじめたところで、夏に体を整えて来年行けるように準備をする
などこの夏の重要性について語りました。
ハーデンの不調はやはりハムストリングのケガが完治していなかったからという希望が出てきました。ひょっとしたらマックス近くの再契約、または契約延長になるかもしれません。来年完全復活なるでしょうか。楽しみです。
新しい戦力の必要性については、お互いを理解できる時間がなかったのと、夏に個人としてもグループとして良くなるようにしていくと答えをはぐらかしました。
最後にネッツと比べて良いシチュエーションにいるか聞かれ:
私はそれを(苦笑)…私は今素晴らしいシチュエーションにいる
ジョエル・エンビード
ジミーがシリーズ終了後にエンビードについて「彼のことは愛している。彼を誇りに思っている」とまだエンビードと一緒にプレーしていたかったと言っていたことについて聞かれました。
知っての通り、彼は私の友人だ。彼は私のブラザーだ。タフだ。でも、私は彼をとても誇りに思っている。彼は今、信じられないレベルでプレーしている。彼は今他の何かになっている。彼がこのレベルにいて、チームを率いて、そして彼ができていることについて誇りに思う。彼らはシーズン通して浮き沈みがあった。選手を欠いたり、健康でいられなかったりしていたが、それでもイーストでNo.1のチームになる道を見つけた。だから彼らがやって来て、彼らがやったことは賞賛に値する。彼らは素晴らしいチームで、全体的に素晴らしい選手たちだ。そして明らかに素晴らしいコーチングと、素晴らしいフロント・オフェンスだ。だから、彼らを大いに称賛したい
さっきも言ったように、私は彼のためによろこんでいる。ここに座って、彼がチームメイトだと望んでいないと言うつもりはない。いまだに、どうして彼を手放してしまったのかわからない。まだ彼といっしょに戦いに行ければよかったと思う。でも、これが現実だ。僕はただここから築きあげて行って、その目標を達成しようとし続けるだけだ
そのためにはどうすれば良いと思うか?
もし私が完全に健康だったら、何が起こったか分からない。でも現実には私たちは負けた。私たちが何をしなければならないかに関しては、私はGMではないし。プレジデントでもない。私が決断するわけではない。彼らは優勝するためにどんなことでもやる。もしそれが、選手たちをトレードしたり、あたらしい選手と契約したり、私をトレードしたりすることであってもだ。彼らはそうする。彼らは優勝するチャンスをチームに与えるために、彼らが信じることを何でもする。でも、私の目標はいつも同じで、優勝することだ
ハーデンがボールを持っているにも関わらず、ハーデンは自分にボールが返ってこなかったと言っていたことについてどう思うか聞かれ:
わからない、彼がそう言ったことを信じる。私は彼を信じる
ハーデンとのパートナーシップはどうか聞かれて:
全員が良くなる必要がある。それは私や[ハーデン]だけではない。 1から15人目までだ。マイアミに負けたのには理由がある。 それは私たち全員が十分ではなかったことを意味する。 だからみんながもっと良くなる必要がある
そこから、シクサーズの課題に話題が移ります。
私がここに来てから、タフな選手は何人かいた。マイク・スコットにしても、出場時間は少なかったけど、でもサイズとタフネスがあれば、大きな役割を果たす
P.J.タッカーのような素晴らしい選手を見れば、シュートを決めることだけじゃない。それがディフェンスであれ、リバウンドであれ、彼が何をするのかが重要だ。ディフェンスを見ても、彼はたくさんのエネルギーでプレーし、A地点からB地点まで行けると信じ、彼はタフで誰も自分を打ち負かすことはできないと信じていて、ただフィジカルでタフだ。バムにしてもそうだ。(彼らには)そういう選手が何人かいる
私がここに来てから、そういうタイプの選手がいたと言えば嘘になる。今いるみんなには悪気はないが、ただそれが真実だ。私たちにはP.J.タッカーがいたことがない。私が言いたいのはそういうことだ。だから特にプレーオフや後半ラウンドに進むと、フィジカルが強くなればなり、それが必要になる。本当にタフな選手が必要になってくる
彼らには、バムなのか彼らみんななのか、そういった選手が数人いた。私がここに来てから、そのようなタイプの選手たちがいたとは言えばウソになる。今いる選手には悪気はないが、それが真実だ
他のすべてのチームを見ると、ボストンでもミルウォーキーでも構わない、彼らのプレーの中にタフネスの感覚がある。プレーオフを観て、それらのチームを相手にして、それが私が得たことだ。私はタフになる必要がある。私たちみんながタフになる必要がある
ハーデンと優勝できるか聞かれた時は、ハーデンは再契約しなければいけない(オプトインもありますけど)、時間がなかった、と答え、それから、「自分は良くなる」と自分ができることにフォーカスをしていました。
それから、どれだけハーデンが必要だったか聞かれ…
わからない。私たちが彼を獲得してから、みんながロケッツのジェームズ・ハーデンを期待していた。でも彼はもうそのような選手ではない。彼はどちらかというとプレーメイカーだ。時として、(頭をかきながら)私たちみんながもっとアグレッシブに行ったらよかったと思う。タイリースやトバイアスやベンチから出てくる選手私たちみんなだ
私はただオフェンスについて話していない。私はオフェンスもディフェンスも含めた全体について話している。私たちはチームとしてディフェンスが良かったとは思わない。彼らはディフェンスでやろうとした多くのことに対してつけこんできた。そして、オフェンスでは、みんなが同じ意識を持っている必要がある。知っての通り、いっしょになって解決しようとできたのはたった3~4ヶ月しかなかった。時間が足らなかったのかもしれない…私は私たちがベストなバスケットボールをしたとは思わない
