レイカーズ、ウルブス、ジャズの3チーム・トレード

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レイカーズのGMのロブ・ペリンカが、ウルブスとジャズとの3チーム・トレードについて「これをブレークダウンすれば、ほぼプレ・エージェンシーと見る事ができる。7月の選択肢を広げるために意図的に計画したものだ」と言っていました。これは実質この夏のフリーエージェンシーのための布石だったという意味です。今回はその意味と3チーム・トレードについて解説します。

プレ・エージェンシー=Free Agencyの「Free」と「Pre(前の)」をかけた造語で、フリーエージェンシーのための前段階の動き的な意味

レイカーズ、ウルブス、ジャズの3チーム・トレード全容:

レイカーズ獲得:

  • ディアンジェロ・ラッセル(ウルブスから)
  • マリック・ビーズリー(ジャズから)
  • ジャレッド・ヴァンダービルト(ジャズから)

ウルブス獲得:

  • マイク・コンリー(ジャズから)
  • NAW(ジャズから)
  • 2024年のウィザーズかグリズリーズの悪い方の2巡目指名権
  • 2025年のジャズの2巡目指名権
  • 2026年のジャズの2巡目指名権

ジャズ獲得:

  • ラッセル・ウェストブルック(レイカーズから)
  • JTA(レイカーズから)
  • デミアン・ジョーンズ(レイカーズから)
  • 2027年のレイカーズの1巡目指名権トップ4プロテクション

ロサンゼルス・レイカーズ

このトレードで、昨シーズン46勝してウェスト7位だったウルブスにいたディアンジェロ・ラッセル、マリック・ビーズリー、ジャレッド・ヴァンタービルトの3人の選手が奇しくもレイカーズに集まりました。昨シーズンのウルブスのKATがADに、ANTがレブロンに変わったかのようですが、チームとしてはだいぶカタチになってきたのではないでしょうか。オールスター休暇前のペリカンズ戦では早速その3人がスタートし120-102で勝利しています。これでADがMVP級の活躍をすればプレーオフ進出への可能性も大きく広がります。

同時に、サラリーキャップ的にも自由度が広がりました。それがこのトレードのいちばんのポイントだったと思います。$47Mのウェストブルック(以下ラス)を3人のNBAバスケットボール・プレーヤーに変えた事により、これからのチームづくりの選択肢が増えています。どうしても動きが制限されてしまう「マックス級のビッグ3+MLE+ミニマム」のチーム構成から脱却できた事は大きな成果です。

このトレードの結果、全体的なチームバランスが良くなりました。レイカーズにはラスのダウンヒル・アタックよりも、ラッセルのシュートやプレーメークやスリー(39%以上)の方がフィットします。それにスリーを100ポゼッションで15.4本撃って38%の確率で決めているビーズリーも入り、シューティング力が大幅にアップしました。ラッセルとビーズリーのバックコートのディフェンスは疑問ですが、レブロンを中心としたチームコンセプトにはフィットしています。

また、ヴァンダービルトにはミドルレンジと外はありませんが、ディフェンシブ・リバウンドはリーグのトップレベルで、サイズもあり、ディフェンスでラスやJTAよりも貢献できます。このようにロール・プレーヤーの質と数が上がった事により、セカンド・ユニットを含む全体的なチーム力があがりました。

サラリーキャップ的には、ラスの$47M → $31.3M(ラッセルの切れる契約)、$15.5M(ビーズリー)、$4.3M(ヴァンタ)に変え、サラリーキャップにトレード可能な契約を加えることができました。以前はウェストブルックがFAでチームを出ていってしまえば、A)マックス級の選手をトレードできるような大きな契約はADやレブロンのものしかありませんでした。そしてB)マックス級のFAと契約できる程のキャップスペースもありませんでした。しかし、これでザック・ラヴィーンやブラッドリー・ビールが市場に出てもトレード交渉に参加できます(*ラッセルと再契約/契約延長したり、ヴァンダービルトやバンバのサラリーを保証した後で)。もしカイリーのサイン&トレードのチャンスが出てきても、今はサラリーマッチ的には対応可能です。

その効果はFAだけではなく、その前のドラフトでも発揮できます。例えば、ビーズリーの$16.5Mのチーム・オプションをピックアップして2023年の1巡目指名選手と合わせてトレードするような事も可能です。来シーズンのチームづくりに向けて確実に選択肢が増えました。

更に、ラッセル、ビーズリー、バンバ、八村さん、ヴァンダービルトを歩かせてFAにさせれば、$43Mのサラリーキャップをつくる事も可能です。これはカイリーがマブスから得られる$46.9Mのマックスには足りませんが、7~9年目までのFAとならマックス契約が可能な数字です。そもそも今年のFAでマックスに値する選手がいるのかという話もありますが… ミドルトン?ハーデン?カイリー?FVV?

