W杯で4位に終わったチームUSAにビッグニュースが飛び込んできました。
The Athleticのシャムズによると、レブロン・ジェームズがオリンピックに「とても強い興味」を持っていて、来年の夏にオリンピックにコミットする準備ができているそうです。
また、レブロンはオリンピックにコミットするだけではなく、すでに複数のスターたちにチームUSAに加わるように「実質的なリクルート」をしているそうです。
シャムズのレポートでは、レブロンが話しているのは次の選手たちで、彼ら全員がコミットする準備をしているとの事です。
・ステフ・カリー
・ケヴィン・デュラント(以下KD)
・アンソニー・デイヴィス(以下AD)
・ジェイソン・テイタム
・ドレイモンド・グリーン
中でもレブロン、ステフ、KDの3人はお互いにUSA代表として最後に一緒にプレーする事を話しているそうです。彼らが出たいと言えば、USAバスケットボールも断らないでしょう。
レブロンが最後にオリンピックでプレーしたのは2012年のロンドン大会で、2016年のリオではすでに5年連続でファイナルズ進出していたので精神的にも肉体的にもハードな状況でした。東京オリンピックはパンデミックの影響でバブル的だったので魅力を感じなかった可能性もあります。そんなこんなで39歳のレブロンにとっては来年のパリオリンピックが最後になります。引退前にもう一度金メダルを取りにいきたいと思っていても不思議な事ではありません。
そして、このレポートに信憑性があるのが、「レブロンがオリンピックに出たがっていたのはW杯よりかなり前の話で、W杯でのチームUSAの勝敗とは関係がない」と言っていたところで、レブロンが計画性をもって選手たちを集めてようとしているのが伺えます。9/9にNBA Centralが「来年のこれを想像してくれ」というレブロンが中心になったパリオリンピックのチームUSAイメージの投稿に、レブロンは思わせぶりな「👀」の反応をしていましたが、この時にはすでにオリンピック行きを仲間と話していたという事になります。
ESPNのティム・マクマホンも言っていましたが、レブロンはカメラを持ち込むのが狙いではないかとの事。私もレブロンはキャリア最後にネットフリックスの「リディームチーム」のようなドキュメンタリー製作を狙っているのではないかと思います。そこにオリンピックデビューのステフや、前大会MVPのKDがいたら映えますし、キャリア終盤の話題づくりにもなります。それに加え、世界を舞台にしている五輪に出れば、自分や自分のブランドを世界中に向けてアピールするチャンスです。レブロンや他のスーパースターにとって、PRやマーケ的にもおいしい大会なのではないでしょうか。
シャムズの記事によると、レブロンがリクルートしている選手とは別に五輪コミットに真剣な興味を持っている選手たちもいるそうです。名前があがっていたのが…
・デヴィン・ブッカー
・デミアン・リラード
・ディアーロン・フォックス
・カイリー・アーヴィン
ESPNのブライアン・ウィンドホーストによると、クリス・ポールもまたオリンピックに興味を持っているそうです。ほとんどのNBA選手がオリンピックには興味を持っているはずなので、これは彼らは呼ばれれば出るつもりがあるという程度の話だと思います。
このメンバーで問題なのは年齢です。
前述したようにパリオリンピックまでにはレブロンは39歳になっています。ステフも36歳になっていて、まだ金メダルがない彼が「Gold」する最後のチャンスになります(2016年のリオは足首と膝のケガのため、2021年の東京でオリンピックは個人的な理由のために行きませんでした)。KDもその頃には36歳手前です。夏には31歳になっているアンソニー・デイヴィスも最後のオリンピックになりそうです。長いシーズンを終えてプレーオフまで行けば、オリンピックまでにリカバリータイムもなく、すぐにキャンプに突入します。心身ともに疲弊した中でのオリンピックは次のシーズンにも影響しそうです。
