ウェストブルックとエージェントの別れについて

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7/16のことです。ワッサーマンのエージェントのサド・ファウシェーが、離婚で良く使われる「和解し難い不和」という言葉を使いながら、長年のクライアントであるラッセル・ウェストブルック(以下ラス)との別れをwojを通してESPNで発表したことが大きな話題になりました。

以下その別れの声明を訳します:

「私はラッセル・ウェストブルックを14年もの間レップしてきて、2008年のドラフトのすばらしい成功、スーパーマックス契約、史上唯一の再交渉&マックス契約延長などを含む我々のパートナーシップを誇りに思う。私はまた、ラッセルがファッション業界でも主要人物になることをサポートし、最近ではラッセルのために3つのトレードの成功を指揮した―それは彼の故郷のロサンゼルス・レイカーズへのトレードで最高潮に達した。

毎回、チームはラッセルを獲得するために、価値ある選手やアセットを犠牲にし、毎回、あたらしい球団は彼がやって来ることをよろこんで受け入れた。我々はそれを優美さと品格を持って共に成し遂げた。

そして、4年で4回目のトレードの可能性があり、市場はラッセルのあらゆるトレード・シナリオにおいて追加の価値をつけなければならないとレイカーズに伝えている。それでもそのようなトレードでは、ラッセルはバイアウトで新しいチームへすぐに移籍する必要が出てくる。

私が信じているのは、このようなタイプのトランザクションは、ラッセルの価値を減少させるだけという事だ。彼のベストな選択肢はレイカーズに残って、スターティングの役とダーヴィン・ハムが公にオファーしているサポートを受け入れることだ。ラッセルは初回投票で殿堂入りできる選手であり、彼は引退する前に再びそれを証明する。

あいにく、彼のこれから進む道に和解し難い不和があり、我々はもう一緒に働いていない。私はラッセルと彼の家族の幸運を祈る」

これを読んだ最初の感想は「情報多すぎ!」でした (笑)

その中でもいちばんショックだったのは、ファウシェーが遠回しにラスがレイカーズから出て行きたがっていると言っていた事です。ラスはウィザーズからレイカーズへ移籍した時に、故郷であるロスを本拠地にするレイカーズの一員になることは特別な意味を持つと言っていたので、やっとたどり着いたレイカーズから自分で出て行こうと思っているのが信じられませんでした。同時に、カイリーやペイサーズのトレードの噂話や、来シーズンのチームでの役割などでメンタルをやられてしまっているのかと心配になってしまいます。

しかし、ファウシェーさんが示唆する内容をまとめる前に、まずフォウチャーさんがなぜこのような長い言い訳のようにも聞こえる声明を出したのでしょうか?保身のための言い訳でしょうか?それともエージェンシーからの指示でしょうか?

そもそもエージェントがクライアントと別れる時にこのような長文を発表するのは珍しく、SIのクリス・マニックスやハワード・ベックをはじめとする多くのメディアのレポーターたちも、このようにクライアントと別れたからと言っていくつもの段落で構成される文章を書くのははじめて見た的なことを言っていました。特に辛辣だったのは、ダン・レバタードで、「エージェントはどれだけクライアントがバカでも、クライアントに尽くすために生きている… 彼らは弁護するためにいる…エージェントとしてそれを喰わらなければならない…ラッセル・ウェストブルックがどれだけあなたをリッチにしたのかわかっているのか?…そこに真実があろうが、エージェントはクライアントのために真実を隠さなければならない」と言っていました。

でも、ファウシェーさんはいい人そう(主観)なので、レバタードの言うようにエージェントのコードを破ってまでラスを貶めようとしているとは思えません。だとしたら、彼は身を呈して、頑固なラスに「現実を見てくれ、おまえにとって今はチームのためにプレーするのがベストだ、早まるな」という最後のメッセージを贈ったのかもしれません。深読みし過ぎでしょうか。

この声明の意図はファウシェーさんにしかわかりませんが、この声明からレイカーズやラスの現状を読み取る事ができます。

ラスのトレード交渉が実際にあった

「市場はラッセルのあらゆるトレード・シナリオにおいて追加の価値をつけなければならないとレイカーズに伝えている」

ここからは、実際にレイカーズは他チームとラスのトレード交渉をしたことがあり、選手同士のサラリーマッチ・トレードだけではラスの引き受け手がいなかった事を示唆しています。今まで、ネッツとのカイリーのトレードや、キャップがそこそこあるペイサーズとスパーズとのトレードの噂などがありましたが、レイカーズは少なくてもラスのトレード価値を測っていたことがエージェント本人の声明により明らかになりました。

