5/16~18の間にシカゴでドラフト・コンバインとドラフト・ロッタリーが行なわれ、各球団のフロント関係者が集まりました。そのため、今NBA内で大きな話題になっているトピックが何かを知るには理想的な場です。
今回は現地に行っていたESPNのザック・ロウ、Yahoo Sportsのジェイク・フィッシャー、The Athleticのジョン・ホリンジャーらからの情報をまとめてお伝えします。
ジェイク・フィッシャーによると、シカゴでいちばん盛り上がっている話題は、ウィザーズが誰をバスケットボール・エグゼクティブのトップにするのかと、ウォリアーズのバスケットボール・オペレーションのプレジデントであるボブ・マイヤーズの未来だったそうです。ジョン・ホリンジャーはシカゴでのホットな話題は、5つのコーチのオープニング、進行が遅いウィザーズのGM探し、ジャ・モラントの状況、ワイルドなオフシーズンの可能性だったと言っています。みなさんがウィザーズに注目しているのは間違いないようです。実際にウィザーズと選手や指名権のトレードで誰と話せばいいのか困るという実務的な事情が大きく影響していそうです。
ウィザーズとウォリアーズのトップエグゼクティブを巡る状況
ウィザーズのエグゼクティブ探しは、まったく進んでいないようで、ホリンジャーが「ドラフトまでにGMが決まるか?FAまでに決まるか?11月か?」と言っている程です。はやく決めて球団の方向性をまとめるバッファーをとっていないと、肝心なドラフトまで間に合いません。それとも、オーナーのテッド・レオンシスの秘書的な感じなので、あまり焦ってはいないのでしょうか。
実際にウィザーズがインタビューをしたのはペリカンズのGMのトロジャン・ラングドンとクリッパーズのGMのマイケル・ウィンガーふたりだけと言われています。ウィンガーはリーグでもっとも高給取りのGMのひとりで、資金が山ほどあるクリッパーズから離れる事はないだろうと見られているそうです。2003-13の間にウィザーズで働いていたバックスのアシスタントGMのミルト・ニュートンもウィザーズと交渉したそうです。この件でメインに動いているのがプレーヤー・プログラムのVPのジョン・トンプソンで、オーナーのテッド・レオンシスの窓口になっているようです。
(*日本時間の4/25に、Wojがマイケル・ウィンガーがウィザーズのプレジデントになる事に合意したとレポートしています)
ウォリアーズとマイヤーズの契約交渉は難航していると言われていますが、コンバイン前にはマイヤーズもオーナーのジョー・レイコブも毎週水曜に行われているチームディナーに参加したそうです。しかし、マイヤーズはシカゴに来ておらず、各球団が集まるGMミーティングにも参加していなかったそうです。もしマイヤーズがウォリアーズに残るなら、年間サラリーは$10Mを超えると見られているそうです。
ザック・ロウによると、夏に球団と今後の役割について話し合うと言われているジョナサン・クミンガがリーグ中から興味を持たれているそうです。
ヘッドコーチ探し
● バックス
バックスとサンズはクリッパーズのヘッドコーチのタイ・ルーをメインターゲットにしていると言われているそうです。しかし、バックスとサンズには有名コーチを引き抜くようなドラフト指名権がなく、現実的ではないようです。
バックスはヘッドコーチ探しを急いでおらず、あらゆる選択肢を検討するように見えているそうです。モンティー・ウィリアムズが有力候補として出てきているようですが、彼はシクサーズからも興味を持たれているそうです。元ウィザーズとサンダーのヘッドコーチをしていたスコット・ブルックスもインタビューで好印象を残したとの事。元レイカーズのヘッドコーチだったフランク・ヴォーゲルとのインタビューのスケジュールも入っているとの事。
他にバックスがインタビューをした/インタビューをするコーチは
・ヒューストン大のケヴィン・サンプソン
・ウィザーズのアシスタントで2019年のGリーグ優勝のジョセル・ブレア
・LNB Pro Aのパリ・バスケットボールのヘッドコーチのウィル・ウィーヴァー
・ラプターズのアシスタントのエイドリアン・グリフィン
・ウォリアーズのケニー・アトキンソン
・ヒートのクリス・クウィン
・サンズのケヴィン・ヤング
・元ホーネッツのヘッドコーチのジェームズ・ボーレゴ
・アシスタントのチャールズ・リー