スケジュール的にどれくらい厳しいものになるかと言うと、NBAファイナルズのゲーム7は6/23に予定されていて、パリオリンピックは2024年の7/26にはじまり、その間およそ1ヶ月しかありません。そしてすぐにベガスでの代表トレーニングキャンプがはじまり(プレーオフで早期敗退した選手はすでにはじめているかもしれません)、フランスへ行くまでに複数の国でエキシビションゲームをこなします。今後のキャリアを優先すればオリンピックはパスした方が良さそうなスケジュール感です。
レブロンもステフもKDもADも過去数年ケガで長く欠場していますし、レギュラーシーズンに影響するようなら、オリンピックには無理して出なくても良いとも思います。特にレブロンは昨シーズンのプレーオフのWCFではナゲッツとのシリーズの最後は疲れ切っていて、ファイナルズが終わった直後には引退検討発言していた程です。これはどちらかというと、オリンピックそのものよりも、彼らのその後のキャリアの心配と言った方がいいかもしれません。
問題と言えば他にもあります。ヨーロッパの強豪はコンティニュイティーがありますが、チームUSAは大会ごとにロスターが変わる事です。他国のプログラムは数年のコミットメントがマストだったり、毎年夏に大会があるためチームの精度があがっていきます。アメリカはNBA選手を集めたとしてもたった5週間ほどで世界で勝てるチームをつくらなくてはいけません。世界バスケが進化している中で、それは大変なタスクだと思います。来年のオリンピックも、キャンプから大会まで5週間しかないかもしれません(特にファイナルズへ行った選手は)。それこそNBAのトップ選手を集めてそのハンデを乗り越えないと世界大会では勝てないでしょう。
チームUSAのヘッドコーチのスティーヴ・カーはその事について、「それがUSAバスケットボールでやっていく事の一部で、バトンを次のコーチング・スタッフや次の選手たちに渡すんだ。私たちには人材が豊富で、それに値するたくさんの選手がいる。」と言っています。しかし、もしそれらのベテランのスターたちが来年のパリでプレーするなら、バトンは未来ではなく過去に戻る事になります。レブロンが声をかけた中で若くプライム中の選手はテイタムだけなので、ぜひデヴィン・ブッカーやアンソニー・エドワーズ、ミケル・ブリッジス、ハリバートンやフォックスらの次の代表候補も選んで欲しいところです。
話は変わりますが、チームUSAの代表選考は独特で、コランジェロからグラント・ヒル体制になってからは、選手は代表に何年もコミットする必要はなく、完全招待制にしています。FIBAが今回のW杯から大会をオリンピックの前の年に移したため、もしW杯とオリンピック両方にコミットすれば、その選手は2年連続で夏を通してプレーし続ける事になります。それもあってか、ヒルは昨シーズンに2023W杯のロスターのリクルートと、パリへのリクルートを別々に話しをしていたようで、もしかすると選手たちから直接負担が多いシーズン後に複数年もプログラムにコミットするのは厳しいという意見を聞いていたのかもしれません。ヒルはそれについて、「我々が選手たちから2年のコミットを要求するべきだという考えもあるが、この時代にそれが必ずしもうまく行くかはわからない。みんなのチームUSAへの2年連続のコミットする石が変わっている。だから我々も時代に適合しなければならない。」
もしコランジェロのように、レブロンやステフに2年のコミットを強要すれば、オリンピックに出てもらえない可能性も出てきてしまいます。招待制にしたのは選手たちへの配慮なのでしょう。
また、オリンピックでバスケットボールの会場は最初はパリではなく、電車でパリから1時間40分(TGVで1時間という情報もあり)離れたリールという都市です。グーグルマップで見ると、リールはパリよりもベルギーの首都のブリュッセルの方が近く、どちらかというと工業都市だそうです。レジェンドたちは「ラストダンス」を華やかな芸術の都でプレーするイメージを持っているかもしれませんが、それにはメダルラウンドまで勝ち進めないといけません。それでモチベーションが落ちる事はないでしょうが、彼らのオリンピックへの情熱とプロ意識が試されます。
リディームチーム2.0?アベンジャー・アッセンブル?