また、今後チームづくりにもっと参加してトレードなど意見を言っていくか聞かれた時、ネガティブな報道にされないように気をつけながら答えを「自分がトレードされるかもしれない」という話に持っていきました。それは遠回し過ぎるとツっこまれてしまい、それよりも夏にフォーカスしたいのは父でいるこ事と家族で、上手くなるために練習をして行くと答えました。
最後はフランス語で質問を受け、エンビードが答えるのはフランス語がいいか英語がいいか聞いたら、レポーターからはどちらでもいいと言われ、「彼らが理解できないからフランス語がいい」と冗談で場を盛り上げて、フランス語で答えました。最後に他のレポーターから英語でこの夏にフランス代表になるか聞かれ:
それは今さっき答えたところだ (会場笑)
と言ってインタビューを終えました。
こうしてインタビューの流れを見ていくと、ハーデンのことについては大したことは言っていないように感じます。むしろ、後半2回しかシュートを撃たなかったハーデンを「全員がアグレッシブに行くべきだった」とかばっていたようにも聞こえます。やはり、メディアが騒ぎ過ぎただけだったのではないでしょうか。
ただ、わざわざ「彼は以前のようなプレーはできない」的なことを言って、まるでハーデンが衰えたかのような印象を捉えられるような表現はしなくてもいいと思います。負けられない試合に負けてしまった直後で、普段よりも感情的になっていたからかもしれません。ポジティブに考えると、これがエンビードの持ち味のトローリング力でもあり、そのメンタルが2年連続準MVPにつながっていると言うこともできます。
それぞれのインタビューからシクサーズのテーマを読み解くと、以下にまとめられるかと思います。
- タフさがなかった
- タフな選手が欲しい
- ハーデンをうまく組み込むための時間がなかった
- ハーデンは来シーズン復活するかもしれない
はたしてシクサーズは来季に向けて、タフな選手を補強できるのでしょうか。せっかくなので簡単に見ていきます。
シクサーズのオフシーズンの動き
シクサーズの状況はレイカーズに似ています。
- キャップスペースがない。
- トレード要員がいない。これは、$10M前後のミドルレンジのサラリーの選手がいないという意味で、唯一$10Mのダニー・グリーンはACL/LCLのケガをして来季復帰は厳しい状況です。これでは彼をトレードできません(指名権や若手をつければ可能かも)。ノン・ギャランティーなので、タックス回避のためリリースされると思われます。
- トレードできる1巡目指名のドラフトアセットが2029年のみ(サンダーとプロテクションの変更合意しない限り)。今年のドラフト指名選手をトレードしたり、 2024年のスワップもできます。
- トレード・エクセプションがミニマム級。
- フルMLEとBAEが使えるかもしれない。ハーデンと$35Mくらいで契約できればフルMLEが使えます。ここがレイカーズとの大きな違いです。もしハーデンがオプトインすればミニMLEに減ります。
チームの大きな課題は、守備が弱いバックコートをカバーできる優秀なウィング3&Dですが、彼らの需要は高いため、フルMLEの$10.3Mではゲットできないでしょう。FA市場に出てくるであろうウィングは、デリック・ジョーンズ Jr.、マリック・モンク、ゲーリー・ペイトン、ヴィクター・オラディポ、ブルース・ブラウンらがいます。うまく行けば、同時にアイゼィア・ハーテンステイン、サド・ヤング、ジェフ・グリーン、モントレズ・ハレル、ボビー・ポーティス、クリス・ブシェーらのエンビードの控えにも手が伸ばせるかもしれません。カゥズンズと契約するのも面白そうです。
FAでのタフさ補強なら、ヒートのマーキーフ・モリスとミニマム契約でるかもしれませんね。ウェズリー・マシューズも行けるかもしれません。PJ・タッカーはプレーヤー・オプションですが、フルMLEの2年目プレーヤー・オプションや複数年契約をオファーすれば獲得できるかもしれません。
他の戦力補強の選択肢としては、トバイアス・ハリスのトレードです。ただネックなのが2年残っている高額なサラリー($37.6+$39.2)です。トレードボーナスもあるので、指名権がつかないトレードは厳しいかもしれません。
または、ドック・リヴァースをレイカーズに2027年の1巡目指名権とトレードして、その指名権をトレードに使うとかありますが…遠い先の5年後のレイカーズの1巡目指名権の需要は低そうなので、可能性は低そうです。
あとは個人の成長です。特にサイブルはスリーが35%以上決まるようになればリーグを代表する3&Dになれると思います。そうなれば、サラリーもあがると同時にチームにも貢献できるので、がんばって欲しいですね。
参考サイト:As Sixers blame lack of toughness for loss to Miami, an uncertain offseason begins with the James Harden question/Doc Rivers’ job status, James Harden’s contract and more takeaways from Sixers exit interviews/Joel Embiid says James Harden, Philadelphia 76ers need to be more aggressive, toughen up in order to break through/
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