これは、レイカーズは適正なバリューであれば、ラスをトレードしてもいいと考えていると言っていいでしょう。

昨シーズンのプレーやコーチへの態度を見ていれば仕方ないことなのかもしれません。チームにフィットしないばかりか、求められているロールに満足せずに、シーズンの終わりにその責任をコーチに押し付けていました。ESPNのブライアン・ウィンドーストはその事を「ほとんど誤った思い込み」で「個人的な責任をとらず、そのほとんどをコーチのフランク・ヴォーゲルのせいにした」と言っていました。

特に言われていたのがディフェンスです。ラスのワン・オン・ワンでのブローバイやディレクト・ドライブのディフェンスはほぼリーグ最下位(ブローバイは71人中60位、ディレクト・ドライブは71人中65位)で、相手のExpected eFG%は56.3%92人中90位と、ほとんどトラフィックコーン状態でした。

私もレイカーズの試合はあまり見ていませんでしたが、ラスがウィークサイドで誰も守っていない状態も見たことがあり、確かにひどかったです。The Athleticのジョヴァン・ブハによると、ラスはそのようなローテーションなどの明らかなミスをフィルムセッションで指摘されたりすることを良く思っていなかったそうです。

また、スカウティング・レポートと違うディフェンスをしてベンチに下げられた事もあり、全体的にディフェンスについてはいい話題はありませんでした。

また、ESPNのデイヴ・マクメナミンによると、ヴォーゲルはフロントからラスをベンチに下げてもいいと言われていたそうですが、そうするとラスを失ってしまうので(彼は全力でプレーしなくなる)、ラスをベンチスタートすることは止めたそうです。ここで重要なのは、プレーをチームに合わせることができずにいたラスは、レイカーズにとって実際はベンチレベルだったと言うことです。サラリーが$47.1Mでベンチレベルのプレーではチームとしてもキツイでしょう。レイカーズがトレードに動くのも理解できます。

リーグはラスを$47Mの選手として評価していない。

先ほどラスのサラリーの$47.1Mの話をしましたが、他チームもラスの契約の大きさについてはレイカーズに同意しているようです。ファウシェーの声明からは、他チームはその大きな契約のラスを引き受けるためには、さすがにドラフトアセットをつけてもらわないと割りに合わないと考えているのがわかります。これがもし$20M以下のサラリーだったり、ラスがトップ10に入る選手であれば、トレードはもう成立しているかもしれません。

そう考えると、ラスのプレーが特徴的というよりも、ラスのサラリーが高過ぎるという理由が大きそうです。KDのトレードが難航しているのを見ればわかるように、トップレベルの選手のトレードもすんなりとはいきません。リーグトップ2に入るサラリーなのに、プレーではトップ10に入らない選手のトレードはもっとむずかしそうです。

ラスがミニマム契約になるかもしれない

「それでもそのようなトレードでは、ラッセルはバイアウトで新しいチームへすぐに移籍する必要が出てくる」とう事からは、次のような事が言えると思います。

  • ラスは強豪チームに行って優勝を目指したいのだが、そのためにはトレード先でバイアウトされて、安いサラリーで新契約を結ばないといけない。
  • 再建チームは若手育成 + 来シーズンのキャップスペースを空けたいだけなので、ラスを必要としていない。そのため、プレー時間が欲しいラスはバイアウトで新チームを探すことになる。

どちらにせよ、ラスがレイカーズから出てバイアウトを受け入れると、次のチームではミニマム契約かそれ近くの契約になりそうです。しかし、いちどミニマムになってしまうと、ミニマムのレッテルが貼られてしまい、その後もミニマム契約になり続ける可能性が高くなります。ケガからの復帰でない限り、ミニマムからはなかなかあがってこれないのではないでしょうか (オットー・ポーターはケガから復帰して、ミニマム→MLEレベルまで復活しました)。

また、ミニマムで強豪チームに行っても、そこで自分の価値を証明しようとするとチームプレーができなくなる可能性もあり、強豪チームが勝てなくなるケースも考えられます。そうするとまたベンチに下げられるかもしれません。それでプレーオフで試合に出れなかったりしたら、来年のFAでMLEを狙うのも厳しいでしょう。

これが、ファウシャーがもっとも恐れているシナリオなのではないでしょうか。

そのため、ファウシャーは、彼のベストな選択肢はレイカーズに残って、ヘッドコーチのダーヴィン・ハムから保証されているスターティングの役をきちんとこなすことがラスのキャリアと契約にとって重要だと考えているのだと思います。

