ウィザーズの日本遠征

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この記事は主にThe Athleticのジョッシュ・ロビンスの記事「How the Wizards’ Japan trip will depend on their MVPs (Most Valuable Planners)」を参考に書いています。


The Athleticのジョッシュ・ロビンスによると、ウィザーズの日本滞在時間は125時間ちょいだそうです。その間に、ウィザーズは練習2回、エキシビションゲーム2試合、コミュニティーイベント出席等をこなさなくてはいけません。

その過密スケジュールの中で、チームが日本での滞在中に何事もなく過ごせるようにするのが、Director of Coaching Operationのエリック・セバスチャンと、Senior Director For Bascketball Operationのグレッグ・カーシャウの役目です。

セバスチャンはレギュラーシーズンでロードトリップを担当し、デルタのチャーターのコーディネーターでもあり、搭乗客のリストをまとめたりするそうです。カーシャウは選手とスタッフの必要なものを揃える役で、食事やミーティングルーム、機材まわり等の手配を担当しています。

簡単に言うと、ふたりはツアーコーディネーターのようなものでしょうか。遠征先での移動手段、ホテルの手配、食事に関する手配、そして必要な機材を揃え、ヘッドコーチのアンセルドとGMのトミー・シェパードと蜜に動き、チームと選手達が練習と試合に集中できるようにロジスティクスを調整&手配する役割です。レギュラーシーズンのロードゲームは手慣れたもので、サウスイーストのホークス、ホーネッツ、ヒート、マジックとの試合でのロードトリップに関しては、ホテルの設備やホテルからアリーナまでのバスの時間などのすべてを把握しているそうです。今はウェスタン・カンファレンスでのロードトリップもハプニングは少なくなっているとの事。

セバスチャンとカーシャウのふたりは、2019年のロンドンでのレギュラーシーズンの試合で遠征手配をし、セバスチャンは2013年のリオデジャネイロのプレシーズン・トリップも担当したそうで、海外遠征は3度目になります。

今回の日本へのロードトリップのチームの目標は、「コートでの成功とチームの絆を深める時間をつくり、日本のカルチャーを楽しむ事」だそうで、それをスムースに成功させるためには、綿密なプランをつくり、不安要素をひとつひとつクリアにしていかなくてはいけません。

カーシャウ:「私たちは手探りなわけではありませんが、これはまちがいなく別の経験であり、コンフォートゾーンから少し出ているかもしれません。私たちの仕事は、コーチたち、医療スタッフたち、そしてもちろん選手たちが少しでも楽をできるように、できる限りベストを尽くしながら、それをどう達成するのか考えることです

そのため、カーシャウと担当者たちは東京に事前に下見&ロケハンに行くことにしました。最初は4月に東京行きの予定を立てていましたが、メンバーのひとりがコロナ陽性になってしまい、下見は5月にリスケになりました。しかし、5月の時は肝心なカーシャウがコロナにかかってしまい、他の担当者たちだけが日本へ来たそうです。

日本に下見に訪れた担当者たちは、ホテルやアリーナの施設を訪れ、ホテルでミーティングができる部屋や朝食とランチを用意できるスペースはどこなのか、何人がいつホテルやアリーナのウェイトルームに入れるのか、ウィザーズがステイする東京のホテルから40.2キロ離れたアリーナまでかかる時間など入念にチェックをして行きました。コロナでワシントンに残ったカーシャウは、彼らのスマホで撮ったムービーを見ながら情報を共有をしてもらったそうです。

また、ウィザーズはNBAからも日本の情報をもらっていたようです。

ジャパンゲームを担当する部署のNBAグローバル・イベントグループは、これまでにスーパーアリーナでエキシビションゲームを何度もしていて、パンデミック前の2019年にはヒューストン・ロケッツとトロント・ラプターズの試合を行い、今回のウィザーズ対ウォリアーズが日本での15試合目と16試合目になります。そのため、NBAグローバル・イベントグループには日本でのイベント運営やロジスティクスのノウハウがたくさんあり、彼らはカーシャウの多くの質問に答えてくれたり、ホテルや移動がどのようになるかも教えてくれたそうです。

このように、ジャパンゲームはNBAとチームとの共同作業になり、前述したグローバル・イベントグループが、ウィザーズとウォリアーズの練習場を確保して、練習場からアリーナまでの移動をアレンジしているそうです。そのため、夏の間、ウィザーズはNBAオフィスと週一で連絡をとりあっていて、イベントが近くにつれてその数が増えて行ったそうです。