もしマヴスが何らかの理由でカイリーのS&Tに合意しない場合でも、このキャップを使えばカイリーとのFA契約も可能です。もしかすると、今後ハーデンのシクサーズとの交渉材料として移籍先候補にあげられるかもしれません。

おそらくこれがペリンカの言っていたプレ・エージェンシーです。これでレイカーズはいろいろな状況に対応できるようになり、夏に向けての準備が整いました。レイカーズは来シーズンに向けてまだまだ積極的に動くはずです。

ラッセル・ウェストブルック

また、このトレードで避けては通れないのがラスの話題です。一時はロールにも納得してこのまま行くかと思われていましたが、また問題が出ていたようです。そう言う意味でも彼のトレードは避けられなかったのかもしれません。

ラスは特にコーチたちとうまく行っていなかったようで、The Athleticのサム・エイミックによると、コーチたちからはトレードされなければバイアウトかウェイブは避けられないといったような話も出ていたそうです。ラスのトレード数週間前は状況は「有害」なものにまで発展していたとの事。

ESPNのデイヴ・マクメナミンもラスがトレードされた後、コーチング・スタッフは「ロッカールームのヴァンパイアを取り除いた」と言っていたとレポート?していて(なぜわざわざそれを言う必要があるのかは別問題だとして)、コーチたちからは厳しい意見が出ていました。

ラスはレイカーズでの最後の試合でもコーチたちともめています。ラスが交代された後に試合から出るのをわざと遅らせたり、アシスタントのフィル・ハンディーとサイドラインで言い合いになってゲーム遅延警告を出されたりしたため、その後のハーフタイム中にヘッドコーチのダーヴィン・ハムとロッカールームで激しい言い合いになったそうです。ラスは自分の問題を指摘されると個人的に捉えてしまい、コーチング・スタッフが彼にプレーの責任を持たせるのに苦労していたようです。

また、チームの中心選手のレブロンも全国放送でカイリーをトレードできなかったのはガッカリした的な発言もしていて、ラスの関係も改善されていなかった様子が見受けられました。ESPNのザック・ロウなどレポーターたちからは、カイリーのような大きな契約をトレードするためにはラスを出すしかないため、ラスとしてもレブロンのこの発言を聞いて良い気持ちはしなかったのではないか的な事が言われていました。

レブロンがコート上でラスとコミュニケーションする時のボディー・ランゲージもスター選手へ見せるものではないように見えました。

こういった状況の中、1巡目指名権を払っただけでサラリーキャップとロッカールームの整理、ロスターのバランスと戦力アップを同時に達成できた事は素晴らしいと思います。

ミネソタ・ティンバーウルブス

ディアンジェロ・ラッセルは今年が契約最後の年で来年FAになります。ウルブスとの契約延長交渉もうまく行っていないため、トレード・デッドラインでは動かされるのではないかと言われていました。

KSTPのダレン・ウォルフソンによると、ウルブスのプレジデントのティム・コネリーは「ディアンジェロ・ラッセルの契約延長はしたがっていなかった」そうで、ウルブスはラッセルを失ってしまう前にトレードしてリターンを確保しようと動いていた事がわかります。

コネリーが彼と契約延長をしない理由は、ディフェンスが悪くて試合をクローズできない事や、ラッセルが希望するサラリーがウルブスにとって高すぎた等が考えられますが、いちばんの理由は球団が未来を担保にして獲得したルーディー・ゴベアーとの関係が悪かったためだと思われます。

ラッセルはゴベアーとの関係について、The Athleticのジョン・クラウチンスキは、「ラッセルはゴベアがパスを取れない事やレイアップを外す事に苛立っていて」ケミストリーの問題があったと話していました。相手チームの選手やコーチたちもラッセルが試合中にゴベアーを非難しているのを聞いた事があるようで、ゴベアーと上手くやって行くことには「オープン(前向き)でないように見えた」そうです。