ラスはハムの言っていることを受け入れていない

「彼のベストな選択肢はレイカーズに残って、スターティングの役とダーヴィン・ハムが公にオファーしているサポートを受け入れることだ」

これについてはザック・ロウも「これはサド・ファウシェーが、”私はラスにレイカーズに残り、ダーヴィン・ハムの公にしているサポートを受け入れるように説得しようとしていた”と言っていて、そのサブテキストは、ラスはそれを聞かなかった。ラスが他のチームへのトレードをASAP望んでいることを示唆している」と言っています。

ハムはラスはレイカーズでスタートさせると公言しています。また、ハムはラスの使い方について「私には彼をどのように使うか明確なプランがある。私はそれを彼に見せて、座って、彼に提案した。私は彼は活躍できると思う。私たちは彼のエナジーを削り取ったりしない。私たちはそれを多様化させて、方向転換させる」と言っています。

ESPNのザック・ロウも、これについて「私たちはもう何万回も話してきた。ラスのゲームを方向転換するということは、オフボールでカットし、コーナースリーを撃ち…51-21で44%だったけど撃ちたがらない…レブロンにスクリーンをかけることを意味する」と言っています。要は、ハムはラスにロールプレーヤーになってくれと言っているのです。

また、ハムはラスのディフェンスについても「私は彼に私たちのディフェンスのトーンをセットするように言っている…私は彼にまたチャンピオンシップレベルのディフェンスをする望んでいる」と言っています。ラスのディフェンスについては前述した通り心を入れ替えないといけなくなります。すべてにおいて、レイカーズではラスはトリプルダブルをしていた時のプレーを忘れ、自分のプレーもマインドセットも変えて試合に望むことを要求されています。

ここでのポイントは、ハムはラスが自分のプランに納得して同じ方向性を向いているなど言っていない事と、ファウシェーの声明の中でのハムのサポートを「受け入れることだ」です。もしかしたら、ラスはまだハムの言っていることに本心から納得していないのかもしれません。

これまでのラスのトレードは、サンダー→ロケッツ、ロケッツ→ウィザース、ウィザース→レイカーズと、すべて自分から仕掛けたものでした。このようなロールプレーヤー的状態に慣れていないラスが、自分らしくプレーできるチームへの移籍を望んだとしても仕方ないことだと思います。

レイカーズに残ることがラスにとってベスト

「私が信じているのは、このようなタイプのトランザクションは、ラッセルの価値を減少させるだけという事だ」

一般的に言われていることは、選手がいちどミニマム契約になってしまうと、これからもずっとミニマムレベルの選手だと思われてしまうことです。そうなるとリカバリーは厳しいので、エージェントは自分の選手がバイアウトからのミニマム契約をするのを嫌うのでしょう。このラスのケースも同じで、ラスの希望するようなプレーオフ候補にはキャップが残っていないので、ミニマムになる可能性が高く、仮にチームを見つけたとしても若手PGがすでにいるため、ベンチにまわる可能性が高いです。

バイアウトからの契約の可能性があるチームとしては、まだ正式なPGが確立されていないウィザースや、他にもペリカンズなどが考えられますが、ウィザースはMLEの大半が残っているけどタックスまで$2M、ホーネッツはMLEが残っているけど探しているのはバックアップPG、ペリカンズもタックスまで$3.5Mとなっていて、なかなか厳しい状況になっています。

そうであれば、レイカーズに残って、リーグ中に生まれ変わったラスを見せることができれば来シーズンのFAでもMLE以上での長期契約も可能になるかもしれませんし、バードライトのあるレイカーズと大きな再契約もできるかもしれません。

こうしてみると、ラスはボールを持って自分らしくプレーできる新しいチームに行きたがっているけど、ファウシェーはそれがラスのためにならないと考えて、ふたりの意見が分かれたと考えられます。それがファウシェーが声明で言っていた「和解し難い不和」なのではないでしょうか。

そして、その1週間前にはこんな不穏な出来事もありました…

レブロンとラス

7/8(金)に行われたサマーリーグのレイカーズ対サンズ戦に応援に来たレブロンとラスがそれぞれ別の場所に座っていて、いちども言葉を交わすことがありませんでした。昨年ビッグ3を形成した時は、レブロンとラスが仲良くサマーリーグに来ていたのとは実に対照的です。

ベースラインに座っていたレブロンの元には、レイカーズのチームメイトやGMのペリンカやアドバイザーのカート・ランビスの他にも、エージェント時代にクラッチと敵対していたはずのニックスのレオン・ローズも挨拶に来ていたようです。しかし、ラスはレブロンに挨拶しに行かなかったとの事。その後、ふたりはバラバラに試合から出て行ったそうです。