そしてその後、Wojが最終候補には元ラプターズのニック・ナース、ケニー・アトキンソン、エイドリアン・グリフィンが残ったとレポートしています。
● ピストンズ
ピストンズはすでに最終候補をチャールズ・リー、ペリカンズのアシスタントのジャーロン・コリンズ、オーバータイム・エリートのヘッドコーチのケヴィン・オリーに絞っていて、彼らはすでにオーナーのトム・ゴアーズとロスでインタビューを受けたそうです。しかし、誰もゴアーズに強い印象は残せず、再び候補者を募るとも言われています。
もしピストンズがヴィクター・ウェンバンヤマを指名できる1位指名権を引き当てていれば、GMのトロイ・ウィーヴァーがサンダー時代に一緒だった元サンズのヘッドコーチのモンティー・ウィリアムズを口説くのではないかと言われていたそうです。
● シクサーズ
現時点でシクサーズは、マイク・ブデンホルザー、モンティー・ウィリアムズ、フランク・ヴォーゲル、アシスタントのサム・キャセル、元ロケッツのヘッドコーチのマイク・ダントニ、元ラプターズのヘッドコーチのニック・ナース以外は候補者を広げないそうです。
首になったドック・リヴァースのスタッフの何人かは、ジェームズ・ハーデンが中心となってリヴァースを解雇させたのではないかと指摘しているとの事。
● ラプターズ
ラプターズのヘッドコーチ探しはバックスと同じようにスローペースだそうです。今月通して2回目のインタビューをしていく予定だそうで、誰か驚きを与えてくれる候補者に出会う期待を抱いているとの事。アシスタントのジム・サンとプレーヤー・デベロップメントのスペシャリストのリコ・ハインズが候補者と見られているそうです。
また、クリッパーズがタイロン・ルーと高額な契約延長するのか、それとも他のチームに引き抜かれて、クリッパーズがこのヘッドコーチ探しをしている5球団に加わるのかも噂されているそうです。ルーは保証された契約が1年残っていて、ライバルチームのフロントに人気があるようで、それをレバレッジに使って夏に契約延長をするのではないかとも言われているようです。
(*サンズのコーチ探しの情報は出ていませんでした)
ジャ・モラント
ジャ・モラントの状況がグリズリーズの夏の動きにどう影響をするのかが話されたようです。リーグがどれだけ彼に出場停止処分を与えるかで、グリズリーズはPGのポジションの控えをどうするのかも考えなければいけなくなります。
ワイルドなオフシーズンの可能性
多くのドラフトアセットやロスターを犠牲にしてスター選手たちを獲得したにも関わらず、プレーオフの序盤で敗退して期待に届かないチームが多くあり、それに加えて、お金を使うタックスチームへの厳しい罰則を与える新CBAの導入があります。そのため多くのチームがこの夏にトレードに動くだろうと言われています。
この条件を満たすチームを数えてみただけでも9チームあります。複数の1巡目指名権をトレードしてスター選手を獲得しても、まだ改善の余地があるアトランタ・ホークス、ミネソタ・ティンバーウルブス、フェニックス・サンズ、クリーブランド・キャバリアーズや、ロスターを犠牲にしてスター選手を獲得してプレーオフを逃したダラス・マーヴェリクス、タックスを超えていて新CBAが本格導入される2023年の夏までにサラリーを削減したいゴールデンステート・ウォリアーズ、ロサンゼルス・クリッパーズ、ボストン・セルティクス、ロサンゼルス・レイカーズです。
また、それらのチームに加え、なんとかプレーオフを狙いたいシカゴ・ブルズ、ポートランド・トレイルブレイザーズ、ワシントン・ウィザーズ、トロント・ラプターズらが活発なトレード市場に加わると見られているようです。
新CBAに関しては、タックスに深くハマっているチームほど今後どうなるか議論されているそうです。ホリンジャーによると、タックスチームはナーバスで、新CBAのセカンド・エプロンが本当に意味するものは何かを理解しようとしているとの事。全体的にはそれがリーグをどう変えて行くのかの議論が多く交わされていたそうです。ブロックバスター・トレードも良く話題になり、チームはこれからもプロテクションのない指名権を出し続けるのか話されていたそうです。
新CBAではコンバインでの規則も変わるので、それについても話題になっていたようです。特に、すべてのチームがコンバインに参加する選手全員のメディカル情報を得られるようになるので、関係者はとてもハッピーだそうです。他にも、90%行っても無意味なエージェント主導のプロデーがなくなるのも、球団の無駄な負担がなくなって歓迎されているそうです。