ゴベアーは特殊な選手で、彼とどうプレーをするか理解するには時間がかかるようです。ジャズ時代にチームメイトだったジョー・イングルスはゴベアーとお互い上手くプレーできるようになるまで数年かかったと言っています。

その大変さを理解しているドノヴァン・ミッチェルは、ゴベアーがウルブスにトレードされた後、友人のアンソニー・エドワーズとディアンジェロ・ラッセルに「それは簡単にうまくいかないと話した。絆とケミストリーを築かなければいけないし、それにはゆっくりと継続して築くための時間が必要だ」と伝えたそうです。

マイク・コンリーもジャズにトレードされた後、ゴベアーとのプレーに馴れるのに苦労した選手のひとりでした。コンリーはゴベアーのようなロール好きでヴァーティカルな選手と長い間プレーしていなかったため、ゴベアーへのロブを出すのは想像以上に難しかったそうです。ジャズにトレードされてから1年後の夏、ゴベアーは東京オリンピックのためにフランス代表でいなかったため、コンリーはPnRの練習ができる友人に連絡を取りました。グレッグ・オデンです。コンリーは大学時代に一緒にプレーしていたグレッグ・オデンを仮想ゴベアーに見立てて、スクリーンから抜ける時の目線の補正やマッスル・メモリーを呼び戻さなければいけなかったそうです。

オフェンスだけではなく、ディフェンスでも、まわりの選手はいつゴベアーをヘルプし、いつ彼ひとりに任せるかの訓練が必要だそうです。

そんな訳で、ウルブスがシーズン当初から勝ち越せていませんでした。エドワーズは高校時代からこれまで1度もロブ・ビッグとプレーした事がなく、ラッセルはロブ・ビッグとプレーしたのはネッツ時代のジャレット・アレンぶりで、感覚が追いついてなかったのかもしれません。

しかし、ジャズでゴベアーと一緒だったマイク・コンリーなら、ジャズ時代に築いたケミストリーがすでにありますし、アントやKATのオフェンスをセットアップできます。また、ゴベアーのディフェンス対応もコンリーがその辺りを伝授してくれそうです。

また、コンリーは35歳ですが、来年のサラリーは部分的保証の$24.3Mとラッセルの求めるサラリーより安く、アントのマックス(ほぼ確実)がキックインしてくる2024-25シーズン前に契約が終わります。バスケ的にも、サラリーキャップ的にもラッセルのコンリーとのトレードは正解だったと思います。

ラッセルのリターンに関してですが、マックス選手でスターターの対価が2巡目が3つ+コンリーなのはは少ないと感じるかもしれません。同じくフライトリスクがあるカイリーでも優秀な3&D+代わりのPG+1巡目指名権とのトレードでした(2巡目もありますが)。しかし、ラッセルのEPMはリーグのPGの中で18位の+1.3で、実はコンリーの+1.4よりも低いのです。残念ですが、それがリーグ内でのラッセルの価値なのでしょう。こんどのサラリー交渉も厳しそうです。

レイカーズと同じように、ウルブスにとってもこのトレードはバスケ的&サラリーキャップ的に意義のあるものだったと思います。

ユタ・ジャズ

ヴァンダービルトとマリック・ビーズリーで、2027年の1巡目指名権を得ました(ラスはバイアウトされたのでカウントしない)。ジャズ、というか、ダニー・エインジのトレードとしてはボグダノヴィッチのトレードの時のように物足りなさを感じます。ちょっとエインジに期待し過ぎでしょうか。

これでジャズはゴベアーのトレードで実質1巡目指名権を5つゲットした事になります。悪い契約も引き取る事なく(*キャップにラスのデッドマネーが残りはしましたが)、未来に向けて良いトレードになったと思います。

これで、来年のジャズのサラリーは11人で$91.9M(ジョーダン・クラークソンはオプトアウトしてFAになると仮定)。$42.1Mの空きがあります。これからどんなチームづくりをしていくのでしょうか。個人的にはヘッド・コーチのウィル・ハーディーさんが優秀そうなので、彼が使えるレベルの選手を集めて欲しいなと思っています。


サムネイル画像:Photo by Tim Nwachukwu/Getty images, Alex Goodlett/Getty Images, David Zalubowski/AP

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