これについてオレンジ・カウンティー・レジスターのカイル・グーンは「レイカーズの球団内の数人が、この2人のスーパースターの間の緊張感と気まずさを認めた」と言っていました。ふたりが挨拶もしなかったのは、ただ仲が良いからそうする必要もないとか、お互いいることを知らなかったとかという訳ではなさそうです。

ESPNのティム・マクマホンは冗談で「トレーニング・キャンプでどうなるか…グッドラック」と言っていましたが、レイカーズのチーム・ケミストリーは大丈夫なのか心配になります。ある意味、ハムさんは選手とのコミュ力を買われてヘッドコーチになったこともあり(もちろん戦術も経験も買われでしょう)、ハムさんのヘッドコーチの手腕にいっそう期待が高まります。

そして、その後、7/19にYahoo Sportsのクリス・ヘインズが、レブロン、AD、ラスの3人が週末(7/9~10)に電話で集まり、「お互いにコミットをしてうまく行かすことを誓った」とレポートしました。

ヘインズ:「ウェストブルックのレイカーズでの未来は不確実だが、会話は3人全員が優勝を目指すために、彼らが一緒にいる限り、同じ方向性でいることを確認しあった」

また、彼は「ウェストブルックはトレードリクエストはしていない」ともレポートしていました。

ひょっとしたら、誰かがレイカーズのビッグ3は問題ないという情報をヘインズに流したのかもしれません。ラスがレイカーズから出ていきたがっている的なファウシェーさんの声明の火消しのためとか、レブロンとラスがバラバラでいたのは見た目がよろしくなかったとか、理由はいろいろ考えられます。

まだまだラスまわりの話があります。こんどはオーナーのアングルから見たラスの話題です。

ジニー・バスのツィート

7/4、ジニーが暗号的なツィートを投稿しました。

「私はKBが恋しい。彼は私に許されていないことのすべて理解して説明してくれるだろう。正直、彼は史上もっとも偉大なレイカーだった。彼は自分よりもチームのことを理解していた。その意味は、自分よりもチームの目標に価値をおけばリワードはついてきて、すべてがひとつにうまく収まるという事だ」

このいろいろな事を示唆しているようなツィートに関し、ジニーは自分が制作に関わったレイカーズのドキュシリーズのリリースが間近なのでコービーの事を想い出してツィートしたと説明していました。

しかし、スキップ・ベイレスのように、このツィートはクラッチを通してレイカーズに影響力を持つレブロンに向けて発信したという人も多かったですが、今となってはラスに向けて発したものだとも言えそうです。

7/15にNBA.comのマーク・メディナがジニー・バスにインタビューをした記事の中で、ジニーは「トレードはただ変わるためだけのためにはしない。今の私たちを助けるために未来の契約を妥協させるようなバスケットボール判断はしない」と言っていました。

これは、ラスがトレードを望んだからと言って、彼を出すためだけに指名権をつけることはない&チーム的にプラスなリターンがないトレードはしない、ということを言っているのか?それともラスをトレードしてカイリーを望んでいるレブロンに向けての発言なのか?いずれにせよ、このようにどんな意味にもとれてしまうような状況になっているのが、いちばんの問題だと思います。

そして、ここに来て、ESPNのデイヴ・マクメナミンが燃料を投下しました…

まだまだレイカーズのオフシーズンははじまったばかりで話題が尽きそうにありません。これからも8/4のレブロンの契約延長も控えていますし、ラスのトレードの話題も下手をしたら来年のトレードデットラインまで長引くかもしれません。

ただ、ラスに関して言えば、ファウシェーさんの言う通り、去年までのプレーしかできないようだと状況は更に悪化しそうなので、ムのコーチを受け入れてチームの勝利のために献身的にプレーをすることが今後のためにもベストだと思います。下手をすると、ESPNのティム・ボンテンブスの言うように「バイアウトされたら来シーズンどことも契約できない…彼を必要とするチームがどこにあるんだ?」的なことにもなりかねません。ラスの元チームメイトのカーメロ・アンソニーも一時期同じような状況になっていましたし、あり得ない話ではありません。NBAファンとしては、ラスにはポール・ピアースやヴィンス・カーターのようにロールプレーヤーの役割を受け入れてもらってでも、ラス的な気持ちのこもったプレーを見せ続けていって欲しいです。


参考サイト:Russell Westbrook, longtime agent Thad Foucher parting ways over ‘irreconcilable differences’