ではいったいこの代表チームはどんなチームになるのでしょうか?現時点でコミットしていると噂されている選手たちを整理してみましょう。
レブロンがリクルートした選手
- ステフ・カリー
- KD
- AD
- テイタム
- ドレイモンド
オリンピックにコミットOKな選手や噂になっている選手:
- デヴィン・ブッカー
- バム・アデバヨ
- デミアン・リラード
- カイリー・アーヴィン
- ディアーロン・フォックス
- クリス・ポール
- デズモンド・ベイン(足の手術をしなければW杯にも入っていたデズモンド・ベインの可能性もありとの事。)
- ジョエル・エンビード(アメリカ市民権もあるため、USA代表になろうと思えばなれます。)
- W杯のチームUSAでリーディング・スコアラーのアンソニー・エドワーズ
- 代表で3&Dもできるミケル・ブリッジス
これですでに16人と定員12人をオーバーしています。ガードも多いので、誰かをカットしなければなりません。現実的に考えると、ボールハンドラー3人、ウィング6人、ビッグ3人のバランスが良さそうです。そうなるとこの選手のプールの中からは次のような構成が考えられます。
ボールハンドラー:ステフ、レブロン、リラード
ウィング:KD、テイタム、ブッカー、ブリッジス、ドレイモンド
ビッグ:AD、バム、エンビード
残るはウィングのひとりだけです。レブロンをウィングに入れて、ガードひとり+でもいいかもしれません。
フォックスは個人的には好きなのですが、スペースがないFIBAのバスケでスピードがある選手がどこまで有効かわかりません。それよりもムーブメントシューターのベインや、スペースがない中でのショット・クリエイションが優れているカイリーの方がチームにフィットするかもしれません。
エンビードに関しては、レブロンやステフらの選手やコーチたちがシーズン通してリクルートするのではないでしょうか。彼らもエンビードをフランスには渡したくないでしょうし、W杯でFIBAバスケにはリバウンドとリムプロテクションがマストなのが証明されました。エンビードは何よりも優勝にこだわっているので、金メダルも取りたいのではないでしょうか。それならフランスよりもチームUSAを選ぶと思います。問題はADがPFをしない限り(そうなるとKDかレブロンがベンチ出場になる)ポジションがエンビードと被ってしまい、どちらかがベンチにまわらなくてはいけない事です。ADはレブロンが直でリクルートしたとは言え、相手は現MVPのエンビードです。普通であればエンビードがスタートするのが妥当です。ADとエンビードのツインタワーで大きな相手を支配するゲームも見てみたいので、ふたりにはぜひ代表に入って欲しいです。
ESPNのケヴィン・ペルトンは噂やレポートに左右されずに次のような選手を選んでいます。
スターティング5:
- PG:ステフ・カリー
- SG:デヴィン・ブッカー
- SF:レブロン・ジェームズ
- PF:KD
- C:ジョエル・エンビード
ベンチ:
- タイリース・ハリバートン
- アンソニー・エドワーズ
- ミケル・ブリッジス
- ジェイソン・テイタム
- AD
- バム・アデバヨ
- エヴァン・モブリー
新体制の下、オリンピックはまた60人の選手選考から絞っていくのかはじめるかわかりませんが、アメリカバスケは才能が豊富なだけに五輪代表選考も違った意味でむずかしそうです。
気になる招待状が送られるタイミングですが、NBAオールスター休暇後になるそうです。実際の選手たちからのコミットはケガや契約の状況にもよると思います。ただ契約に関しては、代表に選ばれるレベルの選手は気にしなくてもいいでしょう。テイタムもスーパーマックスの契約延長が可能ですが、彼レベルであればオリンピックのキャンプでケガをしても問題なく契約をもらえると思います。レブロンも同じくFAになれますが、まだリーグの顔の彼なら問題ないでしょう。
また、レブロンやステフが代表に入るなら、ただの「チームUSA」ではなくマーケ的にも他の名称がつけられるはずです。すでに「リディームチーム2.0」や「アベンジャーズ」、「オーシャンズ13チーム(最後にもうひと仕事をする内容なので)」などと呼びはじめた人たちもいます。このチームがなんと呼ばれるようになるのかも興味深いところです。
サムネイル画像:Photo by Rob Schumacher/USA TODAY
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