NBAグローバル・イベントグループはウィザーズが東京につくまでに、NBAのトランスポーテーションチーム、警備の専門家、ゲスト・エキスペリエンスのプロたちを揃えて、空港の人員とウォークスルーをして、チームの空港内での移動/税関からバスまでの移動/ホテルまでの移動を円滑にしてくれていたそうです。チームがホテルにつく前に鍵が用意されていて、荷物が部屋に届く間、みんなは食事に出れるようになっていたとの事。

このことから、日本国内のアリーナと練習場の確保と移動手段、PRなどはNBAが手配し、アリーナ、練習場、ホテル、チャーター機、食事まわりに関することはチームが手配したと思われます。

ウィザーズは、来日3週間前までは、日本に125人連れて行こうと考えていたそうですが、およそ100人に減ったそうです。日本のビザを発行しなければならないため、遅れて出された人たちを追加するのは不可能ではないにしてもむずかしかったとの事。来日メンバーには、選手、コーチ、バスケットボール・オペレーションのエグゼクティブたち、サポートスタッフ、球団のビジネス側の人間、選手のゲスト(選手ひとりにつきひとりだけ)が含まれています。

また、チャーター機で運べる機材の重さに制限があるので、アスレチックトレーナーが使うテーブル、マッサージテーブル、余分の練習着の着替え、ウエートトレーニング器具などの重い機材をチームは数週間前に日本へ送っていたそうです。

そんなに機材が必要なのかと思うかもしれませんが、この日本へのトリップはあくまでもトレーニングキャンプの一環なので、チームは限りある練習の時間を無駄にしたくないようです。そのため、すべての機材やギアを用意したとの事です。

カーシャウ:「これは楽しいトリップだ。東京だ。みんなにとって素晴らしい体験になる。でもこれはトレーニングキャンプなので、とても真剣に取り組まなくてはいけない

発送と言えば、NBAも他の業界にもれなくパンデミックによるサプライチェーンの遅延を経験していているそうです。9/30のジャパンゲームに間に合わせるために、8月上旬には試合で必要なバスケットゴール、ティソットのタイミングシステム、カスタムデザインされたゲームコートなどをロスから送り出しています。パンデミック前ならもっと遅い発送でも問題なかったとの事です。

また、チームは日本から帰った後のことも考えなくてはいけません。ワシントンと東京の時差は13時間になり、フライトは14時間以上(行き)になるそうです。そのため、選手たちとコーチたちの睡眠スケジュールも乱れて、帰国した後もリズムを狂わせてしまうので、ウィザーズのメディカルスタッフは睡眠の専門家からアドバイスを受け、機内でいつ眠り、いつ東京で練習し、ワシントンに戻った後どう対応するかなどの準備を整えているそうです。

この実質4日で、練習2回、エキシビションゲーム2試合、コミュニティーイベントなどをこなすパツパツのスケジュールの中、選手たちが日本のカルチャーを体験する時間はあまり残されていません。それでもアスリートたちが食事をとる時間は必ず確保してあるはずです。

NBCSワシントンのチェイス・ヒューズによると、この日本へのトリップで球団のメンバーや選手たちが楽しみにしているのが食事だそうです。

ブラッドリー・ビールは以前日本に来た時は若かったため、あまり冒険しなかったとの事ですが、今回は寿司を食べたいそうです。

他にも和牛などが有名で、クズマも日本食では和牛が好きなようです。アンセルドも郷土料理が大好きなので、日本食を楽しみにしているそうです。

八村塁はチームメイトたちにすき焼きを食べてみてもらいたいそうです。

八村:「私の好物はすきやきです。鍋みたいなもので、醤油とかいろいろ混ぜたようなもので、牛肉や野菜を入れます。実は生卵と一緒に食べるんです。彼らにそれを試してもらいたいです

東京でチームディナーを予定している八村塁ですが、それはすき焼きではなく鉄板焼きになりそうだとの事。

(ウィザーズとは関係ないですが、最近ではThe Athleticのマーカス・トンプソンが、サマーリーグ中にベガスで食べた地鶏を話題にしていました。彼の認識では地鶏は「チキンの和牛版」だそうです。チームと一緒に来ているビートライター達は本場の焼き鳥とかも試しに行くかもしれません)

みなさん時間はなさそうですが、ぜひ美味しい日本食を楽しんで帰って欲しいですね。


サムネイル画像:Photo by NBA

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