GMミーティング
各球団のGMが集まるGMミーティングでは様々な議論が行われたそうです。
- NBAコミッショナーのアダム・シルヴァーが出席し、来シーズンからはじまるインシーズン・トーナメントの収益は$1Bになると話したそうです。$1Bの根拠は不明。
- オフェンス優位の状況を変えて、ディフェンスも意味のあるものにしたがっているそうです。
- NBAドラフトを1日から2日にする案も議論されたそうです。
- ロード・マネジメント対策のペナルティーの変更。来シーズンまでに新しいロード・マネジメント規則ができるかもしれないとの事。
- フロップ防止のため、徐々に上昇していく罰金制度導入を検討。
- ロッタリー順位のために負け続けるインセンティブをなくすために、シーズン終盤のある地点から勝つごとにオッズがあがっていく案が提案されたそうです。
- プレーオフのマッチアップを有利にしようとして故意に負けたりする順位操作防止の必要性も議論されたようです。トップの3シードが対戦相手を決められるなどの案が出たとの事。
- コーチの服装規定。スーツ派は少しだけで、大勢はカジュアル推しだそうです。
ドラフトについて
ロッタリーの順位が出そろったため、各球団の方向性についての噂も出回りはじめました。
今年のドラフトは、スパーズが1位でヴィクター・ウェンバンヤマを指名するのは間違いなさそうです。そうなると今年の本当のドラフトは2位のホーネッツからはじまる事になります。
ホーネッツはラメロ・ボールとポジションがかぶるスクート・ヘンダーソンを2位で指名するのかが話されていたそうです。3位にトレードダウンしてしてブランドン・ミラーを狙う選択肢もありますが、2位にあがったブレイザーズにはヘンダーソンとかぶるデミアン・リラードがいるので、ブレイザーズがミラーを指名してしまうかもしれません。ホーネッツの出方次第でブレイザースの未来が代わりそうです。
5位から3位にあがったブレイザーズは、デミアン・リラードと優勝を争えるロスターづくりをすると広く見られていて、ライバルのエグゼクティブたちはベテランとのトレードを模索するのではないかと考えているようです。3位で残っている選手がヘンダーソンになった場合尚更ではないでしょうか。3位指名権+アンフェニー・サイモンズで、ウィングとビッグを強化するのではないかと言われています。または、ヘンダーソンのような素晴らしい才能を諦めずに、サイモンズだけをトレードする事も考えられます。
現在リラードは「私は優勝を狙うチャンスが欲しい。もし若手をドラフトする道を取るなら、それは私の道ではない」と言っていて、戦力にならないルーキーよりも即戦力を望んでいるようです。そのため、球団がドラフトで指名権をキープすれば、リラードのトレード話が浮上してきます。すべてはドラフトの夜に決まるでしょう。
4位のロケッツですが、来シーズンの指名権(トップ4プロテクション)がサンダーへ行ってしまうため、来シーズンはタンクせずにプレーオフ進出を目指すと言われています。すでにロスターには7人の1巡目指名選手がいるので、更に4位指名&20位指名のふたりのルーキーをロスターに加えるかどうかも注目ポイントです。4位指名権をトレードに出してベテラン選手獲得を模索するのではないかと言われているようです。そのため今年のルーキー含む数名の若手がトレードに出されそうです(というか若手しかいませんが)。最も大きなサラリーは$18.2Mのケヴィン・ポーターJr.です。もし、トレードがあるとすれば、彼のサラリーがサラリーマッチに利用されそうです。
また、ロケッツの来年のキャップスペースは現在$62Mもあるため、ジェームズ・ハーデンの移籍もあるのではないかと噂されています。しかし、ドック・リヴァースの解雇により、ハーデンのロケッツ行きはこれまで考えられているものよりも確かなものではなくなったとも言われているそうです。
5位のピストンズはドラフトの順位をあげたいそうです。最低でもアーメン・トンプソン狙いでしょうか。しかし、2位のホーネッツと3位のブレイザーズと4位のロケッツが欲しがるようなな選手もいなそうでし、5位指名権をトレードしてスター選手を得ようとしても、ブレイザーズとロケッツの指名権の方が良いので厳しい状況にあります。キャップスペースがおよそ$30Mあるので、戦力強化はFA市場で賄う事になりそうです。
マジックは6位指名と11位指名のふたつの1巡目指名権があり、それをバックコート問題解決のために使うのではないかと予想されているようです。そのふたつの指名権でヘンダーソンを狙えるでしょうか?ラメロがいるホーネッツが6位と11位にトレードダウンするなら、どんなリターンを要求するのでしょうか。
他にインサイダーたちが話していたのは、10位のマブスと12位のサンダーだそうです。マヴスは10位指名権をダヴィズ・バータンスとジャヴェル・マギーのサラリーと合わせて即戦力を狙って行くと見られているそうです。2024年に4つの1巡目指名権があるサンダーも、それらを使ってドラフト順位を12位からあげてくるかもしれないとも言われているそうです。
マブスに関しては、B/Sのエリック・ピンカスが、マヴスとカイリー・アーヴィンはネッツとのトレード前に裏で契約を約束していたとレポートしています。またカイリーはマックス以下では契約しないとも。キャップスペースがあるどのチームも彼にはマックスをオファーしないし、ドラマがあり過ぎるのも懸念されているようです。ピンカスのソースは「彼はマブスに3+1(プレーヤー・オプション)で契約すると聞いた。彼の契約はルカと揃えるようになっている」と言っていたそうです。そうなると、カイリーの契約は4年$210.1Mになります。理論的にはカイリーはマブスとのマックスは5年$272Mになります。
また、ピンカスは複数のソースから、サンズのデアンドレ・エイトンがマブスへ行くかもしれないと聞いたそうです。エイトンのエージェントのビル・ダフィーはルカのエージェントでもあるため、ふたりの関係は良いとも言われています。そのトレード内容は、サンズがマヴスからティム・ハーダウェイ、マギー、ジョッシュ・グリーン、それに10位指名権を得て、その10位指名権を層を厚くするために使うのではないかとも言われているそうです。マキシ・クレバーはルカの親友なので残すだろうとも。
幸運のお守り
ロッタリーではゲンを担いで幸運のお守りを持ってくる人が多いようです。
見事に1位を引き当てたサンアントニオ・スパーズのCEOのR.C.・ビュフォードはサプライズで幸運の青い革のイスがホテルに届けられていたそうです。それは1997年のドラフト・ロッタリーでスパーズがティム・ダンカンの1位指名権を引き当てた時に、ビュフォードがオフィスで使っていたイスでした。そのイスは彼が大学に入学した娘に譲ったもので、家族が彼に秘密でホテルに送ったとの事。ビュフォードはスパーズが1位指名権を引き当てる数時間前にその椅子で瞑想したそうです。
2位になったホーネッツのアシスタントGMのバズ・ピーターソンはお守りを持って行かなかったそうです。大学コーチ時代に母からもらった手のひらにおさまる木の十字架を持って来ようとしていましたが、家に忘れてきたとの事。
3位を引き当てたブレイザーズのアシスタントGMサージ・オリヴァはなし。
3年連続でロッタリーに出席していているロケッツのジェネラルカウンセルのアレンは、ランチをラルフローレン・レストランで食べたりして、3位だった昨年と同じルーティンをしていたそうです。また、幸運のお守りとして、ルーディー・トモヤノヴィッチが2002年のスピーチのためにスカウティング・レポートに書いた下書きを持ってきたとの事。3位から4位に順位を落とした
1位から5位になってしまったピストンズのバスケットボール戦略ディレクターのジョン・フェルプスは、ケイド・カニンガムの1位指名権を引き当てた時に履いていた青い恐竜の靴下を履いてロッタリーに臨んだそうです。
8位になったウィザーズのブレット・グリーンバーグは、祖母を称えるため、彼女が好きだったオレンジ色の靴下を履いてきたそうです。他にも元コーチのフリップ・サンダースからもらった大きな銀のコインや、父からもらったコナ・ダラー、それに1978年のチャンピオンシップ・リングのレプリカも持参したとの事。
11位のマジックのCCOのジョエル・グラスは、かつてマジックがロッタリーで勝った時のピンポンボールを持ってきていたそうです。

14位のペリカンズのアシスタントGMのブライソン・グラハムは幸運のお守りはなし。フロントの誰かがザイオンを引き当てた時につけていた「1位指名4回引き当てているネクタイ」をしていたかもしれませんが、その情報はありませんでした。
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